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23話 魔物
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「うわぁ」
私はダンジョン内の景色を見て嘆息を漏らす。
入り口からは想定できないような広大な光景が広がっていた。
おおよそは石造りだが、所々光っている苔のようなものが目に付く。
そのため、地下でありながらも適度な明るさは保たれていた。
「これってどこから行くのが正解なんですかね」
まるで大迷宮のような設計に私は目がくらみそうになる。
私の想像ではダンジョンは一本道で暗く、洞窟のような場所を想定していたのだ。
それがまさかここまで地下が広く、まるで別世界ともいえる場所があるとは思ってもいなかった。
テスラは多方向を見回してから前方を指さす。
「まぁ直線で歩いてったらいいだろ。サーシャ。記録頼む」
「分かりました」
頷いたサーシャは腰から一本の杖を抜き、空中に何かの文字を書き始めた。
そして、数秒でその文字列は完成し、眩き光始める。
それと同時にサーシャは魔法の名を叫んだ。
「【地図作成】!」
「うわぁ!」
目の前で光っていたはずの文字列はぐちゃぐちゃに混ざり、まるで地図のようなものが空中に映し出された。
初めて見るまともな魔法に私は少し唖然としていた。
いや、驚愕というべきだろうか。
「これは自分の行った場所を書き記してくれる魔法です」
そんな私に助け舟を出すようにサーシャは教えてくれる。
今まで危険であり、そんな知識は不要ということで魔法など見たことがなかったのだ。
この地図を見ると今まで進んできた道がきれいに記されていた。奥の方はまだ黒いもやがかかっているようで見れないが、足をかければ鮮明に映るのだろう。
私は地図は手書きで書くものだと思い込んでいたため、まさかこんな便利な魔法があるとは思ってもいなかった。
私は素直にそんな魔法を行使できるサーシャを称賛する。
「本当にすごわいね。サーシャって」
「そ、そんなことないですよ! エリスだってすぐに行使できるようになると思います」
サーシャは火照った頬を覚ますように手をパタパタさせながら言った。
しかし、今の私には照れるサーシャが可愛い。なんて考える余裕はない。
私はサーシャの言葉を聞いた瞬間、サーシャに肉薄し、両肩を掴んで問い直す。
「本当に!?」
「ほ、本当ですよ! 帰ったら教えます!」
近づいてきた私に驚きながらもサーシャは笑みを浮かべて承諾した。
そんな仲良さげにしている私たちを見て、テスラは振り返りまた嫉妬したのかツンとした態度で叫んでくる。
「おいお前ら! ここはダンジョンだぞ!」
「「あ、うし――」」
「言い訳はするな!」
私たちが後ろを指さそうとするとテスラは叱責して黙らせる。
どうやら嫉妬心と怒りが混ざって大変なことになっているようだ。
しかし、大変なのはテスラの体の方にもある。
「あのな! ダンジョンは何が起きるか分からないんだ! そこらの魔物討伐とは違う!」
「「…………ゴクリっ」」
私たちはテスラを見て息をのんだ。正確に言うのであればテスラの背後と言うべきだろう。
そんな反応もしない私たちにしびれを切らしたのかテスラは血管を浮き上がらせながら口にする。
「やる気がないなら帰るか!? それほどダンジョンでは警戒しないといけないん…………ぐはっ!」
そんな説教を遮るように背後からテスラの後頭部に打撃が入る。
そう。テスラの背後には緑色で人間のような体を持つ『ゴブリン』がいたのだ。
そのゴブリンが拳でテスラに拳骨をしたというわけである。
もちろん私もサーシャも注意をしようとした。
しかし、口止めされたので言えなかったのだ。
また、そこまで強そうでもなかったので言い訳を前提に黙ったという理由もある。
「ギャギャギャ♪」
攻撃がうまく入ったゴブリンは嬉しいのか飛び跳ねて喜んでいる。
しかし、そんな夢心地の時も一瞬である。
「……ふ、ふざけんなこのクソ魔物があああぁぁぁぁ!」
「ギャアアアアアアァァァァ!?」
たんこぶが出来ている頭を左手で押さえたテスラはもう片方の手でゴブリンを切りつける。
テスラの表情は鬼の形相になっていた。
私たちにその表情が向かないことを願いながらテスラを見守る。
