32 / 58
一人目 つよつよ幼馴染
ライバル
しおりを挟む
「じゃあキール。そこに座ってくれるかい?」
「…………分かりました」
「ああ。敬語はいらないよ。今は『ライバル』として話をしよう」
そんな歪な笑みを浮かべたマルクにキールは息をのむ。
まさか公爵令嬢の従者である自分が王族などと話をするとは思ってもいなかった。これが今のキールの一番の感想だ。
そして次に出てくる感想が…………
「じゃあ君の行動理由について弁明を聞こうかな?」
今までの自分の行動がバレていることについてだ。
「何の話かよく分からないんですけど?」
「そうか…………ちなみにエリスを振った令息からが言質がとれているよ?」
「…………さすがは王族。手段がえげつないですね」
「そう? 君の方こそえげつないと思うけどな」
キールとマルクはアハハと苦笑いをしながら顔を見合わせる。
そこには侯爵と王族と言う立場の差ない。
一人の少女を奪い合うライバルとしての対場であった。
「…………念のために聞くけど、マルク様はもちろん王族の方と結婚するよね?」
話を逸らすためと、牽制程度にキールはマルクに聞く。
大体キールもマルクの考え、行動理由は見抜けている。
しかし、それではつじつまが合わない。
王族が王族以外の人間と結婚したなどという事例は今まで一度もない。
そのためキールは警戒していなかった。この第一王子という人間を。
「いやぁ? 別に俺は王族以外でも構わないさ。例えば…………公爵家の者とかね?」
「…………」
「そんな睨まないでくれよ。今までの君の手段が俺に効かないからってさ」
マルクはキールの苛立ちを感じ取り、すかした表情で返した。
昨日、マルクはキールのことについてベスに調べさせていた。
あのエリスが、自分が惚れたエリスが十回以上も他の男にフラれるとは考えられなかったためだ。
そして、案の定マルクの考えは当たっていた。
「キール。君は令息たちを脅しているだろう?」
「…………はぁ。その通りです」
マルクなら全て裏付けられた証拠のもとに発言している。
(………今更誤魔化したって自分の立場をさらに悪化させるだけだ)
キールはそう考え素直に答えた。
実際、キールは今まで権力や財産でエリスが付き合っていた令息を黙らしてきた。断るような仕向けていた。
マルクはキールが正直に答えると思っていなかったのか一瞬目を見開く。
しかし、すぐに満足げな表情をした。
キールはその優越感に浸っているような表情を見て舌打ちをする。
「…………ちっ。何ですか? 今度はマルク様が僕を脅すんですか?」
「いやいや、そんなことはしないよ」
マルクはとぼけたような表情をする。
そして、今度は歪な笑みを浮かべて宣言をする。
「今まで汚い手を使ってきた君には俺を倒せない…………俺は正々堂々君に勝つよ」
――宣戦布告
キールがマルクの言葉を耳に入れた時に一番に浮かんだ言葉はそれだった。
キールは今まで爵位で脅したり、何かばらされたくないことを探して脅迫したりなどエリスと付き合っていた令息たちを全て引きずり落としてきた。
それは全て自分の願望をかなえるため。
エリスと言う幼馴染と結ばれるため。
正直、従者である自分と主であるエリスとでは結ばれることは難しい。
だが、エリスが誰とも結ばれなかった場合は別だ。
その場合、従者である自分とエリスの婚約を認める。これがキールとエリスの父であるカイロスとの契約である。
「…………はい。その宣戦布告、謹んでお受けしましょう」
キールは貴族らしく正しい礼法で頭を下げた。
キールはあの幼き誓いをどんな手を使ってでも果たす。
それがキールの生存意義であり、エリスの隣にいる理由である。
「もちろん。どんな手を使ってでもあなたを引きずり落としますけどね」
そして頭を上げたキールは今度は歪な笑みを浮かべてライバルとして答えた。
こうして二人は一人の少女を狙うライバルとして認識し合う。
一人の平民に抜け駆けをされているとも知らずに。
「…………分かりました」
「ああ。敬語はいらないよ。今は『ライバル』として話をしよう」
そんな歪な笑みを浮かべたマルクにキールは息をのむ。
まさか公爵令嬢の従者である自分が王族などと話をするとは思ってもいなかった。これが今のキールの一番の感想だ。
そして次に出てくる感想が…………
「じゃあ君の行動理由について弁明を聞こうかな?」
今までの自分の行動がバレていることについてだ。
「何の話かよく分からないんですけど?」
「そうか…………ちなみにエリスを振った令息からが言質がとれているよ?」
「…………さすがは王族。手段がえげつないですね」
「そう? 君の方こそえげつないと思うけどな」
キールとマルクはアハハと苦笑いをしながら顔を見合わせる。
そこには侯爵と王族と言う立場の差ない。
一人の少女を奪い合うライバルとしての対場であった。
「…………念のために聞くけど、マルク様はもちろん王族の方と結婚するよね?」
話を逸らすためと、牽制程度にキールはマルクに聞く。
大体キールもマルクの考え、行動理由は見抜けている。
しかし、それではつじつまが合わない。
王族が王族以外の人間と結婚したなどという事例は今まで一度もない。
そのためキールは警戒していなかった。この第一王子という人間を。
「いやぁ? 別に俺は王族以外でも構わないさ。例えば…………公爵家の者とかね?」
「…………」
「そんな睨まないでくれよ。今までの君の手段が俺に効かないからってさ」
