【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方

文字の大きさ
上 下
22 / 142

二二話 急に新しい仲間

しおりを挟む
「クソがぁ!」

 グレーはその雷電鳥の群れに向かってそう吠える。
 しかし、その雄たけびに怯むことなくその群れの塊はグレーに向かって突進する。

 正直、俺は二、三体仮契約できたらいいなと思っていた。
 仮契約はとてもじゃないが、子供が出来る技術ではない。
 テイマーの一族でも数名の精鋭がだけしか使えることの出来ない魔法なのだ。

 しかし、そんな魔法を今、俺は成功した。
 正直に言おう。今、俺はとても申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

「…………うッ! うわあああぁぁ!」

 巨大な的となっているグレーめがけて雷電鳥が口ばしや爪で攻撃を始めた。
 一個体は小さく手のひらに収まるサイズなため殺傷能力が低いものの、その分、俊敏さに長けておりグレーの大雑把な攻撃を全て避けている。

 俺はただその光景を棒立ちで眺めているだけだ。
 そう、俺は何もしていないのだ。

「あッはッは! 後輩をなめるからそんなことになるのよ!」
「久しぶりにグレーのダサいところ見れたの!」

 サテラとミーナはその光景を二階から指をさして笑っている。

「分かった! 俺の負けだぁ! 止めてくれ!」

 体もボロボロになりメンタルもボロボロになったグレーはもう、跪いていた。

「【解除】!」

 少し涙交じりのグレーの言葉を聞いて俺はすぐに仮契約の魔法を解除した。
 すると、何事もなかったかのように雷電鳥たちは上空に戻っていく。
 しかし、一体だけ俺の方へと近づいてきた。

「良ければまた私たちを呼んでください。すぐに一族、総出で参ります」

 そう言った紫電鳥が口にくわえていたものを俺の手の中に置く。
 それは光り輝く綺麗な宝石だった。
 一目見て雷を想像させるような黄色に光る石を見て俺は聞く。

「…………これは?」
「それは雷電鳥の信頼できるものに渡す魔石です。それがあれば全ての雷怪鳥があなたの傘下に入ったのと同じです」
「ちょ、ちょっと待って! なんでこんなすごいものを俺なんかに⁉」

 俺は話が追い付けなくなり、雷電鳥の話を一度止める。
 その間に脳をフル回転させた。

 そもそも魔獣は殺戮しか能のない獣だと思っていた。
 知能は勿論、言語を話すなんて聞いたこともないし見たこともない。

 そもそも傘下ってなんだ? 何故急にそんなことになる?

「えっと…………君、名前ある? 俺はアレン」
「そんな魔獣如きが――」
「じゃあラークで。名前がないと不便だからね」

 そして、予想通りラークの体が光始めた。
 それはゴブくん、ドラ、リーシャの時と同じ、進化の光だ。

「「「……………………」」」

 先輩たちはその俺の光景を口を開けたまま見ている。
 それはそうだろう。魔族と会話なんて俺も信じがたい出来事なのだから。

「名前なんて…………本当に私はなんとあなたにお礼したらいいか」

 光が収まったころにはラークの体は二倍以上の大きさになり、魔力量が数倍にも膨れ上がっていた。
 しかも、見た目は完全に鳥だったのに、今では二足歩行までして、まるで魔族のような姿になっている。
 知らない人に聞けば魔族と勘違いしてしまうのではないのだろうか。

「ちなみにラークは本当に雷電鳥なの?」
「いえ、私は『紫電鳥』。雷電鳥の上位種でした。百年も生きれば魔獣も進化はするんですよ」
「それで、今は?」

 俺のその問いにラークは苦笑いをしながら、答えた。

「多分…………魔獣から神魔獣に進化したんだと思います。なので今は『神雷鳥デックス』でしょう」
「へぇ。聞いたことないね…………じゃあそろそろ聞こうか。あれ! どういうこと⁉」

 俺は現実から目をそらしていた事実についてラークに聞く。
 俺とラークは同時に上を見上げた。

 俺と仮契約を交わした雷電鳥全てが眩い光に包まれているのだ。
 その光の濃さは太陽にもひけを劣らない。
 そう。それは進化の光だ。

「…………族長の私が進化したため、系譜で配下たち全員が紫電鳥に進化したようです」
「まじか…………あれ、全部俺の傘下とか言ってんの?」

 災害級の魔獣の集まりに流石の俺もそろそろ息をのむ。
 そして、その集まりの長が俺であることにもう一度息をのむ。
 そしてその状態の俺の目の前でラークは片足を折り頭を下げながら言う。

「どうか! アレン様! 我が一族の長となってはいただけないでしょうか!」

 その真意のこもった言葉に俺は少し圧倒されてしまう。
 最初は断ろうと思っていた。迷惑ごとが増えるのは嫌だからだ。

 正直、ラークの意図も分からない。
 急に仮契約してきた人間を信じる? 信頼?
 話の流れが早すぎて全く理解できない。

 しかし、今はラークの姿を見て俺はその軽い気持ちは簡単にへし折られてしまったようだ。

「…………分かった。でも、俺が呼んだとき以外はいつものように生活を送ること。それと魔族には危害を加えないこと」
「は、はい! 招致しました!」

 俺はまだ、頭を下げているラークに向かて手を差し出す。
 その手を握り返したのを確認すると俺は魔法を行使する。

「【契約リンク】!」

 こうして俺は、総数五百体の紫電鳥と一人の神雷鳥デックスが俺の傘下に入ったのだった。
 当然、先輩たちは唖然としてこちらを見ていた。
しおりを挟む
感想 89

あなたにおすすめの小説

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる

僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。 スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。 だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。 それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。 色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。 しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。 ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。 一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。 土曜日以外は毎日投稿してます。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...