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6話 ランク付け
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「エリス様のスキル。状況。実力はこれから測るとして、全てを考えたうえで現在は一番この場所がおすすめかと」
受付嬢が指差したこの場所は私も知っている。
この国の中で一番この王都から離れている辺境の村。カーラ村だ。
何故、こんな辺境を私が知っているのか。
それは英雄の出身地であるためだ。
一番王都から離れているということは、一番魔獣の領域に近いということである。
この大陸は太古の時代に西側が人族。東側が魔族。そんな取り決めがされている。
そして、カーラ村はほぼ境界線に位置する村なのだ。
「実際、ここ十年以上。カーラ村で強力な魔獣が襲ってきたという報告はありません。初心者のエリス様でも余裕で倒せるレベルの魔獣しかいないと思います」
実際、私のスキルがカスの疑いがある以上、危険な戦闘は出来るだけ避けたい。
そして、私はこの王都からできるだけ離れたい。再び王族や貴族と顔を合わせるなど二度とごめんだ。
そんな要望を満たしてくれる場所がこのカーラ村ということである。
「私の妹がカーラ村で働いております。もし、エリス様が了承なさるのならば担当受付嬢になるように言っておきましょう」
「分かったわ。それでお願いできるかしら?」
「かしこまりました」
ここまで待遇してもらっているのだ。どこに断る理由など見つかるのだろうか。
そもそも英雄の出身地であるという時点で私は了承するつもりだった。
私の知らない英雄の物語を知れるかもしれない。
私の未知を埋め、私の人生を見いだせるかもしれない。
「では、最後にランク付けを行います。私についてきてください」
私は言われた通り、受付嬢の後を追って冒険者ギルドの奥へと進んでいく。
進んでいく度に若者の叫び声が耳にうっすらと届いてきた。
どうやらこの奥が冒険者ギルドのランク付けをする会場のようだ。
受付嬢は閉まっていた扉を開きながら口にする。
「ここでランク付けを行います」
冒険者ギルドの最奥には訓練場のような大きな部屋があった。
この部屋はすべて金属だけで作られたのだろう。金属や汗などが混ざり合った独特のにおいがする。
また、私にはよく理解できないため、想像でしかないが結界が張られている気がする。
防音と耐久性向上だろうか。どことなく違和感があった。
そして、三組ぐらいいるだろうか。私と同様に冒険者になろうとしている人たちがギルド職員と戦闘を繰り広げている。
やはり初心者と言ったところだ。私の想像とはかけ離れているほど残念な戦闘だった。
受付嬢はそのままこの部屋の奥の椅子で貫禄のある座り方をしている男性のもとへ向かっていった。
貫禄だけなら父にも劣らないかもしれない。
となると、やはり…………
「ギルマス。この女性にランク付けをお願いします」
「は? なんで俺がしなきゃならねぇんだよ」
ギルマスと呼ばれた男は受付嬢にがんを飛ばしながら聞いてくる。そこらの職員とは私でも別格だと理解できた。
「このお方は元第一王女です。丁重に扱わなければなりません」
「あぁ! 朝話題になってたやつか! 確か調べたら本物の娘じゃなかったとかで平民に堕とされたってやつだろ? あっはっは! 同情しかできないぜ!」
「ギルマス! エリス様の前です! お言葉はお気を付けください!」
豪快に笑っていたギルマスに向かって受付嬢は雰囲気を変えて叱責する。
しかし、ギルマスは特に気する様子もなく答えた。
「あん? もう今は平民なんだろ? ならそんなこと、気にすることもねぇだろ」
「ですが……」
受付嬢はその正当の答えに言葉を詰まらせる。
私はこの時、やっと自分の脳が理解した気がした。
私はもう平民なのだと。
私は二人に頭を下げながらお願いする。
「えぇ。ギルドマスターさんの言う通りです。通常通り試験をお願いします」
「……へぇ。嬢ちゃん。顔上げな」
そんな私を見てギルマスは興味深そうな表情をした。
それは先ほどの憐れむような視線とは全くの別物である。