こうして私たちの冒険が始まっていったのだった。
私はダンジョン内の景色を見て嘆息を漏らす。
入り口からは想定できないような広大な光景が広がっていた。
おおよそは石造りだが、所々光っている苔のようなものが目に付く。
そのため、地下でありながらも適度な明るさは保たれていた。
「これってどこから行くのが正解なんですかね」
まるで大迷宮のような設計に私は目がくらみそうになる。
私の想像ではダンジョンは一本道で暗く、洞窟のような場所を想定していたのだ。
それがまさかここまで地下が広く、まるで別世界ともいえる場所があるとは思ってもいなかった。
テスラは多方向を見回してから前方を指さす。
「まぁ直線で歩いてったらいいだろ。サーシャ。記録頼む」
「分かりました」
頷いたサーシャは腰から一本の杖を抜き、空中に何かの文字を書き始めた。
そして、数秒でその文字列は完成し、眩き光始める。
それと同時にサーシャは魔法の名を叫んだ。
「【地図作成】!」
「うわぁ!」
目の前で光っていたはずの文字列はぐちゃぐちゃに混ざり、まるで地図のようなものが空中に映し出された。
初めて見るまともな魔法に私は少し唖然としていた。
いや、驚愕というべきだろうか。
「これは自分の行った場所を書き記してくれる魔法です」
そんな私に助け舟を出すようにサーシャは教えてくれる。
今まで危険であり、そんな知識は不要ということで魔法など見たことがなかったのだ。
この地図を見ると今まで進んできた道がきれいに記されていた。奥の方はまだ黒いもやがかかっているようで見れないが、足をかければ鮮明に映るのだろう。
私は地図は手書きで書くものだと思い込んでいたため、まさかこんな便利な魔法があるとは思ってもいなかった。
私は素直にそんな魔法を行使できるサーシャを称賛する。
「本当にすごわいね。サーシャって」
「そ、そんなことないですよ! エリスだってすぐに行使できるようになると思います」
サーシャは火照った頬を覚ますように手をパタパタさせながら言った。
しかし、今の私には照れるサーシャが可愛い。なんて考える余裕はない。
私はサーシャの言葉を聞いた瞬間、サーシャに肉薄し、両肩を掴んで問い直す。
「本当に!?」
「ほ、本当ですよ! 帰ったら教えます!」
近づいてきた私に驚きながらもサーシャは笑みを浮かべて承諾した。
そんな仲良さげにしている私たちを見て、テスラは振り返りまた嫉妬したのかツンとした態度で叫んでくる。
「おいお前ら! ここはダンジョンだぞ!」
「「あ、うし――」」
「言い訳はするな!」
私たちが後ろを指さそうとするとテスラは叱責して黙らせる。
どうやら嫉妬心と怒りが混ざって大変なことになっているようだ。
しかし、大変なのはテスラの体の方にもある。
「あのな! ダンジョンは何が起きるか分からないんだ! そこらの魔物討伐とは違う!」
「「…………ゴクリっ」」
私たちはテスラを見て息をのんだ。正確に言うのであればテスラの背後と言うべきだろう。
そんな反応もしない私たちにしびれを切らしたのかテスラは血管を浮き上がらせながら口にする。
「やる気がないなら帰るか!? それほどダンジョンでは警戒しないといけないん…………ぐはっ!」
そんな説教を遮るように背後からテスラの後頭部に打撃が入る。
そう。テスラの背後には緑色で人間のような体を持つ『ゴブリン』がいたのだ。
そのゴブリンが拳でテスラに拳骨をしたというわけである。
もちろん私もサーシャも注意をしようとした。
しかし、口止めされたので言えなかったのだ。
また、そこまで強そうでもなかったので言い訳を前提に黙ったという理由もある。
「ギャギャギャ♪」
攻撃がうまく入ったゴブリンは嬉しいのか飛び跳ねて喜んでいる。
しかし、そんな夢心地の時も一瞬である。
「……ふ、ふざけんなこのクソ魔物があああぁぁぁぁ!」
「ギャアアアアアアァァァァ!?」
たんこぶが出来ている頭を左手で押さえたテスラはもう片方の手でゴブリンを切りつける。
テスラの表情は鬼の形相になっていた。
私たちにその表情が向かないことを願いながらテスラを見守る。
こうして私たちの冒険が始まっていったのだった。
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