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危険を察知

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 その自信満々な慈悲の笑みに俺たちは一瞬だけ背筋が凍るような気がした。

 言い返すのなら所詮Dクラスだ。
 逃げ回られ、旗をとられると正直勝てる可能性は激減する。
 しかし、わざわざ俺たちの目の前に殺されるようにやってきたのだ。
 しかも、四十人も。

 Dクラスの生徒数は二百人。
 ということはここにいるDクラスの生徒の五分の一は存在するというわけだ。

「何考えてるか分からないがこいつら全員殺せば俺たちの勝ちなんだろ?」
「うん。そのはずなんだけど…………」
「少し気味が悪いわね」

 俺たち三人はDクラスとの距離を十分に保ったままそう口を開く。
 すると、

「今のうちにあの娘のように棄権した方がいいんじゃないか?」
「そうよ。痛い目に遭うわよ?」

 Dクラスの生徒たちは俺たちに棄権を促してくる。
 その表情からは偽りなく、絶対的な自信があった。

「もういいや。やろうぜ」

 グレーが地を駆けてDクラスの生徒の方へと近づこうとした時、サテラが叫んでグレーを静止させる。

「少し待って! 何か来るわ!」

 すると、サテラの言う通り膨大な魔力がDクラスのもとへ集まっていく。

「…………まさか! あれは!」

 俺はその光景を見て一瞬で何をしようとしているのかが分かった。
 俺が生まれてきて何百回、何千回見てきた魔法。
 そう。召喚魔法だ。

「「「「「【召喚コール】!」」」」」

 四十人、全員がそう高く叫び、四十個ほどの魔法陣を出現させる。

 このDクラスの生徒は自分たちが戦う気なんてなかったんだ。
 最初に気づくべきだった。魔術師しかいないということに。

 魔法陣から目を焼いてしまいそうなほどの光が溢れ出る。
 そして、その光が収まり、ゆっくりと目を開けるとそこには、

「まさか本当に僕たちが呼ばれることになるとはね」
「だってあのXクラスは個々は強いじゃん。こいつ等がボコボコにされなかったのもXクラスの担任がいなかっただけだろ?」
「あれ? あんな奴いたっけ? 新入生かな?」

 四十個の魔法陣から四十人もの生徒が現れた。
 すると、隣でグレーとサテラが険しい顔をする。

「あれは、Bクラスの下位グループだ。一人一人は弱いが四十人もいたら流石にきついぞ」
「そうね。何故かミーナも今はいないし一度退いた方がいいかもしれないわね」
「ていうか。召喚魔法で人間を召喚するなんてせこくないですか?」

 俺が先輩たちに言ったつもりの言葉にDクラスのリーダー格の生徒が口を開く。

「あッはッは! ルールを読んでいないお前らが悪いんだよ! ルールには召喚魔法も可と書いてあっただろうが!」

 これが最初から狙いだったのだろう。
 Bクラスとなれば先輩たちの表情からも分かるように簡単には終わらない。
 いや、もしかしたらXクラスが全滅する可能性だってあり得る。

 一生懸命、頭の中で打開策を考えようとしていると、急にグレーが大声を上げた。

「……………………あっ! やっば! 俺天才かも!」

 その表情は先ほどの険しい表情ではなく、まるで歓喜のようなそんな表情だった。
 そして、すぐにグレーはサテラに耳打ちするようにして小声で何か伝える。
 すると、サテラもグレーと同じように飛び跳ねながら嬉しそうに笑った。 

「いいわね! 私たちだけ怒られるものなんだし!」
「だろ? 絶対、ミーナも同じこと考えてたんだって!」

 急に意気投合したように二人は嬉しそうに笑っている。
 なんか俺だけ仲間外れにされている気がするのだが?
 そんなことを思っていると、グレーがニヤニヤしながら俺の方へ近づいてきた。

「アレン。知ってるか? クラス対抗ランキング戦は個人ランキング戦にも反映されるんだ」
「いえ、知らなかったです」

 すると、もっと口角を上げてグレーはコソコソと俺に言う。

「だから俺たちは考えたんだ。もし、アレンがこいつら全員を一人で倒せたらどれだけランキングが上がるんだろうなって。もしかしたら三桁まで行ったりするかもしれない」

 今の俺のランキングは八千と少しだ。三桁になるのはもっと後の話だと思っている。
 だが、グレーはそれは確定しているかのように言った。

 しかし、俺一人で八十人も相手なんて可能なのだろうか。

「あの、それはどうやって――」

 そう思い、俺が聞き返そうとすると、

「「棄権リザイア」」
「……………………はい?」

 俺が振り返った瞬間にはもう二人はいなくなっていた。

 さて、俺にはこれからボコボコにされる未来しか見えないのだがそんな俺にどうしろというのだろう……………あ!
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