「その態度に免じて、特別に俺が試験官してやんよ」
興味深そうな表情は徐々に変化し、最終的には歪な笑みになっていたのだった。
受付嬢が指差したこの場所は私も知っている。
この国の中で一番この王都から離れている辺境の村。カーラ村だ。
何故、こんな辺境を私が知っているのか。
それは英雄の出身地であるためだ。
一番王都から離れているということは、一番魔獣の領域に近いということである。
この大陸は太古の時代に西側が人族。東側が魔族。そんな取り決めがされている。
そして、カーラ村はほぼ境界線に位置する村なのだ。
「実際、ここ十年以上。カーラ村で強力な魔獣が襲ってきたという報告はありません。初心者のエリス様でも余裕で倒せるレベルの魔獣しかいないと思います」
実際、私のスキルがカスの疑いがある以上、危険な戦闘は出来るだけ避けたい。
そして、私はこの王都からできるだけ離れたい。再び王族や貴族と顔を合わせるなど二度とごめんだ。
そんな要望を満たしてくれる場所がこのカーラ村ということである。
「私の妹がカーラ村で働いております。もし、エリス様が了承なさるのならば担当受付嬢になるように言っておきましょう」
「分かったわ。それでお願いできるかしら?」
「かしこまりました」
ここまで待遇してもらっているのだ。どこに断る理由など見つかるのだろうか。
そもそも英雄の出身地であるという時点で私は了承するつもりだった。
私の知らない英雄の物語を知れるかもしれない。
私の未知を埋め、私の人生を見いだせるかもしれない。
「では、最後にランク付けを行います。私についてきてください」
私は言われた通り、受付嬢の後を追って冒険者ギルドの奥へと進んでいく。
進んでいく度に若者の叫び声が耳にうっすらと届いてきた。
どうやらこの奥が冒険者ギルドのランク付けをする会場のようだ。
受付嬢は閉まっていた扉を開きながら口にする。
「ここでランク付けを行います」
冒険者ギルドの最奥には訓練場のような大きな部屋があった。
この部屋はすべて金属だけで作られたのだろう。金属や汗などが混ざり合った独特のにおいがする。
また、私にはよく理解できないため、想像でしかないが結界が張られている気がする。
防音と耐久性向上だろうか。どことなく違和感があった。
そして、三組ぐらいいるだろうか。私と同様に冒険者になろうとしている人たちがギルド職員と戦闘を繰り広げている。
やはり初心者と言ったところだ。私の想像とはかけ離れているほど残念な戦闘だった。
受付嬢はそのままこの部屋の奥の椅子で貫禄のある座り方をしている男性のもとへ向かっていった。
貫禄だけなら父にも劣らないかもしれない。
となると、やはり…………
「ギルマス。この女性にランク付けをお願いします」
「は? なんで俺がしなきゃならねぇんだよ」
ギルマスと呼ばれた男は受付嬢にがんを飛ばしながら聞いてくる。そこらの職員とは私でも別格だと理解できた。
「このお方は元第一王女です。丁重に扱わなければなりません」
「あぁ! 朝話題になってたやつか! 確か調べたら本物の娘じゃなかったとかで平民に堕とされたってやつだろ? あっはっは! 同情しかできないぜ!」
「ギルマス! エリス様の前です! お言葉はお気を付けください!」
豪快に笑っていたギルマスに向かって受付嬢は雰囲気を変えて叱責する。
しかし、ギルマスは特に気する様子もなく答えた。
「あん? もう今は平民なんだろ? ならそんなこと、気にすることもねぇだろ」
「ですが……」
受付嬢はその正当の答えに言葉を詰まらせる。
私はこの時、やっと自分の脳が理解した気がした。
私はもう平民なのだと。
私は二人に頭を下げながらお願いする。
「えぇ。ギルドマスターさんの言う通りです。通常通り試験をお願いします」
「……へぇ。嬢ちゃん。顔上げな」
そんな私を見てギルマスは興味深そうな表情をした。
それは先ほどの憐れむような視線とは全くの別物である。
「その態度に免じて、特別に俺が試験官してやんよ」
興味深そうな表情は徐々に変化し、最終的には歪な笑みになっていたのだった。
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