追放された【助言士】のギルド経営 不遇素質持ちに助言したら、化物だらけの最強ギルドになってました

柊彼方

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13章 緑山VS碧海

182話 魔式拳銃

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「ゴホッ、ま、まぁちょっと待ってもろて」
「ん?」

 オルタナは咳きこみながらゆっくりと立ち上がる。
 完全に心が折れていたと思っていたレオーネは、彼の様子に眉をひそめた。

(僕も本気出さなあかんな)

 彼は怖かったのだ。この武器が誰かの命を刈り取るほどの威力があるのではないかと心配していたのだ。
 だが、通常状態で無傷となると、全力で撃っても命の危険はないだろう。

 まさに今まで誰かを気付つけることが怖かったオルタナにとって、レオーネは恐怖を拭うための最適の相手だったのだ。
 彼女を超えることで彼は弱点を克服することが出来る。

(まさかこれを予想してロイドさんは……)

 どう見てもレオーネが優勢な状況ではあるが、オルタナの中では全て事が上手く運んでいた。それはまるで誰かが想像した最適解のように。
 だが、今それを考えたところで目の前の敵を倒せるわけではない。
 オルタナはレオーネを倒すことだけに意識を集中させる。

「僕の本気、しっかり味わってや」

 オルタナはそう口にすると術式を展開し始めた。

「術式展開! 【全補助オールプロテクト】!」

 オルタナは幾つもの術式を同時に展開し、全身に補助魔法をかける。
 その人間離れした魔法の行使に落胆していた観客たちは再び盛り上がりを見せた。

「あれが補助魔法の至高ってやつか!」
「術式展開だろ? あれはオルタナだけしか使えない技だよな!」
「これで少しはレオーネとやりあえるんじゃないか?」

 オルタナだけが使える技、術式展開とは詠唱ではなく、脳内の術式をこの世に魔力で展開する。
 本来なら脳内の想像だけで済む術式も、現実に展開するとなると、その難易度は数十倍にも跳ね上がるのだ。
 それこそ魔法の全てを理解していなければ再現不可能の技である。

「魔力コントロール! 【魔弾装填】!」

 オルタナは彼の個性である魔力コントロールを使い、魔式拳銃に魔弾を装填し始めた。
 その魔弾は先ほどとは比べものにならないほど、強固で鋭利である。
 
「ほう! あの魔弾は全力じゃなかったのか!」

 レオーネは彼が作り出す魔弾を見てすぐに理解した。
 そう。彼女の言う通り、先ほどオルタナが作った魔弾は魔力コントロールすら利用していないただの魔力の塊。
 先ほどレオーネが食らった弾丸はただ魔力をぶつけられただけの攻撃だったのだ。

安全装置セーフティ解除!」

 オルタナは魔式拳銃の安全装置を解除する。安全装置はニックが念のためにつけていたオプションだ。
 安全装置は相手がB級以上でなければ外してはいけない。B級の中でもトップクラスであるレオーネが相手であれば外すことが出来る。

 別人かと思うほど覇気が変わったオルタナを見てレオーネはにんまりと笑みを浮かべた。

「早く! 早くお前の全力を――」
「これは僕の全力じゃない」
「――なっ!?」

 オルタナは魔術師とは思えないほどの速さでレオーネに詰め寄る。
 そして、レオーネの胸元に銃口を突き付け、至近距離でトリガーを引いた。

「ぐはっ!」
「「「……え?」」」

 レオーネはオルタナのようにそのまま後方へと吹っ飛ばされる
 あの女性冒険者で最強の守護者と呼ばれたレオーネが吹っ飛ばされたのだ。
 観客たちは自分の目を疑うかのように目を擦ったり、頬を引っ張ったりしている。

 レオーネは地に膝をつけ、少し嬉しそうに胸を押さえていた。どうやらその表情から推測するに、かなり威力はあったようだ。
 そんな彼女を見てオルタナは告げた。

「これはロイドさん、ニックさん、そして、ギルドの仲間たち、僕を必要としてくれたミントさんの力や。せいぜいみんなの想いの力を味わいや」
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