50 / 123
13章 緑山VS碧海
194話 融合魔法2
しおりを挟む
「【水式秘術】! 三式! 【水之殲滅斧】!」
ローレンはにんまりと笑みを浮かべて咆哮するように告げる。
彼が肩に担いでいた斧を媒体とし、水の加護によって百倍以上の大きさへと変貌した。
水で出来た巨大な斧。このステージを埋め尽さんとするほどの大きさだ。
観客たちはその異次元な光景に目を見開いて驚愕する。
「な、なんだあの巨大なやつは!?」
「でかすぎだろ!? あんなのどうやって防ぐんだよ!」
「これがローレンの【水式秘術】……こんなのまともに食らえば木っ端微塵だぞ!」
まるで夢かと考えてしまうほどの大きさ。それこそ絵に描くような光景である。
こんな技を構えられれば誰もが戦意をなくしてしまうだろう。この先にあるのは『死』のみである。
だが、そんな状況でも笑っていられる例外がこの場に一人だけいた。
「ふっふっふ……」
ミントはこの状況、この立場、この展開。全て上手くいく流れに歪な笑みを浮かべる。
(ロイドはこの状況を予想してたってわけね)
ロイドと出会う前のミントであればここで棄権していた。
【水式秘術】に対抗する魔法など物理的に人間では行使できないためである。
だが、人間を辞め、化け物になったミントでは話が違う。
(ここで私が【水式秘術】を破壊する。これこそがロイドの視た光景ね)
ロイドならミントの他の能力値を向上させることも出来ただろう。それが助言士としてすべき指導である。
しかし、彼は普通の指導を行わなかった。当たり前の指導を行わなかった。
彼が彼女に与えたのは窮地から逆転するための『反逆の刃』である。
「双方術式展開! 【岩の加速槍】! 【拡大】!」
ミントは甲高く自分の魔術を誇示するように叫んだ。
彼女の左右には何重にも重ねられた巨大な二つの術式が展開される。
ローレンの【水之殲滅斧】に見惚れていた観客たちの視線はすぐにミントへと集中した。
「おい……おいおいおい!? 術式展開はオルタナしか使えなかったんじゃねぇのかよ!?」
「そのはずだ! ってか双方術式展開!? なんだそれ!」
「しかもあの【岩の加速槍】って魔法……オリジナル魔法じゃないか!?」
観客たちの驚愕の波は収まりをみせない。
術式展開はオルタナしか使えない技術である。それをミントは先ほどの戦闘を見ただけで覚えたのだ。
術式を行使すると巨大な魔法を一瞬で使えるという効果がある。
詠唱を必要としない彼女には必要ないと思うかもしれないが、それは大いに間違っている。
(ローレン。あなたのミスは私が近接戦闘をした理由を知ろうとしなかったことよ)
術式を簡単に言うのであれば作り置き。
ミントは近接戦闘を行っている時に【岩の槍】と【風の波動】の術式を完成させ、同時並列思考で【岩の加速槍】を作り上げていたのだ。
彼女はそんな融合魔法にさらに魔法を融合させようとしているわけだ。
「むぐぅ……出来た!」
今回は術式を作り時間をかけていたため、高度な技術でも融合させることが出きた。
実際、術式には思考を必要としないため、融合させるということだけに三つの思考を使えるのだ。
(次から術式使お)
こうしてミントは着実と化け物の階段を上っていくが彼女自身、気づくことはない。
「融合術式展開! 【巨大岩の加速槍】!」
ミントは融合させた術式を展開させて巨大な魔法を顕現させた。
このステージを埋め尽くさんとする巨大な岩の槍と制御された暴風。
そんな【水之殲滅斧】並みの魔法を見て観客たちはただただ驚きをあらわにする。
「おいおいおい!? なんだあの魔法!」
「魔法が合体したぞ!? しかもあの大きさ! 【水之殲滅斧】と同じぐらいだ!」
「魔法が融合なんてありえないはずだ! なんでこんなことが……」
「これが本物のA級……こんなのやばすぎだろ!」
観客たちは怪獣の頂上決戦を見ているような気分で二人の試合を見ていた。
そして、その頂上決戦はすぐに幕を閉じる。
二人は全力を出しきるように咆哮した。
「打ち砕けえええええええぇぇぇぇぇ!」
「貫ぬけええええええええぇぇぇぇぇ!」
ローレンは巨大な斧をミントめがけて振り下ろし、ミントは巨大な槍をローレンめがけて放つ。
双方の魔法は巨大な爆発音をたてて衝突したのだった。
****
補足説明
・詠唱は魔法を行使するために必要な作業。詠唱破棄や短縮を持っている例外も存在する。
・術式展開は脳内で全て詠唱なしに作り上げる高度な技術。その分、無詠唱のようにすぐに使え、行使時に思考をする必要がないため、魔法の行使時と同時に別の行動もとれる。
・今回のミントに関してはまず近接戦闘中に【岩の槍】と【風の波動】の術式を作り置きする。そして、作り終えて思考に余裕ができると、余った二つの思考で融合させて【岩の加速槍】の術式を作る。
・融合魔法の術式となると二つ以上の思考を必要とする。融合魔法の融合魔法となると三つにもなる。
・【岩の加速槍】の術式と【拡大】の術式を展開させて、三つの思考を全部融合に使うことで【巨大岩の加速槍】が完成する。
