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15章 ミク
209話 ミク
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「少しいいかな?」
「あ、はい……」
僕は放心状態になっていた彼女に声をかける。
誰にも反応してもらえず、さらに隣にいた女性などギルド順位一位の太陽の化身に所属することになったのだ。
今の彼女の中では劣等感や嫉妬の感情で埋め尽くされているだろう。
「僕はロイドって言うんだ。一応ギルドマスターをしている」
「は、はぁ……」
いまいち状況が理解できていないのか、彼女は首を傾げている。
僕たちが彼女に手を差し伸べなければ彼女は王宮で働くことになっていただろう。
もちろん王宮で働く以上にいい環境はない。彼女がそれを望むなら僕たちも諦めよう。
しかし彼女なら絶対に僕の手を取ってくれるはずだ。
何故なら彼女は僕たちと同じ目をしているためである。
「ミク。僕のギルドに入ってくれないかい?」
「え……?」
「僕は君を成長させることが出来る。僕なら君を聖女なんて比べ物にならないような治癒者にさせることが出来る」
僕は彼女の不安を取り除くようにきっぱりと言い切った。
本来であればローレンとミントも僕の願望のような言葉を撤回するように促していただろう。
しかし、二人は知っているのである。僕の教育がどれほどの化け物を生むかということを。特にローレンはつい一週間前にこっぴどくやられたばかりである。
「で、でも……」
流石に初対面の幻想のような言葉を信じるはずもなく、彼女は眉をひそめた。
「アスカに勝ちたくないのかい?」
「なっ!? なんでそれを!?」
彼女は僕の言葉に目を見開いて驚く。
「そりゃあ二人の雰囲気が初めましてじゃなかったからね。色々あったんだろうなというのは傍からでも分るよ」
僕が普段から助言士として人を見ているからではない。
誰がどう見ようと彼女がアスカに劣等感を抱いていることは分かってしまう。
そして、逆もしかり。アスカもミクに劣等感やら罪悪感らを抱いていた。
「君は才能がないわけでも劣っているわけでもない」
僕の使命は隠れた才能を発掘すること。不遇な者に反逆の刃を与えることである。
「わ、私は今までアスカの付属品として生きてきたんです。そんな私でも……輝けることは出来るのでしょうか?」
ミクは目に涙を浮かべながら尋ねてきた。
彼女は前世もこのように多くの人からミクという人間ではなく、アスカの付属品としか見られてこなかったのだろう。
彼女の自信なさげな視線、雰囲気、態度、全てが現れていた。
「あぁ。君は付属品でもモブでもない。君は主人公なんだ。君自身が今を生来ているのなら永遠に主人公で居られ続ける」
この世にモブなんていない。付属品なんて存在しない。
「僕には君の力が必要なんだ。どうか君の力を貸してくれないだろうか」
「ろ、ロイドさん…………」
僕は誠心誠意、彼女に頭を下げた。
彼女はそんな僕の態度に戸惑いを隠せていない。
「わ、私にロイドさんが頭を下げるほどの力があるとは思いません」
「ミク……」
ミクは自信なさげに口にした。
今まで十七年間付属品だと思っていた彼女にとってそう簡単にその呪縛は取れない。
しかし、何かのきっかげがあれば人は変わることが出来る。
現にミクの瞳には少しずつ光は灯り始めていた。
「なのでこちらからお願いします。どうかロイドさんのもとで働かせてください」
「あぁ! よろしくね! ミク!」
こうしてミクは雲隠の極月に所属することになったのだった。
「あ、はい……」
僕は放心状態になっていた彼女に声をかける。
誰にも反応してもらえず、さらに隣にいた女性などギルド順位一位の太陽の化身に所属することになったのだ。
今の彼女の中では劣等感や嫉妬の感情で埋め尽くされているだろう。
「僕はロイドって言うんだ。一応ギルドマスターをしている」
「は、はぁ……」
いまいち状況が理解できていないのか、彼女は首を傾げている。
僕たちが彼女に手を差し伸べなければ彼女は王宮で働くことになっていただろう。
もちろん王宮で働く以上にいい環境はない。彼女がそれを望むなら僕たちも諦めよう。
しかし彼女なら絶対に僕の手を取ってくれるはずだ。
何故なら彼女は僕たちと同じ目をしているためである。
「ミク。僕のギルドに入ってくれないかい?」
「え……?」
「僕は君を成長させることが出来る。僕なら君を聖女なんて比べ物にならないような治癒者にさせることが出来る」
僕は彼女の不安を取り除くようにきっぱりと言い切った。
本来であればローレンとミントも僕の願望のような言葉を撤回するように促していただろう。
しかし、二人は知っているのである。僕の教育がどれほどの化け物を生むかということを。特にローレンはつい一週間前にこっぴどくやられたばかりである。
「で、でも……」
流石に初対面の幻想のような言葉を信じるはずもなく、彼女は眉をひそめた。
「アスカに勝ちたくないのかい?」
「なっ!? なんでそれを!?」
彼女は僕の言葉に目を見開いて驚く。
「そりゃあ二人の雰囲気が初めましてじゃなかったからね。色々あったんだろうなというのは傍からでも分るよ」
僕が普段から助言士として人を見ているからではない。
誰がどう見ようと彼女がアスカに劣等感を抱いていることは分かってしまう。
そして、逆もしかり。アスカもミクに劣等感やら罪悪感らを抱いていた。
「君は才能がないわけでも劣っているわけでもない」
僕の使命は隠れた才能を発掘すること。不遇な者に反逆の刃を与えることである。
「わ、私は今までアスカの付属品として生きてきたんです。そんな私でも……輝けることは出来るのでしょうか?」
ミクは目に涙を浮かべながら尋ねてきた。
彼女は前世もこのように多くの人からミクという人間ではなく、アスカの付属品としか見られてこなかったのだろう。
彼女の自信なさげな視線、雰囲気、態度、全てが現れていた。
「あぁ。君は付属品でもモブでもない。君は主人公なんだ。君自身が今を生来ているのなら永遠に主人公で居られ続ける」
この世にモブなんていない。付属品なんて存在しない。
「僕には君の力が必要なんだ。どうか君の力を貸してくれないだろうか」
「ろ、ロイドさん…………」
僕は誠心誠意、彼女に頭を下げた。
彼女はそんな僕の態度に戸惑いを隠せていない。
「わ、私にロイドさんが頭を下げるほどの力があるとは思いません」
「ミク……」
ミクは自信なさげに口にした。
今まで十七年間付属品だと思っていた彼女にとってそう簡単にその呪縛は取れない。
しかし、何かのきっかげがあれば人は変わることが出来る。
現にミクの瞳には少しずつ光は灯り始めていた。
「なのでこちらからお願いします。どうかロイドさんのもとで働かせてください」
「あぁ! よろしくね! ミク!」
こうしてミクは雲隠の極月に所属することになったのだった。
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