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一人目 つよつよ幼馴染
レイ
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「じゃあ、エリス。強引に誘拐させてもらうよ」
「…………強引? 強引ってどういう――」
私が状況を理解しようとした時には遅かった。
レイは私の言葉を遮るように私を抱え込む。
そして、
パリンッ!
「…………んんんんんんんん!?」
「大きい声は出来るだけ止めてもらおうかな」
レイは私の口に手を置き、叫び声を止めさせる。
いや、叫ぶぐらいは許してほしい。
私たちは今空を飛んでいるのだから。
(………いやああああああぁぁぁぁぁ!?)
私とレイは私の部屋から窓を突き破って三階から一階へと飛び降りる。
私はレイに抱えられているため何ともないが、普通の人間がそんな五メートル以上もある高さから飛び降りて無事であるはずがない。
ということはレイは冒険者であるということだ。
「緊急事態だあああああぁぁぁぁ!」
一人の従者が異変に気付き、皆を起きさせるように大きな声を上げる。
するとすぐに眠っていたはずの従者たちが武装して、寮の庭へと集まってくる。
「空間の加護のもとに…………」
すると、レイは巨大な術式を展開し始める。
この魔法は学園に通っている私でも知っている代表的な魔法だ。
それでいて、行使できる者がいないと有名な魔法である。
「「「……………………ッ!!」」」
私を救うために集めってきてくれた従者たちもそのレイの行動を唖然として見ている。
この魔法がもし成功するのなら世紀の大発見だ。王宮魔導士をも超える魔術師の誕生である。
そんなことありえるはずがない。あり得ていいはずがないのに…………
「【テレポート】!」
その瞬間、世界は漆黒に包まれた。
「…………ん、ここは?」
私が視界を開けたときにはどこまでも続きそうな花畑が広がっていた。
私はここを知っている。知らないはずもない。
「僕とこうしてここで合うのは十年ぶりぐらいかな?」
「ええ…………そうね」
ここは貴族街と平民街の境界線近くにある無法地帯だ。
誰が管理しているのか、誰の所有地か誰も知らない。
だが、確かに言えることは十年前から光景は変わっていないということだ。
「覚えてる? ここでいつも遊んだこと」
「覚えてないわけがないわ」
私は色とりどりに咲き誇る花畑を見ながら口にした。
いつからだろう。この記憶を忘れていたのは。
いや、忘れていたのではない。自ら忘れようと封印していたのかもしれない。
悲しい現実から逃れるために。
「それじゃあ。あの時の誓いを覚えてる?」
「…………誓い?」
私はレイの問いに首をかしげる。
何となくは想像できる。だが、私の脳がそれを思い出そうとしない。
思い出したくても思い出せない。結局今も私はその過去に逃げ続けているということだ。
「…………じゃあ改めて言おうかな」
「…………え?」
レイは真剣な表情で私の方を見てくる。
その真剣な眼差しに私はたじろいでしまう。
そんな私を気にすることなく、レイは話を続ける。
「僕は昔から想っていた。今でも想っている。だから…………」
「……………………」
このような展開はここ最近味わったことがある。
私はゴクリと唾をのんだ。
レイは貴族のような礼法で頭を下げ、手を差し出してきた。
「…………僕と付き合ってくれないだろうか」
ぶわっと私とキールの間に花の匂い交じりの風が流れ、私の鼻孔を刺激する。
その瞬間、過去が回想されるように私の中に封印されていた記憶が流れ込んできたのだった。
「…………強引? 強引ってどういう――」
私が状況を理解しようとした時には遅かった。
レイは私の言葉を遮るように私を抱え込む。
そして、
パリンッ!
「…………んんんんんんんん!?」
「大きい声は出来るだけ止めてもらおうかな」
レイは私の口に手を置き、叫び声を止めさせる。
いや、叫ぶぐらいは許してほしい。
私たちは今空を飛んでいるのだから。
(………いやああああああぁぁぁぁぁ!?)
私とレイは私の部屋から窓を突き破って三階から一階へと飛び降りる。
私はレイに抱えられているため何ともないが、普通の人間がそんな五メートル以上もある高さから飛び降りて無事であるはずがない。
ということはレイは冒険者であるということだ。
「緊急事態だあああああぁぁぁぁ!」
一人の従者が異変に気付き、皆を起きさせるように大きな声を上げる。
するとすぐに眠っていたはずの従者たちが武装して、寮の庭へと集まってくる。
「空間の加護のもとに…………」
すると、レイは巨大な術式を展開し始める。
この魔法は学園に通っている私でも知っている代表的な魔法だ。
それでいて、行使できる者がいないと有名な魔法である。
「「「……………………ッ!!」」」
私を救うために集めってきてくれた従者たちもそのレイの行動を唖然として見ている。
この魔法がもし成功するのなら世紀の大発見だ。王宮魔導士をも超える魔術師の誕生である。
そんなことありえるはずがない。あり得ていいはずがないのに…………
「【テレポート】!」
その瞬間、世界は漆黒に包まれた。
「…………ん、ここは?」
私が視界を開けたときにはどこまでも続きそうな花畑が広がっていた。
私はここを知っている。知らないはずもない。
「僕とこうしてここで合うのは十年ぶりぐらいかな?」
「ええ…………そうね」
ここは貴族街と平民街の境界線近くにある無法地帯だ。
誰が管理しているのか、誰の所有地か誰も知らない。
だが、確かに言えることは十年前から光景は変わっていないということだ。
「覚えてる? ここでいつも遊んだこと」
「覚えてないわけがないわ」
私は色とりどりに咲き誇る花畑を見ながら口にした。
いつからだろう。この記憶を忘れていたのは。
いや、忘れていたのではない。自ら忘れようと封印していたのかもしれない。
悲しい現実から逃れるために。
「それじゃあ。あの時の誓いを覚えてる?」
「…………誓い?」
私はレイの問いに首をかしげる。
何となくは想像できる。だが、私の脳がそれを思い出そうとしない。
思い出したくても思い出せない。結局今も私はその過去に逃げ続けているということだ。
「…………じゃあ改めて言おうかな」
「…………え?」
レイは真剣な表情で私の方を見てくる。
その真剣な眼差しに私はたじろいでしまう。
そんな私を気にすることなく、レイは話を続ける。
「僕は昔から想っていた。今でも想っている。だから…………」
「……………………」
このような展開はここ最近味わったことがある。
私はゴクリと唾をのんだ。
レイは貴族のような礼法で頭を下げ、手を差し出してきた。
「…………僕と付き合ってくれないだろうか」
ぶわっと私とキールの間に花の匂い交じりの風が流れ、私の鼻孔を刺激する。
その瞬間、過去が回想されるように私の中に封印されていた記憶が流れ込んできたのだった。
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