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19章 原点回帰
247話 闇に
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僕は気がつくと自分の部屋へと戻されていた。
レイスが僕を連れ帰ってくれたようだ。
今頃、ノワールはどうなっているのだろうか。レイスが心配しなくていいと言っていたが……
いや、今はそんな事どうでもいい。
「はぁ……」
僕は……僕は何のために生きてきたのだろうか。
今まで姉さん、リーシアが進むであろう道を僕は辿ってきた。
リーシアなら多くの者に慕われただろう。姉さんなら多くの者の才能を見出しただろう。
僕はただ亡くなったリーシアが歩むはずだった道を沿ってきただけなのだ。
しかし、リーシアは異なる道を進んでいた。
誰も助けてくれない、誰も見つけてくれない、八年間の孤独という道を。
「あああああああぁぁぁぁぁ――――!」
僕は全ての感情を吐き出すように叫び散らかす。
何が最強ギルドを目指すだ。何が隠れた才能を見出すだ。
そんなお気楽なことを考えている間にも、リーシアは苦しんでいた。
アレはリーシアなどと呼べるものではない。異形である。
だが、アレには確かに自我があった。リーシアらしき自我が【鑑定】で見ることが出来た。
「くそくそくそくそくそぉ!」
リーシアが死んだ。そのことを知ったのは八年前、僕が【鑑定】を得た日だ。
『今日は二人のスキルを譲渡しようと思います』
僕とカイロスの二人はノワールに呼び出され、彼にスキルを譲渡してもらった。
そして、譲渡してすぐにノワールは隠していた事実を告げる。
『ちなみにそのスキルは俺がお前らの姉を殺して手に入れたものだから』
最初、ノワールの言葉を僕は理解することが出来なかった。
だが、僕たちが状況を理解する前にノワールは魔法を行使し、僕たちの意識を奪ったのだ。
そして次の日から協会は跡形もなくなっていた。
「あの時……何で僕はあんな奴の言葉を信じたんだ!」
僕はノワールの言葉が真実だと思い込んでしまった。
彼が本当にリーシアを殺して僕たちにスキルを譲渡したのだと思っていたのだ。
少しでも可能性を考えていれば未来は変わっていたかもしれない。もしかしたら、リーシアと笑って暮らせる未来が訪れたかもしれない。
「あ、あぁ、何で僕は生きてんだろ……」
ほとぼりが冷めると急に虚無感が襲う。
全ては無力であった僕のせいだ。
僕が強ければ、僕が賢ければ、僕が、僕が僕が僕が僕が――
コンコンコン
「ロイド様。少し話したいことがあるんですけど、入ってもいいですか?」
「…………」
「入りますね」
答える気力もない僕はそのまま黙り込んでしまう。
その僕の沈黙を了承と捉えたエリスはゆっくりと扉を開けて、部屋に入ってきた。
そして、床に座り込んでいる哀れな僕を見て目を丸くする。
「ろ、ロイド様。だいじょうぶで――」
「出ていってくれないかい?」
僕は少し圧のある声でエリスに告げた。
今の哀れな僕を、よりによってエリスに見られたくない。
「今は放っておいてくれ。もう何も考えたくない」
ギルド長たるものが何を言っているのだろうか。
今一番大切な時期だと口にしたのは僕だ。
エリスが帰ってきているということは、こうしているうちに太陽の化身が攻略を進めているということである。
今まで順調に進んでいた躍進劇も、僕のせいで全て無に帰る可能性があるというわけだ。
しかし、今はもう何も考えたくない。考えれない。
「……」
それでもエリスはその場から動かなかった。
何か覚悟を決めてきているのか、僕の前から微動だに動かない。
「何だよ……何か言いたいなら言えよ!」
僕はそんな彼女にきつく当たってしまう。
こんな腐っている僕を見たら同情もしているのか、それとも哀れんでいるのか。
別にどちらでもいい。これから僕がこのギルドを引っ張っていくなんて無理だ。
今まで生き甲斐として大きく占めていたものは全て取り除かれていた。
もう僕には何も残って……
「ロイド様。黙って聞いててください」
「……」
エリスは地面に座り込んでいる僕を両手で包み込むように抱きしめる。
