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28話 ボス戦前
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「もう朝……」
私は窓から差し込む朝日によって意識を覚醒させる。
昨日遅くまで騒いでいたからだろう。少し体が気だるく、どこか頭も痛い気がする。
「ほわぁ……」
あくびをしながら背筋を伸ばし、ベッドから立ち上がる。
今日はこれからの私たちの全てが決まる日なのだ。
今日さえ乗り越えれば全員がハッピーエンドを迎えられる。
そして、少しからず、初のダンジョン攻略者として名を上げることで王族たちへの牽制にもなるかもしれない。
私はそんな事実に胸を躍らせながら身支度を済ませていた。
冒険者ギルドの待合室にはすでにサーシャが到着していた。
「おはよう! エリスちゃん!」
「お、おはよう、サーシャ」
サーシャの挨拶に私は頬を紅潮させてしまう。
今までちゃん、などと付けてもらったことがない私にはちゃん付けは大ダメージになるのだ。
それこそ、魔獣の攻撃よりも何倍も効く凶器である。
「本当にお前ら仲良くなったよなぁ」
そんな私たちを親目線で見ているのか、あとから入ってきたテスラがため息交じりに言った。
娘をとられるかもという悲しみと娘の幸せを願う気持ちが拮抗しているのだろう。
入り乱れた感情でテスラの表情は変顔のようになっていた。
「……本当に仲良くなったよね」
そして、最後に来たエルナもテスラと同じようなことを言う。
本当に家族というものは何かと似るらしい。私の家族は一切似ていないが。
「なんだ? エルナ拗ねてるのか?」
「なっ!? そんなわけないじゃん!」
「痛いっ! 親に暴力をふるうなんてエルナらしく……痛いっ!」
照れを隠すためか、エルナはバシバシとテスラを叩いた。
その様子に子離れしたサーシャと違って未だにエルナはかまってくれているとでも思っているのか、テスラは満足げな笑みを浮かべている。
あと一歩ずれたら変人として危ういゾーンになるのでやめてもらいたいものだ。
「そ、そういえば。エリス。これをあなたに」
エルナは思い出したように私に近づいてくる。
そして、私に一本の短剣を差し出してきた。
「え? 短剣?」
「うん。刃こぼれしちゃってたでしょ?」
エルナはにんまりと笑みを浮かべて私に黒い短剣を握らせる。
エルナの言う通り私の短剣は刃こぼれしていた。
それは当然というもの。特にお金もなかったのでこの村で一番安い短剣を買ったためだ。
三週間もすれば流石に劣化する。しかし、まだ折れるまでにはいっていないので使うつもりだったのだ。
「いいの? こんなに高そうなの?」
「もちろん! 私はエリスに使ってもらいたいの!」
「なら、ありがたく使わせてもらうわね!」
私はありがたくその短剣をもらい受ける。
見た目は王族が使っていてもおかしくないほど高価そうなものだった。
もしかしたら家宝レベルの短剣なのかもしれない。
しかし、もらってくれと言われているのに断るのもどうかと思い私はその短剣を腰にさす。
「じゃあ準備もできたことだし、行くか。さっさと終わらせてかえって祝杯を挙げるぞ」
「「おおおぉぉぉ!」」
私とサーシャは体を寄せ合いながら天高く拳を上げる。
この時の私は恐怖なんて一ミリも感じていなかった。
あるのは充実感。日々の生きがいを感じることだけ。
だからなのだろう。
私が違和感に気づけていなかったのは。
私は窓から差し込む朝日によって意識を覚醒させる。
昨日遅くまで騒いでいたからだろう。少し体が気だるく、どこか頭も痛い気がする。
「ほわぁ……」
あくびをしながら背筋を伸ばし、ベッドから立ち上がる。
今日はこれからの私たちの全てが決まる日なのだ。
今日さえ乗り越えれば全員がハッピーエンドを迎えられる。
そして、少しからず、初のダンジョン攻略者として名を上げることで王族たちへの牽制にもなるかもしれない。
私はそんな事実に胸を躍らせながら身支度を済ませていた。
冒険者ギルドの待合室にはすでにサーシャが到着していた。
「おはよう! エリスちゃん!」
「お、おはよう、サーシャ」
サーシャの挨拶に私は頬を紅潮させてしまう。
今までちゃん、などと付けてもらったことがない私にはちゃん付けは大ダメージになるのだ。
それこそ、魔獣の攻撃よりも何倍も効く凶器である。
「本当にお前ら仲良くなったよなぁ」
そんな私たちを親目線で見ているのか、あとから入ってきたテスラがため息交じりに言った。
娘をとられるかもという悲しみと娘の幸せを願う気持ちが拮抗しているのだろう。
入り乱れた感情でテスラの表情は変顔のようになっていた。
「……本当に仲良くなったよね」
そして、最後に来たエルナもテスラと同じようなことを言う。
本当に家族というものは何かと似るらしい。私の家族は一切似ていないが。
「なんだ? エルナ拗ねてるのか?」
「なっ!? そんなわけないじゃん!」
「痛いっ! 親に暴力をふるうなんてエルナらしく……痛いっ!」
照れを隠すためか、エルナはバシバシとテスラを叩いた。
その様子に子離れしたサーシャと違って未だにエルナはかまってくれているとでも思っているのか、テスラは満足げな笑みを浮かべている。
あと一歩ずれたら変人として危ういゾーンになるのでやめてもらいたいものだ。
「そ、そういえば。エリス。これをあなたに」
エルナは思い出したように私に近づいてくる。
そして、私に一本の短剣を差し出してきた。
「え? 短剣?」
「うん。刃こぼれしちゃってたでしょ?」
エルナはにんまりと笑みを浮かべて私に黒い短剣を握らせる。
エルナの言う通り私の短剣は刃こぼれしていた。
それは当然というもの。特にお金もなかったのでこの村で一番安い短剣を買ったためだ。
三週間もすれば流石に劣化する。しかし、まだ折れるまでにはいっていないので使うつもりだったのだ。
「いいの? こんなに高そうなの?」
「もちろん! 私はエリスに使ってもらいたいの!」
「なら、ありがたく使わせてもらうわね!」
私はありがたくその短剣をもらい受ける。
見た目は王族が使っていてもおかしくないほど高価そうなものだった。
もしかしたら家宝レベルの短剣なのかもしれない。
しかし、もらってくれと言われているのに断るのもどうかと思い私はその短剣を腰にさす。
「じゃあ準備もできたことだし、行くか。さっさと終わらせてかえって祝杯を挙げるぞ」
「「おおおぉぉぉ!」」
私とサーシャは体を寄せ合いながら天高く拳を上げる。
この時の私は恐怖なんて一ミリも感じていなかった。
あるのは充実感。日々の生きがいを感じることだけ。
だからなのだろう。
私が違和感に気づけていなかったのは。
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