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16章 成長2
214話 ラクシア
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その後もレルベアは着々と矢を中心に突き刺していった。
「レルベア、マジでやばすぎだろ!」
「あんなのC級でも無理じゃねぇか!?」
「あれと一緒に同時に試験なんて受けたくねぇよ」
受験生たちは目の前に突如現れた才能に肩を落とした。
実際、試験官も不正のことなど忘れ、彼の才能に感心しているほどである。
(最近、飛び級事件もあったよな? もしかして俺もいけるんじゃね?)
レルベアは弓の構えを解き、元の場所へと戻っていく。
彼は優越感を覚えているような表情を浮かべていた。
ディスタとレイザーはそんな彼の試験など気にも留めていなかった。
既に目に見えている結果。先程まで楽しみにしていたにもかかわらず、興味を失っていたのだ。
「ねぇ~あの子まだぁ?」
「レルベアのせいで色々怪我してたからな。試験官の配慮で最後にさせられてるみたいだ」
今もラクシアは自分のせいだと言い張っている。
試験官がレルベアの目の外で問い直してもなお、彼は笑いながら誤魔化すばかりだ。
「何故あいつは言わなかったんだろうな。あれは絶対に気づいてただろ」
「僕もそれは分かんないだよね~でも、あの子がいいならいいんじゃない?」
ラクシアが自分のせいにした理由を分かる者はこの場にはいない。
ラクシアもレルベアの態度から嵌められたと気付いていた。
だが、それをレルベアのせいではなく自分のせいにした理由は……
「まぁでも、僕はあの目嫌いだね。身に起きる現象は全部自分のせいみたいな目」
ディスタはいつものように陽気ではなく真剣みを帯びた声で口にする。
ラクシアは今までの人生を経て、人のせいではなく自分の不幸のせいだと考えるように思考を捻じ曲げられていた。
誰が何をしようと自分が関われば全て自分の不幸のせい。ポジティブな性格も自分の身を守る応急処置でしかない。
「でも、ならなんでお前はあんな奴に興味を持ったんだ? 今のところ悪い印象しかないぞ?」
「不思議に思わない~? あんな子がわざわざ試験を受けに来るなんてさ」
レイザーの問いにディスタは嬉しそうに答えた。
「……それもそうか。普通に強くなりたいとかか?」
「う~ん。多分違うね。命令されてる感じでもないし……多分誰かの期待に応えたいとかじゃないかな~」
「すごい考察だな。かといってお前の人を見る目は侮れないし」
鑑定士や助言士のように弓使いは人を良く見る役割だ。
相手の呼吸、動作、雰囲気で相手の思考を読み取り、矢を放つ場所を考える。
もちろんスキルや魔法で補える範囲はあるかもしれない。しかし、本物の弓使いになるためにはそんな誤魔化しは通用しない。
戦闘職の中では最強の弓使いであり、S級冒険者であるディスタが誰よりも人を見る目があるというわけだ。
もちろん、ロイドとは異なり、深淵を見ることは出来ない。見ることが出来るのは表面上の感情だけである。
「しかもあの弓……」
「あの弓? なんか初心者がよく持ちそうな武器だな」
ラクシアが背中に背負っている弓は一般の弓より一回り大きく、豪華な装飾であった。
外見重視で買ったのでは? と誰もが思うほどである。
しかし、レイザーの言葉を否定するようにディスタは首をは振った。
「いや、あれは……ふふっ、これは面白いものが見れそうだよ~」
ディスタはすぐそこまで来ている未知に満面の笑みを浮かべたのだった。
「レルベア、マジでやばすぎだろ!」
「あんなのC級でも無理じゃねぇか!?」
「あれと一緒に同時に試験なんて受けたくねぇよ」
受験生たちは目の前に突如現れた才能に肩を落とした。
実際、試験官も不正のことなど忘れ、彼の才能に感心しているほどである。
(最近、飛び級事件もあったよな? もしかして俺もいけるんじゃね?)
レルベアは弓の構えを解き、元の場所へと戻っていく。
彼は優越感を覚えているような表情を浮かべていた。
ディスタとレイザーはそんな彼の試験など気にも留めていなかった。
既に目に見えている結果。先程まで楽しみにしていたにもかかわらず、興味を失っていたのだ。
「ねぇ~あの子まだぁ?」
「レルベアのせいで色々怪我してたからな。試験官の配慮で最後にさせられてるみたいだ」
今もラクシアは自分のせいだと言い張っている。
試験官がレルベアの目の外で問い直してもなお、彼は笑いながら誤魔化すばかりだ。
「何故あいつは言わなかったんだろうな。あれは絶対に気づいてただろ」
「僕もそれは分かんないだよね~でも、あの子がいいならいいんじゃない?」
ラクシアが自分のせいにした理由を分かる者はこの場にはいない。
ラクシアもレルベアの態度から嵌められたと気付いていた。
だが、それをレルベアのせいではなく自分のせいにした理由は……
「まぁでも、僕はあの目嫌いだね。身に起きる現象は全部自分のせいみたいな目」
ディスタはいつものように陽気ではなく真剣みを帯びた声で口にする。
ラクシアは今までの人生を経て、人のせいではなく自分の不幸のせいだと考えるように思考を捻じ曲げられていた。
誰が何をしようと自分が関われば全て自分の不幸のせい。ポジティブな性格も自分の身を守る応急処置でしかない。
「でも、ならなんでお前はあんな奴に興味を持ったんだ? 今のところ悪い印象しかないぞ?」
「不思議に思わない~? あんな子がわざわざ試験を受けに来るなんてさ」
レイザーの問いにディスタは嬉しそうに答えた。
「……それもそうか。普通に強くなりたいとかか?」
「う~ん。多分違うね。命令されてる感じでもないし……多分誰かの期待に応えたいとかじゃないかな~」
「すごい考察だな。かといってお前の人を見る目は侮れないし」
鑑定士や助言士のように弓使いは人を良く見る役割だ。
相手の呼吸、動作、雰囲気で相手の思考を読み取り、矢を放つ場所を考える。
もちろんスキルや魔法で補える範囲はあるかもしれない。しかし、本物の弓使いになるためにはそんな誤魔化しは通用しない。
戦闘職の中では最強の弓使いであり、S級冒険者であるディスタが誰よりも人を見る目があるというわけだ。
もちろん、ロイドとは異なり、深淵を見ることは出来ない。見ることが出来るのは表面上の感情だけである。
「しかもあの弓……」
「あの弓? なんか初心者がよく持ちそうな武器だな」
ラクシアが背中に背負っている弓は一般の弓より一回り大きく、豪華な装飾であった。
外見重視で買ったのでは? と誰もが思うほどである。
しかし、レイザーの言葉を否定するようにディスタは首をは振った。
「いや、あれは……ふふっ、これは面白いものが見れそうだよ~」
ディスタはすぐそこまで来ている未知に満面の笑みを浮かべたのだった。
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