追放された【助言士】のギルド経営 不遇素質持ちに助言したら、化物だらけの最強ギルドになってました

柊彼方

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13章 緑山VS碧海

188話 魔導拳闘士

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「調子乗んなよ。A級冒険者。魔術師を侮辱する奴は誰だろうが緑山の頂おれたちが許さない」
「「「……は?」」」

 淡々と告げたマルクスの言葉にこの試合を見ていた誰もが口を開けて呆然とした。
 そして、オルタナの試合同様に衝撃は遅れてやってくる。

「「「はあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」」

 この瞬間、試合を見ている国民たちの想いが一つに重なった。
 
(((水の七月を手で壊した!?)))

 水の七月はいわば伝説級の武器に値するSクラスの武器。
 そんな武器を彼は手で掴み粉砕した。こんな常識があっていいはずがないのだ。
 



 隻眼の工房。ギルドマスターの部屋にて。

「は、はああああぁぁぁ!? 俺様が作った武器に何してくれてやがる! あれ作るのに何年かかったと思ってるんだ!」

 対抗戦を自分のギルドで観戦していたアバドンは絶叫した。

 初戦で魔式拳銃を見て、既にニックへの嫉妬で死にかけていた彼だが、今もこうして生きているのは二回戦があったためだ。
 二回戦では自分の最高傑作、十二月シリーズがお披露目できる。
 魔式拳銃にほぼすべての注目がいくのはしょうがないが、なけなしの抵抗をしてやろうと考えたのだ。
 しかし、彼のそんな希望はこの瞬間に潰える。

「ってか手掴みで壊したよね!? 材料に紙でも使ったっけ!?」

 アバドンも同じ十二月シリーズか、それと同等の武器で壊されたなら納得出来はしないが、納得しようとする努力は見せたはずだ。
 だが、相手はなんと素手。それも左手から一切血も出ていない。その事実が彼のメンタルをズタボロに引き裂いていた。

「くそおおおおおぉぉぉぉ! 絶対ロイドさんの教え子じゃん! 俺もこんな肩書よりロイドさんのもとで働きたかったあああああああぁぁぁ!」





 緑山の頂の待合室にて。オルタナは治療室に向かったため、この部屋にいるのは僕とミントだけである。

「は、は、はくしょん!」
「どうしたのロイド。風邪でもひいた? 治癒魔法をかけてあげようか?」

 くしゃみをした僕にミントは心配そうに声をかけてくれる。

「いや、大丈夫ですよ。僕のことを誰かが噂したんでしょう。おおよそアバドンぐらいでしょうが」
「うん、あれはアバドン君も可哀そうだよ。ご愁傷さまとしか言いようがないね」

 ミントは今も絶叫をあげているだろうアバドンに向かって合掌をした。
 僕も彼女を見習って一応合掌をしておく。

((本当にご愁傷さまです))

 魔式拳銃に加えて、自分の最高傑作を壊されたとなると、彼のメンタルは今頃ボロボロになっているはずだ。

「それにしてもマルクスもすごいよ。まさかあんなに力をつけてるなんて」
「いやいや、あれはまだ半分ぐらいしか力を出してませんよ」
「……ん? じょ、冗談だよね?」

 僕の言葉にミントは目を見開いて驚いた。
 僕はそんな彼女の反応を見てにんまりと笑みを浮かべながら告げる。

「彼にはまだ補助魔法があります。今のステータスは彼自身のステータスです」
「いやいや、冗談だよね!? だってあれは攻撃者並みのステータスじゃ……」
「そうですよ。彼は六日間でそこまで上り詰めたんです。そこから補助魔法を行使した時、彼はやっと本気を出せるんですよ」

 これほどまで成長してくれたマルクスについて誇らしげに言うと、ミントは諦めたようにぶつぶつと呟き始めた。

「あ、うん。そうだったね。ロイドは化け物だった」

 人を化け物扱いしているミントだが、あと少しで観客全員から化け物扱いされることなど、今の彼女は想像もしていなかった。
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