追放された【助言士】のギルド経営 不遇素質持ちに助言したら、化物だらけの最強ギルドになってました

柊彼方

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間章 過去

225話 測定日

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 神からの恩恵とも呼ばれるスキル。スキルはその者の人生を変えると言われており、スラム街の者たちにとっては唯一の救いだった。
 スラム出身者が不利でない立場で働けるとなると冒険者ぐらいしかない。
 
「何のスキルを持ってるのかな~!」

 僕たちは教会までの道のりを歩きながら期待を膨らませる。

「ロイドはね……優しそうなスキルをもらいそう」
「優しそうって冒険者向きじゃないってこと? 僕冒険者をしたいのに……」

 僕は一冊の英雄譚を読んでから、冒険者という職業に強い憧れを抱いていた。
 どんな窮地でも皆を守るために立ち上がり、剣を振るう。そんな英雄とも思える職業に就きたいと思っていた。

 しかし、姉さんと兄さんはあまり僕の意見には賛同してくれていない。

「私はあんまりロイドには冒険者はしてほしくないわね。そんな危険な仕事は兄ちゃんに任せておけばいいのよ」
「む? 俺の扱い雑過ぎんか? だが、まぁロイドにはいつも笑顔でいてもらいたいからな。家事系のスキルとか――」
「絶対にそれは嫌だから!」

 僕は兄さんの言葉を遮り、拗ねるように頬を膨らませた。

 僕はもう十二歳だ。二人が僕を愛しているというのは理解出来るが、自分のことは自分でしたい年頃である。
 早く大人になりたいといえばいいだろうか。
 それと、僕は恩返しがしたいのだと思う。
 孤独だった僕を愛してくれている二人に、明日への希望を持たせてくれる家族に恩返しがしたいのだ。
 そう考えれば親孝行に似ているかもしれない。

「ふぅ……やっと着いたな」

 二十分ほど歩くと白一色で塗られた建造物に辿りついた。ここが教会である。
 兄さんも緊張しているのか、どことなく手が震えている気がする。

「ここが教会……」

 協会の中に入ると高級そうな装飾に息をのんだ。
 いつも家とは呼べないような建物しか見たことがなかった僕たちにとって協会は王宮と錯覚するほどまぶしかった。

「おはようございます。カイロス様でしょうか?」
「そ、そうです……」
「分かりました。神父様がお待ちしております。どうぞこちらへ」

 僕たちは職員の後を沈黙したままついていく。
 本心ではこの緊張を紛らわすために相談したい。しかし、静寂なこの場所では喋ってはいけない。そんな空気が流れていた。

 鑑定部屋に辿りつくと神父らしき男性がいた。
 神父と言えばもっと白髭の生やしたおじいさんかと思っていたのだが、想像していたより若く見える。二十代前半ぐらいだろうか。

「こんにちは。カイロス様、リーシア様、ロイド様の三人のスキル鑑定でよろしいですね?」
「はい」
「では、お座りください」

 神父は予約の情報と照らし合わせ確認すると、僕たちを椅子に座らせた。

「では早速鑑定を始めます。すぐに終わりますのでリラックスしてお待ちください」

 神父は座っている僕たちを上から下までじろじろと観察し始める。
 鑑定系のスキルでも持っているのだろう。僕は魔道具で測定すると思っていたため少し意外だった。

「へぇ……」
「ん? な、何かおかしいことでもあるんですか?」
「いえいえ、もう少しで終わりますのでお待ちください」

 僕を鑑定している際、神父がにんまりと口角を上げたように見えた。
 しかし、僕の勘違いだったようだ。

 神父はペンを走らせ、鑑定の結果を記していく。
 
「まずカイロス様。カイロス様のスキルは【成長増幅】です」
「それは強いスキルなんですか?」

 兄さんにとって僕たちを守れるスキルかが最優先だ。
 ごくりと息をのんで兄さんは神父の答えを待つ。
 しかし、神父の表情は徐々に曇り、申し訳なさそうに答えた。

「正直に言ってこのスキルは外れですね。ちょっと人より成長が早いというスキルです」
「えっ!? そんな……」

 兄さんはその言葉を聞いて唖然とする。
 そんな兄さんを放って神父は次々にスキルの説明をしていった。

 僕のスキルは【万能者オールラウンダー】。
 全ての能力値が上昇するという強いスキルではある。だが、限界値というものがEらしい。
 これも兄さん同様ハズレに属するそうだ。
 
 しかし、僕はこのスキルを外れだとは思っていない。戦闘職向けであれば何でもいい。

「リーシア様は素晴らしいですね。二つも発現しています」

 姉さんのスキルは【鑑定】と【上級剣技】。
 神父曰く、最初からスキルを二つ所持している者は極稀だそうだ。
 鑑定に関しては外れスキルらしいが、上級剣技はかなり珍しいスキルである。
 剣技においてスキルの補助が入り、イメージ通りに体が動きやすくなるという能力。
 これから努力すれば攻撃者としてA級冒険者も望めるらしい。

「「ありがとうございました」」

 僕と姉さんは深々と神父に頭を下げた。
 これでこれから僕たちも方針を決め、仕事に就くことが出来る。兄さんにだけ負担をかけなくてもいいのだ。

「……あ、ありがとうございました」

 兄さんはぼうっとしていたのか、遅れて頭を下げた。
 そんな彼を見て神父は微笑みながら告げる。

「ふふっ……少しご相談があるのでカイロス様だけ残っていただけますか?」
「わ、分かりました。お前らは先に帰っててくれ」

 僕と姉さんは兄さんの言葉に従い、この部屋をあとにしたのだった。
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