まるでクッションのように彼女の温かな胸が僕を受け止めた。
「私には好きな人がいるんです」
レイスが僕を連れ帰ってくれたようだ。
今頃、ノワールはどうなっているのだろうか。レイスが心配しなくていいと言っていたが……
いや、今はそんな事どうでもいい。
「はぁ……」
僕は……僕は何のために生きてきたのだろうか。
今まで姉さん、リーシアが進むであろう道を僕は辿ってきた。
リーシアなら多くの者に慕われただろう。姉さんなら多くの者の才能を見出しただろう。
僕はただ亡くなったリーシアが歩むはずだった道を沿ってきただけなのだ。
しかし、リーシアは異なる道を進んでいた。
誰も助けてくれない、誰も見つけてくれない、八年間の孤独という道を。
「あああああああぁぁぁぁぁ――――!」
僕は全ての感情を吐き出すように叫び散らかす。
何が最強ギルドを目指すだ。何が隠れた才能を見出すだ。
そんなお気楽なことを考えている間にも、リーシアは苦しんでいた。
アレはリーシアなどと呼べるものではない。異形である。
だが、アレには確かに自我があった。リーシアらしき自我が【鑑定】で見ることが出来た。
「くそくそくそくそくそぉ!」
リーシアが死んだ。そのことを知ったのは八年前、僕が【鑑定】を得た日だ。
『今日は二人のスキルを譲渡しようと思います』
僕とカイロスの二人はノワールに呼び出され、彼にスキルを譲渡してもらった。
そして、譲渡してすぐにノワールは隠していた事実を告げる。
『ちなみにそのスキルは俺がお前らの姉を殺して手に入れたものだから』
最初、ノワールの言葉を僕は理解することが出来なかった。
だが、僕たちが状況を理解する前にノワールは魔法を行使し、僕たちの意識を奪ったのだ。
そして次の日から協会は跡形もなくなっていた。
「あの時……何で僕はあんな奴の言葉を信じたんだ!」
僕はノワールの言葉が真実だと思い込んでしまった。
彼が本当にリーシアを殺して僕たちにスキルを譲渡したのだと思っていたのだ。
少しでも可能性を考えていれば未来は変わっていたかもしれない。もしかしたら、リーシアと笑って暮らせる未来が訪れたかもしれない。
「あ、あぁ、何で僕は生きてんだろ……」
ほとぼりが冷めると急に虚無感が襲う。
全ては無力であった僕のせいだ。
僕が強ければ、僕が賢ければ、僕が、僕が僕が僕が僕が――
コンコンコン
「ロイド様。少し話したいことがあるんですけど、入ってもいいですか?」
「…………」
「入りますね」
答える気力もない僕はそのまま黙り込んでしまう。
その僕の沈黙を了承と捉えたエリスはゆっくりと扉を開けて、部屋に入ってきた。
そして、床に座り込んでいる哀れな僕を見て目を丸くする。
「ろ、ロイド様。だいじょうぶで――」
「出ていってくれないかい?」
僕は少し圧のある声でエリスに告げた。
今の哀れな僕を、よりによってエリスに見られたくない。
「今は放っておいてくれ。もう何も考えたくない」
ギルド長たるものが何を言っているのだろうか。
今一番大切な時期だと口にしたのは僕だ。
エリスが帰ってきているということは、こうしているうちに太陽の化身が攻略を進めているということである。
今まで順調に進んでいた躍進劇も、僕のせいで全て無に帰る可能性があるというわけだ。
しかし、今はもう何も考えたくない。考えれない。
「……」
それでもエリスはその場から動かなかった。
何か覚悟を決めてきているのか、僕の前から微動だに動かない。
「何だよ……何か言いたいなら言えよ!」
僕はそんな彼女にきつく当たってしまう。
こんな腐っている僕を見たら同情もしているのか、それとも哀れんでいるのか。
別にどちらでもいい。これから僕がこのギルドを引っ張っていくなんて無理だ。
今まで生き甲斐として大きく占めていたものは全て取り除かれていた。
もう僕には何も残って……
「ロイド様。黙って聞いててください」
「……」
エリスは地面に座り込んでいる僕を両手で包み込むように抱きしめる。
まるでクッションのように彼女の温かな胸が僕を受け止めた。
「私には好きな人がいるんです」
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