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19章 原点回帰
246話 絶望
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ミントの言葉を聞いた瞬間、エリスは転移石を使ってダンジョンを脱出した。
彼女に続くように呆然としていた他の隊員も転移石を使う。
「早く、ギルドに戻らないと――」
ダンジョンの入り口まで転移すると、エリスはすぐにギルドへ向かって走り出そうとした。
そんな彼女の腕をミントが捕まえて静止させる。
「ちょっと待ってエリスちゃん! こっちの方が早い! 【転移】!」
ミントが魔法を行使するとエリスたちは白い眩い光に包まれた。
「ねぇ! ロイド様が誘拐されたってどういうことよ!」
ギルドに着くとエリスはギルド内の広間に座っていたニックの両肩を掴んで尋ねる。
ニックの隣にはエルナ、レーナ、ガジル、そしてミクが座っていた。
奥にはニックとエルナの部下である職人たちもいる。
「あ、エリスさん……お帰りなさい」
「お帰りなさいじゃないわ! 今はロイド様のことを聞いてるのよ!」
「そうでしたね。ロイド様は無事っすよ。今は自室にいます」
エリス達はロイドが無事ということを聞き、胸をなでおろす。
全く状況を理解できていないが、今はそれが第一優先事項だった。
「無事なの!? それならよかったわ……でも、無事なのに何でそんな顔してるのよ?」
「それは……」
ニックはエリスの問いに言葉を詰まらせる。
酷い表情をしているのはニックだけではない。周りにいる全員の表情から活気が失われていた。
何も言葉を発せないニックの代わりと言う風に一人の女性の声が響く。
「本当に申し訳ございませんでした。全ては私の責任です」
「ん? あなたは……」
エリスは聞き覚えのない声を聞いて首を傾げる。
この場にいるということはこの状況を作り出した関係者と考えて妥当であろう。
首を傾げているエリスを除くミントたちから十分な殺気が伝わる。
しかし、そんな彼らの殺気をも凌駕する殺気が彼女の背後から伝わった。
「おい! 何でここにお前がいるんだよ! レイス!」
「うっ!」
頭を下げていたレイスの首根っこを掴み、そのまま壁まで叩きつける。
見事に吹き飛ばされたレイスは叩きつけられた勢いで内臓が圧迫され、唾液を吐き出す。
「ふざけんなよ太陽のゴミが! ロイドさんに何をしたんだ!」
「違うネロ! レイスは――」
エルナは叩きつけられたレイスに近づくネロを静止させようといった。
しかし、今のネロには何も聞こえない。
ネロはレイスの胸ぐらを掴み、肉薄して叫ぶ。
「こうなるんだったらあの時お前を殺しておけばよかったぜ! こうやっていつもお前ら太陽の化身は俺たちを邪魔するのよなぁ!」
「ネロ。止めて。まだ私たちは事情も聞いてないでしょ」
「うるせぇんだよエリス! お前らは知らねぇかもしれねぇがこの女は太陽の化身の暗部なん――」
「黙ってって言ってるでしょ」
エリスはネロの頭に向かって軽く【ウォーターボール】を放った。
その魔法は特に威力もない初級以下の魔法である。
まさかエリスから攻撃が飛んでくるとは思ってもいなかったネロは見事にずぶ濡れになった。
そんな彼を放ってエリスはレイスのもとまで近づく。
そして、怯える彼女を安心させるようにエリスは告げた。
「ねぇレイス。あなた、レイでしょ?」
「え?」
「姿も声も違うけど分かるわ。雰囲気がそうだもの」
「いや、雰囲気って……」
「ずっと一緒に過ごしてたもの。分かって当たり前よ。だから分かるわ、あなたがロイド様を傷つけるはずがないって」
エリスは自分より荒れていたネロを見て落ち着いたのだろう。
そんな彼女の言葉を聞いてレイスの目からは決壊したよう涙が零れ落ちる。
「わ、私のせい……なんです……う、うぅ……私が……私が間に合わなかったから……」
「ロイド様のために頑張ってくれたんだよね。大丈夫。大丈夫だから」
水浸しで呆然としているネロからレイスを奪い、エリスは震える彼女を抱きしめる。
そして、彼女が落ち着いたのを確認すると、エリスは微笑みながら尋ねた。
「落ち着いて状況を説明してくれる?」