ローレンはにんまりと笑みを浮かべて咆哮するように告げる。
彼が肩に担いでいた斧を媒体とし、水の加護によって百倍以上の大きさへと変貌した。
水で出来た巨大な斧。このステージを埋め尽さんとするほどの大きさだ。
観客たちはその異次元な光景に目を見開いて驚愕する。
「な、なんだあの巨大なやつは!?」
「でかすぎだろ!? あんなのどうやって防ぐんだよ!」
「これがローレンの【水式秘術】……こんなのまともに食らえば木っ端微塵だぞ!」
まるで夢かと考えてしまうほどの大きさ。それこそ絵に描くような光景である。
こんな技を構えられれば誰もが戦意をなくしてしまうだろう。この先にあるのは『死』のみである。
だが、そんな状況でも笑っていられる例外がこの場に一人だけいた。
「ふっふっふ……」
ミントはこの状況、この立場、この展開。全て上手くいく流れに歪な笑みを浮かべる。
(ロイドはこの状況を予想してたってわけね)
ロイドと出会う前のミントであればここで棄権していた。
【水式秘術】に対抗する魔法など物理的に人間では行使できないためである。
だが、人間を辞め、化け物になったミントでは話が違う。
(ここで私が【水式秘術】を破壊する。これこそがロイドの視た光景ね)
ロイドならミントの他の能力値を向上させることも出来ただろう。それが助言士としてすべき指導である。
しかし、彼は普通の指導を行わなかった。当たり前の指導を行わなかった。
彼が彼女に与えたのは窮地から逆転するための『反逆の刃』である。
「双方術式展開! 【岩の加速槍】! 【拡大】!」
ミントは甲高く自分の魔術を誇示するように叫んだ。
彼女の左右には何重にも重ねられた巨大な二つの術式が展開される。
ローレンの【水之殲滅斧】に見惚れていた観客たちの視線はすぐにミントへと集中した。
「おい……おいおいおい!? 術式展開はオルタナしか使えなかったんじゃねぇのかよ!?」
「そのはずだ! ってか双方術式展開!? なんだそれ!」
「しかもあの【岩の加速槍】って魔法……オリジナル魔法じゃないか!?」
観客たちの驚愕の波は収まりをみせない。
術式展開はオルタナしか使えない技術である。それをミントは先ほどの戦闘を見ただけで覚えたのだ。
術式を行使すると巨大な魔法を一瞬で使えるという効果がある。
詠唱を必要としない彼女には必要ないと思うかもしれないが、それは大いに間違っている。
(ローレン。あなたのミスは私が近接戦闘をした理由を知ろうとしなかったことよ)
術式を簡単に言うのであれば作り置き。
ミントは近接戦闘を行っている時に【岩の槍】と【風の波動】の術式を完成させ、同時並列思考で【岩の加速槍】を作り上げていたのだ。
彼女はそんな融合魔法にさらに魔法を融合させようとしているわけだ。
「むぐぅ……出来た!」
今回は術式を作り時間をかけていたため、高度な技術でも融合させることが出きた。
実際、術式には思考を必要としないため、融合させるということだけに三つの思考を使えるのだ。
(次から術式使お)
こうしてミントは着実と化け物の階段を上っていくが彼女自身、気づくことはない。
「融合術式展開! 【巨大岩の加速槍】!」
ミントは融合させた術式を展開させて巨大な魔法を顕現させた。
このステージを埋め尽くさんとする巨大な岩の槍と制御された暴風。
そんな【水之殲滅斧】並みの魔法を見て観客たちはただただ驚きをあらわにする。
「おいおいおい!? なんだあの魔法!」
「魔法が合体したぞ!? しかもあの大きさ! 【水之殲滅斧】と同じぐらいだ!」
「魔法が融合なんてありえないはずだ! なんでこんなことが……」
「これが本物のA級……こんなのやばすぎだろ!」
観客たちは怪獣の頂上決戦を見ているような気分で二人の試合を見ていた。
そして、その頂上決戦はすぐに幕を閉じる。
二人は全力を出しきるように咆哮した。
「打ち砕けえええええええぇぇぇぇぇ!」
「貫ぬけええええええええぇぇぇぇぇ!」
ローレンは巨大な斧をミントめがけて振り下ろし、ミントは巨大な槍をローレンめがけて放つ。
双方の魔法は巨大な爆発音をたてて衝突したのだった。
****
補足説明
・詠唱は魔法を行使するために必要な作業。詠唱破棄や短縮を持っている例外も存在する。
・術式展開は脳内で全て詠唱なしに作り上げる高度な技術。その分、無詠唱のようにすぐに使え、行使時に思考をする必要がないため、魔法の行使時と同時に別の行動もとれる。
・今回のミントに関してはまず近接戦闘中に【岩の槍】と【風の波動】の術式を作り置きする。そして、作り終えて思考に余裕ができると、余った二つの思考で融合させて【岩の加速槍】の術式を作る。
・融合魔法の術式となると二つ以上の思考を必要とする。融合魔法の融合魔法となると三つにもなる。
・【岩の加速槍】の術式と【拡大】の術式を展開させて、三つの思考を全部融合に使うことで【巨大岩の加速槍】が完成する。
20
お気に入りに追加
8,483
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。