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5話 覚醒
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「はい。大体の手続きは完了しました。あとは覚醒とランク付けですね」
書類の作成を終了させた受付嬢は私の前に一つの石板を持ってきた。
本当にこの受付嬢には感謝しかない。
他の受付嬢ではこうは上手くいっていなかったかもしれないのだから。
「では、スキルの説明をしましょう」
受付嬢は慣れた手つきで説明を始めた。
スキル。それは世界からの加護である。
冒険者になるためには必要なもので、戦闘を有利に運んでくれるのだ。
例えば【勇者】、【剣聖】、【魔剣士】なんてところが有名どころである。
発現は個人によって異なるため弱いスキルもあれば強力なスキルもある。
スキルによって冒険者人生が左右されると言っても過言ではない。
「では、覚醒作業を行います。エリス様。お手を石板に」
この瞬間、私のこれからの人生の全て決まるのだ。
「……ふぅ」
私は一度深呼吸をしてから手をゆっくりと石板に差し出した。
私は二度と何かに縋るような女になりたくない。
自分の力で勝ち取れるようになりたい。
私はもう絶対に誰にも捨てられるような女になりたくない。
私は――英雄になりたい!
その瞬間。石板が神々しく光を発した。
どうやら私の中でスキルが覚醒したようだ。
「大丈夫です。えっと……」
受付嬢はその石板をとって記された結果を確認する。
私はそんな受付嬢の様子を両手を合わせて願いながら見守った。
お願いします。どうか強いスキルを、
しかし、その受付嬢の表情は徐々に想像もしていない状態へと変貌へしていく。
「こ、これは……」
「ど、どうかしたのかしら?」
私は受付嬢の驚愕の表情を見て動揺をしてしまう
明らかにこの状況では普通ではなかった。
「初めて見るスキルですね……【統率者】と読むのでしょうか」
「……おぉ?」
私はその言葉を聞いて少しだけ沈んでいた気分を上げる。
どうやら名前を聞いた感じ、しょぼいスキルではないようだ。
「これはユニークスキルですね! しかし、すべて不明とは……」
そう言いながら受付嬢は私に石板の写しを見せてきた。
『エリス』
ユニークスキル・【統率者】
効果・不明
発現条件・不明
そう。ほぼ不明だらけであったのだ。
「他のユニークスキルでもこんなことは一度も起きませんでした。もしかするとこれはカスかもしれません」
「……カス?」
ユニークスキルと聞いて喜んでいた私に受付嬢は深刻そうに言ってきた。
その言葉が私の不安をかきたてる。
そして、不安を現実にするように受付嬢は口にした。
「はい。中身のないもののことです。名前だけしかない外れスキルだと考えてもらった方が分かりやすいでしょうか?」
「え、外れスキル? 外れって言ったのかしら?」
私は今の古馬の現状が信じられなず、二度聞きしてしまう。
私のスキルはカス? 中身のない? 外れ?
私は負け犬?
受付嬢は私に同情するような視線を向けてくる。
「このスキルで冒険者になるのは正直……」
「…………ッ!」
これから私はどうすればいいんだ?
