上 下
13 / 142

十三話 学校へ行こう

しおりを挟む
「どうだ? 気に入ったか?」
「うん。ありがとう」

 俺は鏡に映る人間を見ながらそう答える。

 目の前には学校の制服を着た魔王とそっくりな漆黒の角と赤い目が特徴な世界一イケメンな人間がいます。
 そうです。俺です。
 ちょっと肉体改造しちゃいました。

 そんな俺に見惚れている俺を放って、魔王は感慨深そうに俺をまじまじと眺めながら言う。

「もう、アレンがここに来て一年になるのかぁ。俺の息子も大きくなったもんだ」
「本当にあの時の魔王には感謝してるよ」

 俺は一年前、この魔王城にドラとゴブくんの三人で乗り込んで色々あり、俺は魔王の息子になった。
 嘘みたいな話だが実際このように魔族の王である魔王と気軽に話しているのが現実なのだから。
 ちなみに俺が人間だと知っているのは魔王とドラとゴブくん、それと影の蝙蝠族オンバッツなどの王宮執事だけだ。

「感謝してるなら俺のこと…………父さんって言ってもいいんだぞ?」

 魔王のくせにもじもじしながら照れて言う魔王に俺は少し笑いながら、

「それは実の子供に言ってもらってよ」
「おい。その話はタブーで…………頼む」

 魔王には正式な実の息子が存在する。
 それこそ俺と同い年ぐらいだ。

 だが、魔王は十年前ほど配偶者との少しの亀裂で別居。そして離婚になるという前代未聞の事態が起きた。
 人間界では東の大陸は魔王が全て統治しているという話になっているが実際は違う。
 その東の魔大陸ディルガイナは今、南北で勢力が隔たれている。
 南は魔王が統治する地『ディルガイナ』
 北は魔王の実の息子を王とした『ビルべニア』

 本当にひどい親子喧嘩だと思う。

 トンッ

「おはよぉ。アレン」
「あ、おはよう! リーシャ」

 天井から降りてきた元『影の蝙蝠族オンバッツ』、今は『暗黒蝶ダークバータ』のリーシャだ。
 コウモリのような生々しい翼はまるで妖精の羽のように透明度が増した漆黒の羽になっている。
 また容姿も魔族の中では美しい方だったが、進化したことでずば抜けて美しくなった。

 魔王城内から出ないため、そこまで広まっていないものの、城内ではファンクラブのようなものが出来るほどだ。

 リーシャは俺に近づいてきて上から下まで俺の姿をじろっと見る。
 そしてにんまり笑っていながら。

「どうしたのぉ? そんなかっこいい服着ちゃってぇ。もしかして、私とデートしたいとかぁ? それなら夜限定で――」
「今日は学校の入学式なんだよ。魔王の勧めで俺も学校に行かないとな。って話になっちゃって」

 一年もすればリーシャのからかいかにはなれてくる。
 もう、動揺なんてすることはない。
 ……………………多分。 

 そんなことを考えているとリーシャは不思議そうな顔をして魔王に聞く。

「アレンが学校なんて行く必要あるのぉ? 同級生がかわいそうじゃなぁい?」

 俺だってこの一年何もしてこなかったわけではない。
 まぁ人間ということを知られないために魔王城の外にはめったに出ることは出来なかった。
 だが、その分俺は力をつけることにした。

 魔王に正確に測ってもらうと俺の魔力量は二段階目の魔族と同等レベルらしい。
 
 ついでにこの場で説明しておこう。

 魔族には段階クラスがある。
 まずは『零段階』。これは魔族ではなく魔物に分類される。
 次に『一段階』。これはまだ魔物っぽさが残っている。『緑人族ゴブリナなどがそうだ。
 そして『二段階』。ここからは少し魔族という印象が強くなる。
 最後に『三段階』。このレベルになると魔王幹部のレベルになる。蝙蝠族オンバッツ龍人族ドラグニートなどが当てはまる。

 これが通常、伝えられている進化段階というものだ。
 しかし、本当は違う。

 三段階の上には『準魔王級』。そして最終段階が『魔王級』。
 ちなみに、竜神族ドラグニル暗黒蝶ダークバータなどは準魔王級だ。

 そして気になっているであろう俺の特異体質。

 残念だが結局、宮廷魔導士に診せても分からなかった。
 しかし、一つだけ分かったことがある。

 俺と契約した魔族か魔物で俺が名前を付けると一段階進化するということだ。
 
 試しにどうしても俺と契約したいと言っていたリーシャと契約すると三段階から準魔王級にへと進化した。
 その時はみんなでおおいに喜んだ。一人娘を取られたみたいな表情をしていた魔王を除いて。

 また、魔王の許可をもらいドラとも正式に契約を交わした。
 ドラの場合、リーシャの時とは違い、一瞬で許可がもらえた。
 その時のドラの顔は思い出すだけで可哀想になる。

 うん。ご愁傷さまです。本当に。

 結果、俺と契約している魔族は、ゴブくんとドラ、リーシャの三人となったのだ。

「お。そろそろ時間だな。絶対にクラスメイトと仲良くするんだぞ? ちゃんと定時には帰ってくるんだぞ? 教師に怒られるようなことするんじゃないぞ?」

 一個一個まるで昨日考えていたことを思い出しながら、指で数えながら言った。
 俺とリーシャは笑いながらその魔王の様子を見る。

「お母さんか! そんなに心配しなくても疑似魔法で人間だとは誰も分からないよ」
「だけどな…………」
「…………行ってきます。父さん・・・
「……………………えッ?」
「【テレポート】!」

 俺は照れるのを隠すようにすぐさま半年かけて会得した空間魔法の最上級魔法を行使する。
 魔王ともあろう魔族が嬉しさで口を開けて涙目になっているのが少しおかしくて俺も最後は笑いながら目を閉じる。
 そして視界から光が失った。

 俺は思う。
 厚かましいような態度をとっているが俺は本当はその好意がとても嬉しいのだ。
 俺が一族から追放されたショックで道を外していないのもここにいる魔族たちのおかげだ。
 本当に感謝しきれないほどの恩をもらった。
 だから、いつか、俺が大人になった時にはその恩を倍で返せるような人間になりたいと改めて思った。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ブリードスキル いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……

石のやっさん
ファンタジー
虐められ自殺までした僕が異世界転移......もう知らない。 主人公である竜崎聖夜はクラスで酷いイジメにあっていた。 その執拗なイジメに耐えかねて屋上から飛び降り自殺をした瞬間。 聖夜のクラスが光輝き女神イシュタスの元に召喚されてしまう。 話しを聞くと他の皆は既に異世界ルミナスに転移ずみ。 聖夜は自殺し、死んでいたので蘇生したぶん後になったのだと言う。 聖夜は異世界ルミナスに行きたくなかったが、転移魔法はクラス全員に掛かっているため、拒否できない。 しかも、自分のジョブやスキルは、クラスの情報でイシュタスが勝手に決めていた。 そのステータスに絶望したが……実は。 おもいつきで書き始めたので更新はゆっくりになるかも知れません。 いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません…… からタイトルを『ブリードスキル いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……』に変更しました。 カクヨムコン9に出品予定でしたが、期間内に10万文字まで書けそうも無いのでカクヨムコン出品取り消しました。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

勇者のハーレムパーティを追放された男が『実は別にヒロインが居るから気にしないで生活する』ような物語(仮)

石のやっさん
ファンタジー
主人公のリヒトは勇者パーティを追放されるが 別に気にも留めていなかった。 元から時期が来たら自分から出て行く予定だったし、彼には時期的にやりたい事があったからだ。 リヒトのやりたかった事、それは、元勇者のレイラが奴隷オークションに出されると聞き、それに参加する事だった。 この作品の主人公は転生者ですが、精神的に大人なだけでチートは知識も含んでありません。 勿論ヒロインもチートはありません。 そんな二人がどうやって生きていくか…それがテーマです。 他のライトノベルや漫画じゃ主人公になれない筈の二人が主人公、そんな物語です。 最近、感想欄から『人間臭さ』について書いて下さった方がいました。 確かに自分の原点はそこの様な気がしますので書き始めました。 タイトルが実はしっくりこないので、途中で代えるかも知れません。

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

外れスキル『レベル分配』が覚醒したら無限にレベルが上がるようになったんだが。〜俺を追放してからレベルが上がらなくなったって?知らん〜

純真
ファンタジー
「普通にレベル上げした方が早いじゃない。なんの意味があるのよ」 E級冒険者ヒスイのスキルは、パーティ間でレベルを移動させる『レベル分配』だ。 毎日必死に最弱モンスター【スライム】を倒し続け、自分のレベルをパーティメンバーに分け与えていた。 そんなある日、ヒスイはパーティメンバーに「役立たず」「足でまとい」と罵られ、パーティを追放されてしまう。 しかし、その晩にスキルが覚醒。新たに手に入れたそのスキルは、『元パーティメンバーのレベルが一生上がらなくなる』かわりに『ヒスイは息をするだけでレベルが上がり続ける』というものだった。 そのレベルを新しいパーティメンバーに分け与え、最強のパーティを作ることにしたヒスイ。 『剣聖』や『白夜』と呼ばれるS級冒険者と共に、ヒスイの名は世界中に轟いていく――。 「戯言を。貴様らがいくら成長したところで、私に! ましてや! 魔王様に届くはずがない! 生まれながらの劣等種! それが貴様ら人間だ!」 「――本当にそうか、確かめてやるよ。この俺出来たてホヤホヤの成長をもってな」 これは、『弱き者』が『強き者』になる――ついでに、可愛い女の子と旅をする物語。 ※この作品は『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しております。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...