マルクはキールの苛立ちを感じ取り、すかした表情で返した。
昨日、マルクはキールのことについてベスに調べさせていた。
あのエリスが、自分が惚れたエリスが十回以上も他の男にフラれるとは考えられなかったためだ。
そして、案の定マルクの考えは当たっていた。
「キール。君は令息たちを脅しているだろう?」
「…………はぁ。その通りです」
マルクなら全て裏付けられた証拠のもとに発言している。
(………今更誤魔化したって自分の立場をさらに悪化させるだけだ)
キールはそう考え素直に答えた。
実際、キールは今まで権力や財産でエリスが付き合っていた令息を黙らしてきた。断るような仕向けていた。
マルクはキールが正直に答えると思っていなかったのか一瞬目を見開く。
しかし、すぐに満足げな表情をした。
キールはその優越感に浸っているような表情を見て舌打ちをする。
「…………ちっ。何ですか? 今度はマルク様が僕を脅すんですか?」
「いやいや、そんなことはしないよ」
マルクはとぼけたような表情をする。
そして、今度は歪な笑みを浮かべて宣言をする。
「今まで汚い手を使ってきた君には俺を倒せない…………俺は正々堂々君に勝つよ」
――宣戦布告
キールがマルクの言葉を耳に入れた時に一番に浮かんだ言葉はそれだった。
キールは今まで爵位で脅したり、何かばらされたくないことを探して脅迫したりなどエリスと付き合っていた令息たちを全て引きずり落としてきた。
それは全て自分の願望をかなえるため。
エリスと言う幼馴染と結ばれるため。
正直、従者である自分と主であるエリスとでは結ばれることは難しい。
だが、エリスが誰とも結ばれなかった場合は別だ。
その場合、従者である自分とエリスの婚約を認める。これがキールとエリスの父であるカイロスとの契約である。
「…………はい。その宣戦布告、謹んでお受けしましょう」
キールは貴族らしく正しい礼法で頭を下げた。
キールはあの幼き誓いをどんな手を使ってでも果たす。
それがキールの生存意義であり、エリスの隣にいる理由である。
「もちろん。どんな手を使ってでもあなたを引きずり落としますけどね」
そして頭を上げたキールは今度は歪な笑みを浮かべてライバルとして答えた。
こうして二人は一人の少女を狙うライバルとして認識し合う。
一人の平民に抜け駆けをされているとも知らずに。
0
お気に入りに追加
1,548
あなたにおすすめの小説
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!
つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。
冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。
全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。
巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。
【完結】夫は王太子妃の愛人
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵家長女であるローゼミリアは、侯爵家を継ぐはずだったのに、女ったらしの幼馴染みの公爵から求婚され、急遽結婚することになった。
しかし、持参金不要、式まで1ヶ月。
これは愛人多数?など訳ありの結婚に違いないと悟る。
案の定、初夜すら屋敷に戻らず、
3ヶ月以上も放置されーー。
そんな時に、驚きの手紙が届いた。
ーー公爵は、王太子妃と毎日ベッドを共にしている、と。
ローゼは、王宮に乗り込むのだがそこで驚きの光景を目撃してしまいーー。
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
妹に陥れられ処刑決定したのでブチギレることにします
リオール
恋愛
実の妹を殺そうとした罪で、私は処刑されることとなった。
違うと言っても、事実無根だとどれだけ訴えても。
真実を調べることもなく、私の処刑は決定となったのだ。
──あ、そう?じゃあもう我慢しなくていいですね。
大人しくしてたら随分なめられた事態になってしまったようで。
いいでしょう、それではご期待通りに悪女となってみせますよ!
淑女の時間は終わりました。
これからは──ブチギレタイムと致します!!
======
筆者定番の勢いだけで書いた小説。
主人公は大人しく、悲劇のヒロイン…ではありません。
処刑されたら時間が戻ってやり直し…なんて手間もかけません。とっととやっちゃいます。
矛盾点とか指摘したら負けです(?)
何でもオッケーな心の広い方向けです。
元聖女だった少女は我が道を往く
春の小径
ファンタジー
突然入ってきた王子や取り巻きたちに聖室を荒らされた。
彼らは先代聖女様の棺を蹴り倒し、聖石まで蹴り倒した。
「聖女は必要がない」と言われた新たな聖女になるはずだったわたし。
その言葉は取り返しのつかない事態を招く。
でも、もうわたしには関係ない。
だって神に見捨てられたこの世界に聖女は二度と現れない。
わたしが聖女となることもない。
─── それは誓約だったから
☆これは聖女物ではありません
☆他社でも公開はじめました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる