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五話 冒険の始まり
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兄の偽物、本当は本物の兄であるのだがこの時の俺はそんなこと考えなかったし、考えたくもなかった。
俺は自分でも気づけるはずなのに夢という言葉で自分の身を守ったのだ。
兄が逃げるように去っていったあとゴブくんはバッファローとユニコーンの角を地において言う。
「主。少し体を触ってもいいですか?」
「ああ。構わないよ」
俺が了承するとゴブくんは俺の心臓部分に手を置く。
そして、何かを感じ取るようにゴブくんは目をつぶった。
沈黙が俺とゴブくんの間に流れる。
終わったのかゆっくりとゴブくんは目を開ける。
まるで、信じられないものを見ているかのような表情をして。
「…………主が獣に逃げられる理由、そして魔物、今は魔族ですが僕と契約できた理由が分かりました」
言いにくそうにゴブくんは言った。
正直、夢だからそこのところはどうでもいいのだが、一応聞いてみようと思う。
「どんな理由なの?」
するとゴブくんは頭を押えながら言った。
「主の魔力量は人間の平均魔力量の…………五十倍程度あります」
「…………へぇー(棒)」
俺は特に興味がないように言葉を返した。
夢でなければ両親や、一族に自慢できることなのだが今は夢なのだ。
「へぇーじゃないですよ……この魔力量は魔族よりも普通に多いですから。そりゃあ魔物とも契約も出来ますし、獣も恐れちゃいますよ」
ゴブくんはそのあと詳しく話してくれた。
獣や魔物には器のようなものがあるらしい。
魔力が少ない人間と器が大きい獣は釣り合わないということだ。
俺は才能がない、とよく言われてきたがそれは魔力が少ないから。そう一族は思っていたのだ。
しかし現実は違った。
俺の場合、魔力が大きすぎて獣の器を超えてしまうため契約できなかったらしい。
容量を超えてしまうと最悪の場合、獣は死んでしまう。それがゴブくんの推測だった。
「多分…………僕も主の魔力量に耐えれなかったんだと思います」
ゴブくんは自嘲するように言った。
ゴブくん曰く、魔物の中でゴブリンは最低地位。自分の器も小さい。
たとえ人間の何倍もの器があり、人間となんて契約が出来ない魔物でも、平均の魔力量、五十倍もある俺よりは小さかったようだ。
「まぁ今では自分を褒めてますよ」
普通ならそこでゴブくんは死んでしまってもおかしくなかった。
だが、何かがきっかけで器が昇華し、魔物から魔族へと進化したのだ。
「そういえばゴブリンの魔族っているの?」
「…………いないと思います。最弱の魔物なので」
少し寂しそうに言うゴブくんの腕を俺は握って言う。
「じゃあお揃いだね!」
「…………え?」
その俺の行動を予測していなかったのかゴブくんは唖然としている。
「俺も最弱テイマー。ゴブくんも最弱魔族。最弱コンビだよ!」
「いや、主は最弱なんかでは――」
またネガティブ思考になっているゴブくんの背中を叩く。
「何がどうであれ俺が最弱と言われているんだ。だから、ここはもう一緒に本気で暴れちゃおうよ、ゴブくん」
俺はにこっと笑いながらゴブくんに言う。
まぁ夢だと思っているから。という理由もある。
するとゴブくんは置いてあった二本の角を抱えはっきりと言った。
「そうですね。我が主!」
そう言って俺たちは行く宛てもなくディルガイナへと向かう。
俺たちはデコボコだ。
それも最弱で、本当なら敵対する相手で、世界からは認められない二人。
だけれどもその二人には契約という物理的なものではなく強固な絆が今、出来た。
そんな二人を祝福するように雲一つない夜空に浮かぶ満月は俺たちを照らしていた。
俺は自分でも気づけるはずなのに夢という言葉で自分の身を守ったのだ。
兄が逃げるように去っていったあとゴブくんはバッファローとユニコーンの角を地において言う。
「主。少し体を触ってもいいですか?」
「ああ。構わないよ」
俺が了承するとゴブくんは俺の心臓部分に手を置く。
そして、何かを感じ取るようにゴブくんは目をつぶった。
沈黙が俺とゴブくんの間に流れる。
終わったのかゆっくりとゴブくんは目を開ける。
まるで、信じられないものを見ているかのような表情をして。
「…………主が獣に逃げられる理由、そして魔物、今は魔族ですが僕と契約できた理由が分かりました」
言いにくそうにゴブくんは言った。
正直、夢だからそこのところはどうでもいいのだが、一応聞いてみようと思う。
「どんな理由なの?」
するとゴブくんは頭を押えながら言った。
「主の魔力量は人間の平均魔力量の…………五十倍程度あります」
「…………へぇー(棒)」
俺は特に興味がないように言葉を返した。
夢でなければ両親や、一族に自慢できることなのだが今は夢なのだ。
「へぇーじゃないですよ……この魔力量は魔族よりも普通に多いですから。そりゃあ魔物とも契約も出来ますし、獣も恐れちゃいますよ」
ゴブくんはそのあと詳しく話してくれた。
獣や魔物には器のようなものがあるらしい。
魔力が少ない人間と器が大きい獣は釣り合わないということだ。
俺は才能がない、とよく言われてきたがそれは魔力が少ないから。そう一族は思っていたのだ。
しかし現実は違った。
俺の場合、魔力が大きすぎて獣の器を超えてしまうため契約できなかったらしい。
容量を超えてしまうと最悪の場合、獣は死んでしまう。それがゴブくんの推測だった。
「多分…………僕も主の魔力量に耐えれなかったんだと思います」
ゴブくんは自嘲するように言った。
ゴブくん曰く、魔物の中でゴブリンは最低地位。自分の器も小さい。
たとえ人間の何倍もの器があり、人間となんて契約が出来ない魔物でも、平均の魔力量、五十倍もある俺よりは小さかったようだ。
「まぁ今では自分を褒めてますよ」
普通ならそこでゴブくんは死んでしまってもおかしくなかった。
だが、何かがきっかけで器が昇華し、魔物から魔族へと進化したのだ。
「そういえばゴブリンの魔族っているの?」
「…………いないと思います。最弱の魔物なので」
少し寂しそうに言うゴブくんの腕を俺は握って言う。
「じゃあお揃いだね!」
「…………え?」
その俺の行動を予測していなかったのかゴブくんは唖然としている。
「俺も最弱テイマー。ゴブくんも最弱魔族。最弱コンビだよ!」
「いや、主は最弱なんかでは――」
またネガティブ思考になっているゴブくんの背中を叩く。
「何がどうであれ俺が最弱と言われているんだ。だから、ここはもう一緒に本気で暴れちゃおうよ、ゴブくん」
俺はにこっと笑いながらゴブくんに言う。
まぁ夢だと思っているから。という理由もある。
するとゴブくんは置いてあった二本の角を抱えはっきりと言った。
「そうですね。我が主!」
そう言って俺たちは行く宛てもなくディルガイナへと向かう。
俺たちはデコボコだ。
それも最弱で、本当なら敵対する相手で、世界からは認められない二人。
だけれどもその二人には契約という物理的なものではなく強固な絆が今、出来た。
そんな二人を祝福するように雲一つない夜空に浮かぶ満月は俺たちを照らしていた。
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