「は、はい……ロイド様は…………」
レイスは嗚咽を無理に押さえながらも一部始終をエリス達に説明したのだった。
彼女に続くように呆然としていた他の隊員も転移石を使う。
「早く、ギルドに戻らないと――」
ダンジョンの入り口まで転移すると、エリスはすぐにギルドへ向かって走り出そうとした。
そんな彼女の腕をミントが捕まえて静止させる。
「ちょっと待ってエリスちゃん! こっちの方が早い! 【転移】!」
ミントが魔法を行使するとエリスたちは白い眩い光に包まれた。
「ねぇ! ロイド様が誘拐されたってどういうことよ!」
ギルドに着くとエリスはギルド内の広間に座っていたニックの両肩を掴んで尋ねる。
ニックの隣にはエルナ、レーナ、ガジル、そしてミクが座っていた。
奥にはニックとエルナの部下である職人たちもいる。
「あ、エリスさん……お帰りなさい」
「お帰りなさいじゃないわ! 今はロイド様のことを聞いてるのよ!」
「そうでしたね。ロイド様は無事っすよ。今は自室にいます」
エリス達はロイドが無事ということを聞き、胸をなでおろす。
全く状況を理解できていないが、今はそれが第一優先事項だった。
「無事なの!? それならよかったわ……でも、無事なのに何でそんな顔してるのよ?」
「それは……」
ニックはエリスの問いに言葉を詰まらせる。
酷い表情をしているのはニックだけではない。周りにいる全員の表情から活気が失われていた。
何も言葉を発せないニックの代わりと言う風に一人の女性の声が響く。
「本当に申し訳ございませんでした。全ては私の責任です」
「ん? あなたは……」
エリスは聞き覚えのない声を聞いて首を傾げる。
この場にいるということはこの状況を作り出した関係者と考えて妥当であろう。
首を傾げているエリスを除くミントたちから十分な殺気が伝わる。
しかし、そんな彼らの殺気をも凌駕する殺気が彼女の背後から伝わった。
「おい! 何でここにお前がいるんだよ! レイス!」
「うっ!」
頭を下げていたレイスの首根っこを掴み、そのまま壁まで叩きつける。
見事に吹き飛ばされたレイスは叩きつけられた勢いで内臓が圧迫され、唾液を吐き出す。
「ふざけんなよ太陽のゴミが! ロイドさんに何をしたんだ!」
「違うネロ! レイスは――」
エルナは叩きつけられたレイスに近づくネロを静止させようといった。
しかし、今のネロには何も聞こえない。
ネロはレイスの胸ぐらを掴み、肉薄して叫ぶ。
「こうなるんだったらあの時お前を殺しておけばよかったぜ! こうやっていつもお前ら太陽の化身は俺たちを邪魔するのよなぁ!」
「ネロ。止めて。まだ私たちは事情も聞いてないでしょ」
「うるせぇんだよエリス! お前らは知らねぇかもしれねぇがこの女は太陽の化身の暗部なん――」
「黙ってって言ってるでしょ」
エリスはネロの頭に向かって軽く【ウォーターボール】を放った。
その魔法は特に威力もない初級以下の魔法である。
まさかエリスから攻撃が飛んでくるとは思ってもいなかったネロは見事にずぶ濡れになった。
そんな彼を放ってエリスはレイスのもとまで近づく。
そして、怯える彼女を安心させるようにエリスは告げた。
「ねぇレイス。あなた、レイでしょ?」
「え?」
「姿も声も違うけど分かるわ。雰囲気がそうだもの」
「いや、雰囲気って……」
「ずっと一緒に過ごしてたもの。分かって当たり前よ。だから分かるわ、あなたがロイド様を傷つけるはずがないって」
エリスは自分より荒れていたネロを見て落ち着いたのだろう。
そんな彼女の言葉を聞いてレイスの目からは決壊したよう涙が零れ落ちる。
「わ、私のせい……なんです……う、うぅ……私が……私が間に合わなかったから……」
「ロイド様のために頑張ってくれたんだよね。大丈夫。大丈夫だから」
水浸しで呆然としているネロからレイスを奪い、エリスは震える彼女を抱きしめる。
そして、彼女が落ち着いたのを確認すると、エリスは微笑みながら尋ねた。
「落ち着いて状況を説明してくれる?」
「は、はい……ロイド様は…………」
レイスは嗚咽を無理に押さえながらも一部始終をエリス達に説明したのだった。
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