そんな考えが私の脳裏を埋め尽くす。
しかし、ここで私が冒険者になることを諦めれば何かが私の中で終わる気がした。
だから私は元気な装いをする。
諦めなければ終わりはないのだ。
すると受付嬢は少し私から怯えるように距離をとり始める。
最初から二倍以上離されただろうか。
「そこまで睨まないでくださいよ。もちろん私にも案があります」
「そ、そうなの? ってか睨んではないわよ!」
落ち込んでいた私の笑気を取り戻すように受付嬢は言ってくれた。
本当にこの受付嬢は容量がいい。もし私が貴族であれば王族の権限で昇進させられるレベルぐらい助かっている。
そんな受付嬢はゆっくりと私の前に大きな地図を差し出した。
「では、エリス様。ここなんていかがでしょうか?」
そう言って受付嬢はこの国から離れた辺境を指さしたのだった。
書類の作成を終了させた受付嬢は私の前に一つの石板を持ってきた。
本当にこの受付嬢には感謝しかない。
他の受付嬢ではこうは上手くいっていなかったかもしれないのだから。
「では、スキルの説明をしましょう」
受付嬢は慣れた手つきで説明を始めた。
スキル。それは世界からの加護である。
冒険者になるためには必要なもので、戦闘を有利に運んでくれるのだ。
例えば【勇者】、【剣聖】、【魔剣士】なんてところが有名どころである。
発現は個人によって異なるため弱いスキルもあれば強力なスキルもある。
スキルによって冒険者人生が左右されると言っても過言ではない。
「では、覚醒作業を行います。エリス様。お手を石板に」
この瞬間、私のこれからの人生の全て決まるのだ。
「……ふぅ」
私は一度深呼吸をしてから手をゆっくりと石板に差し出した。
私は二度と何かに縋るような女になりたくない。
自分の力で勝ち取れるようになりたい。
私はもう絶対に誰にも捨てられるような女になりたくない。
私は――英雄になりたい!
その瞬間。石板が神々しく光を発した。
どうやら私の中でスキルが覚醒したようだ。
「大丈夫です。えっと……」
受付嬢はその石板をとって記された結果を確認する。
私はそんな受付嬢の様子を両手を合わせて願いながら見守った。
お願いします。どうか強いスキルを、
しかし、その受付嬢の表情は徐々に想像もしていない状態へと変貌へしていく。
「こ、これは……」
「ど、どうかしたのかしら?」
私は受付嬢の驚愕の表情を見て動揺をしてしまう
明らかにこの状況では普通ではなかった。
「初めて見るスキルですね……【統率者】と読むのでしょうか」
「……おぉ?」
私はその言葉を聞いて少しだけ沈んでいた気分を上げる。
どうやら名前を聞いた感じ、しょぼいスキルではないようだ。
「これはユニークスキルですね! しかし、すべて不明とは……」
そう言いながら受付嬢は私に石板の写しを見せてきた。
『エリス』
ユニークスキル・【統率者】
効果・不明
発現条件・不明
そう。ほぼ不明だらけであったのだ。
「他のユニークスキルでもこんなことは一度も起きませんでした。もしかするとこれはカスかもしれません」
「……カス?」
ユニークスキルと聞いて喜んでいた私に受付嬢は深刻そうに言ってきた。
その言葉が私の不安をかきたてる。
そして、不安を現実にするように受付嬢は口にした。
「はい。中身のないもののことです。名前だけしかない外れスキルだと考えてもらった方が分かりやすいでしょうか?」
「え、外れスキル? 外れって言ったのかしら?」
私は今の古馬の現状が信じられなず、二度聞きしてしまう。
私のスキルはカス? 中身のない? 外れ?
私は負け犬?
受付嬢は私に同情するような視線を向けてくる。
「このスキルで冒険者になるのは正直……」
「…………ッ!」
これから私はどうすればいいんだ?
そんな考えが私の脳裏を埋め尽くす。
しかし、ここで私が冒険者になることを諦めれば何かが私の中で終わる気がした。
だから私は元気な装いをする。
諦めなければ終わりはないのだ。
すると受付嬢は少し私から怯えるように距離をとり始める。
最初から二倍以上離されただろうか。
「そこまで睨まないでくださいよ。もちろん私にも案があります」
「そ、そうなの? ってか睨んではないわよ!」
落ち込んでいた私の笑気を取り戻すように受付嬢は言ってくれた。
本当にこの受付嬢は容量がいい。もし私が貴族であれば王族の権限で昇進させられるレベルぐらい助かっている。
そんな受付嬢はゆっくりと私の前に大きな地図を差し出した。
「では、エリス様。ここなんていかがでしょうか?」
そう言って受付嬢はこの国から離れた辺境を指さしたのだった。
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