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18章 成長3
237話 ダンジョン組
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ラクシアとミント、ローレンの三人は火山のダンジョンの攻略を始めた。
(やばいやばいやばい! 何で僕が上位ギルドの長をしてる二人とダンジョンに潜ってるの!?)
ラクシアは両隣にいるミントとローレンに視線を送りながら思う。
もちろん彼も理解していた。雲隠ではとんでもないことをやらされるのだろうと。
しかし、トップのギルマス。それも二人ともA級上位の実力を持つ冒険者だ。
そんな二人とE級冒険者が一緒にダンジョン攻略をするなどいかがなものなのだろうか。
「うわっ! ミントとローレンだぜ」
「なんで二人が一緒にダンジョン潜ってんだよ」
「それに真ん中の奴誰だ? 見たことない顔だが……」
攻略していく道中、多くの冒険者が三人のことを興味深そうに見ていた。
特にラクシアが多く視線を集めていただろう。それが彼にとってとても胃を苦しめるものだった。
「おい! 堂々と胸を張るんだ!」
「そうよ。ロイドが私たちと一緒に行かせたってことはそれなりに実力はあるんでしょ?」
「は、はい……」
ラクシアはそんな、か弱い声で応える。
(堂々って言われても……僕はそこまで強くないし……)
ラクシアは未だあまり実践を積んだことがなかったため不安が常時襲っていた。
他の隊員たちも最初はそうだったのだが、ここにはそんな彼の気持ちを理解してくれる者はいない。
「おっ! 魔物がいるぞ!」
「あれはファイアーゴーレムね。力的に言えばD級レベル。ラクシア。ちょっと戦ってみてよ」
今の階層は十。ネロとエリスとの合流地点までは少し距離があった。
十層であればD級、C級レベルの魔物が多く出てくる。
E級冒険者のラクシアではファイアーゴーレムなど歯が立たないと普通は思うだろう。
「え!? 僕ですか!?」
「だって俺たちなら一瞬で終わる敵だしな! 君の力を確かめるのにちょうどいい!」
「でも僕E級ですよ?」
「何言ってるのよ。雲隠のE級なんてA級のようなものじゃない。まぁやってみて。失敗したら私たちがカバーしてあげるから」
ミントの言葉を聞いてラクシアは渋々前に出る。
ファイアーゴーレムはその名の通り火をまとったゴーレムだ。
近接戦闘には向いていない。本来は魔術師が近づかれる前に撃破する。
遠距離攻撃であれば弓使いもいるのだが、圧倒的に火力が足りない。
巨大な岩石を矢で射貫けるか。それは否だ。弓使いとゴーレムはかなり相性が悪いのである。
(一発で、一発でやらないと失望される……!)
ラクシアは瞼を閉じ、深呼吸をしながら弓を構える。
そして、沈黙を保ったまま目を見開き、引いていた矢から手を離した。
ドガンッ!
矢は見事に運の力を借りて神殺の弓の能力を発動させる。
途轍もない速さで放たれた矢はゴーレムを跡形もなく吹き飛ばした。
「ふぅ。一発で出来て良かったです」
ラクシアは安堵しながら振り返って二人に言う。
しかし、彼の背後には我が子を見守るような慈愛のある表情を浮かべている二人はいなかった。
「「……え?」」
そこには口を大きく開け、目を丸くして呆けた二人が立っていたのだった。
(やばいやばいやばい! 何で僕が上位ギルドの長をしてる二人とダンジョンに潜ってるの!?)
ラクシアは両隣にいるミントとローレンに視線を送りながら思う。
もちろん彼も理解していた。雲隠ではとんでもないことをやらされるのだろうと。
しかし、トップのギルマス。それも二人ともA級上位の実力を持つ冒険者だ。
そんな二人とE級冒険者が一緒にダンジョン攻略をするなどいかがなものなのだろうか。
「うわっ! ミントとローレンだぜ」
「なんで二人が一緒にダンジョン潜ってんだよ」
「それに真ん中の奴誰だ? 見たことない顔だが……」
攻略していく道中、多くの冒険者が三人のことを興味深そうに見ていた。
特にラクシアが多く視線を集めていただろう。それが彼にとってとても胃を苦しめるものだった。
「おい! 堂々と胸を張るんだ!」
「そうよ。ロイドが私たちと一緒に行かせたってことはそれなりに実力はあるんでしょ?」
「は、はい……」
ラクシアはそんな、か弱い声で応える。
(堂々って言われても……僕はそこまで強くないし……)
ラクシアは未だあまり実践を積んだことがなかったため不安が常時襲っていた。
他の隊員たちも最初はそうだったのだが、ここにはそんな彼の気持ちを理解してくれる者はいない。
「おっ! 魔物がいるぞ!」
「あれはファイアーゴーレムね。力的に言えばD級レベル。ラクシア。ちょっと戦ってみてよ」
今の階層は十。ネロとエリスとの合流地点までは少し距離があった。
十層であればD級、C級レベルの魔物が多く出てくる。
E級冒険者のラクシアではファイアーゴーレムなど歯が立たないと普通は思うだろう。
「え!? 僕ですか!?」
「だって俺たちなら一瞬で終わる敵だしな! 君の力を確かめるのにちょうどいい!」
「でも僕E級ですよ?」
「何言ってるのよ。雲隠のE級なんてA級のようなものじゃない。まぁやってみて。失敗したら私たちがカバーしてあげるから」
ミントの言葉を聞いてラクシアは渋々前に出る。
ファイアーゴーレムはその名の通り火をまとったゴーレムだ。
近接戦闘には向いていない。本来は魔術師が近づかれる前に撃破する。
遠距離攻撃であれば弓使いもいるのだが、圧倒的に火力が足りない。
巨大な岩石を矢で射貫けるか。それは否だ。弓使いとゴーレムはかなり相性が悪いのである。
(一発で、一発でやらないと失望される……!)
ラクシアは瞼を閉じ、深呼吸をしながら弓を構える。
そして、沈黙を保ったまま目を見開き、引いていた矢から手を離した。
ドガンッ!
矢は見事に運の力を借りて神殺の弓の能力を発動させる。
途轍もない速さで放たれた矢はゴーレムを跡形もなく吹き飛ばした。
「ふぅ。一発で出来て良かったです」
ラクシアは安堵しながら振り返って二人に言う。
しかし、彼の背後には我が子を見守るような慈愛のある表情を浮かべている二人はいなかった。
「「……え?」」
そこには口を大きく開け、目を丸くして呆けた二人が立っていたのだった。
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