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一ヶ月の訓練

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 入学してから三週間と少し経った。
 明日にはもうランキング戦が始まる。

「緊張してきたな…………」

 俺はベットに寝転がってテレビを見ながら過去を思い出すようにして振り返る。





『はぁ。ちょっとでも期待した俺が馬鹿だった…………』
『…………なんかすみません』

 Xクラスは他クラスと違って授業もないため、最初のころはただひたすら戦闘訓練ばかりしていた。
 しかし所詮俺は十三歳。圧倒的に先輩たちに比べ体が作れれておらず、体格差があり過ぎる。
 なので毎日訓練をしたところでグレーに傷一つ、つけることが出来なかった。

 ということで、後半はサテラによる魔法学の授業だったのだが…………

『…………本当に才能ないわね』
『…………すみません』

 それはそうだ。この学園に入る前、一年間も魔王幹部たちと毎日、魔法訓練をしたのにもかかわらず、空間魔法系統以外の初級魔法さえも使えないのだから。

 しかし、本当に空間魔法の才能だけはあった。
 この世で現在発見されている全ての空間魔法を会得し、使えこなせるようになった。
 グレー曰く、空間魔法とグレーがこの一ヶ月で教えてくれた攻撃手段を組み合わせればギリギリ三桁に乗るか乗らないか程度だという。

 打撃技術特化のグレーに魔法攻撃特化のサテラ。
 では、ミーナは何なのかというと、ミーナは戦術だった。

『ここはこうなの。じゃないと敵の左軍に奇襲をかけられる可能性があるの』
『……………………』

 俺たちとは違う脳を持っているのではないかと勘違いしてしまうような高度な戦術に戦法。
 グレーやサテラのように迫力のある攻撃ではないものの一手一手の行動にしっかりとした意味があり、効果がある。
 俺より身長が小さく、俺が言い訳にしていた体格差が俺よりも激しいはずなのに、七百番台を維持しているのはまさに偉業だと言えるだろう。


 ここで名前の説明をしておこう。

 アレンやグレーのようにしっかりとした名前を持っている魔族は少ない。
 名前を持っている魔族は名前持ちネームドと呼ばれ、一族の中で一番強い子供の魔族に族長が授けるらしい。
 また、俺は何も考えずに名前を授けていたが、名前を付けるのには膨大な魔力を消費してしまうため命の危険もある行為なのだ。
 なので、名前持ちネームドは珍しく、他の魔族に比べ圧倒的な才能と実力を備えている。

 ちなみに名前を授けた時には普通、進化はしないらしい。
 そこは俺の特権のようだ。

 ちなみにグレーは餓狼族ヴェアウルフの族長の息子。
 サテラは月光族ライムーンの中で一番強い娘。
 ミーナは妖樹族ドライアドの中では弱かった方だが、自慢の思考力を使って、ライバルを蹴落とし名前を授けてもらったらしい。

 こんな兎のような可愛いらしいミーナが他人を蹴落とすなんて想像も出来ないし、想像もしたくないので俺はそこで思考を一度停止しておいた。

 先輩たちと俺が出会った時にグレーが御曹司? と驚いていたのは見た目や雰囲気でそこまで強者だと思えなかったためで、俺が魔王の息子であると知った時には納得してくれたようだ。




「家族か……………………」

 俺は潜り込んでいた意識を現実に戻し、テレビの方を見る。
 そこには家族団らんの光景が映っている番組をしていた。
 ちなみに映っているのは人間である。

 しかし、その町の光景や物などすべて見たことのないものであり、住んでいる世界が違うのではと、そう思ってしまうほどだった。
 他にもいろいろな番組があったが、これが意外と面白い。
 暇な時間をつぶすにはもってこいのものである。

「今頃、一族のみんなは何してるんだろうな…………」

 流石に一年経っているんだ。俺だって現実を受けいれている。
 魔王やドラ、ゴブくんなど俺には勿体ないくらいの人たちと出会えて、関わって、俺はどれだけ恵まれいるのだろうと今は思う。
 本当ならとっくに死んでいてもおかしくない状況だったのだから。

 俺を捨てた両親、忌み子と決めて俺を一族から追放した族長。
 今は一切恨んでいないし、恋しいとも思えない。
 正直に言って感謝しかない。こんな楽しい世界に捨ててくれて。

 でも、それでも俺の血の繋がった人たちだ。
 生きていてほしいとは思うのはおかしいのだろうか?


 そんなことを考えながら俺は眠りの混沌へと意識を手放した。
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