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1章 少年編
19話 勃発
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フィルとリリアが初めての特別訓練を行った、翌日。
「いたた……」
「どうしたのリリア? 昨日の訓練で痛めた?」
「筋肉痛かな? 昨日色々あってね」
僕たちはいつも通り、魔術学院への通学路を歩いていた。
昨夜は僕たちも初めての特別訓練で疲れていたため各自、早々に自室に戻った。
僕に関しては一日で元気は戻ったのだが、リリアの表情にはどこか疲労が溜まっているようにも見える。
僕は魔術が主な訓練であるため、魔力や精神力が戻ればすぐに気力も回復する。
しかし、剣士のリリアは体を動かす訓練が多い。慣れるまでには時間がかかるはずだ。
「大丈夫? 僕が訓練してるからって無理にリリアもしなくてもいいんだよ?」
「いや、そういうんじゃないの。ただ何というか驚いて疲れた……的な?」
自分の状況に実感を得られていない、と言ったところか。
僕も未だに王城暮らしをしているのはもちろんのこと、こうしてリリアと話をしているのも実感がわかないため、彼女の言いたいことは十分に理解できた。
けれど、すぐにリリアは普段の陽気な笑顔に戻った。
握りこぶしを二つ作って意気揚々と告げる。
「まぁ大丈夫! フィル君は絶対に私が守ってみせるから!」
いや、それは僕の仕事なんですけど……
確実に王女に言わせる言葉ではないな、と思いつつもその思いはありがたく受け取っておく。
当然、術者であるテイマーを守るのは獣の役目。
しかし対象が人間となれば別だ。
僕はそんな主従関係ではなく、対等な関係でいたいと思っている。
だからこそ僕がリリアに後れを取るわけにはいかないのだ。
「でも僕だって負けないから!」
「それはどうかな~? 私、多分、急激に強くなっちゃうよ~?」
リリアは自信ありげに笑いながら、僕を人差し指でつついてくる。
国王から聞いた話では、アリスの父である剣豪に剣術教わっているとか。
僕を指導してくれているノアと兄のリンクが劣っているわけではないが、相手は最高水準の指導者だ。
ボーっとしているとすぐにリリアに突き放されてしまうだろう。
そうなれば護衛としての面目が丸つぶれだ。それに僕の男としてのプライドが許せない。
「ってもうこんな時間! フィル君、早く行くよ!」
「あ、うん! って一人で走れるから!」
僕は先を走るリリアに腕を引っ張られながら魔術学院へと向かった。
それから十分ほどで魔術学院には着いた。
と言っても、最初の一限目が始まるまで残り五分。
明日はもう少し早めに王城を出た方がいいかもしれない。
最初は嫌悪感を抱いていたXクラスという肩書も、今では一切の悪感情を含まずに受け入れられる。
これからアリスとレイラの二人の先輩と一緒に授業が受けられるのが楽しみだ。
強いて言うならベータとも仲良くなってみたいが。
「「おはようございます!」」
僕たちは元気よく挨拶をしてXクラスの教室に入る。
だが、その挨拶が返されることはなかった。
「あ、フィル! リリア! やっと来たわね!」
「遅かったの!」
「二人ともどうしたんですか? そんな慌てた様子で」
教室に入ると血相を変えた先輩二人が出迎えてくれた。
まだシルヴァ先生は来ていないようだ。
「どうしたんですかじゃないわよ! 緊急事態なのよ!」
息を荒げながら話すアリス。
そんな彼女の様子を見れば演技ではなく本当に一刻を争う状況なのだと理解出来た。
するとレイラは目じりに涙をためながら、小さな声を大きくして叫ぶ。
「べ、ベータがBクラスの生徒にボコボコにされてるの!」
「「え?」」
「いたた……」
「どうしたのリリア? 昨日の訓練で痛めた?」
「筋肉痛かな? 昨日色々あってね」
僕たちはいつも通り、魔術学院への通学路を歩いていた。
昨夜は僕たちも初めての特別訓練で疲れていたため各自、早々に自室に戻った。
僕に関しては一日で元気は戻ったのだが、リリアの表情にはどこか疲労が溜まっているようにも見える。
僕は魔術が主な訓練であるため、魔力や精神力が戻ればすぐに気力も回復する。
しかし、剣士のリリアは体を動かす訓練が多い。慣れるまでには時間がかかるはずだ。
「大丈夫? 僕が訓練してるからって無理にリリアもしなくてもいいんだよ?」
「いや、そういうんじゃないの。ただ何というか驚いて疲れた……的な?」
自分の状況に実感を得られていない、と言ったところか。
僕も未だに王城暮らしをしているのはもちろんのこと、こうしてリリアと話をしているのも実感がわかないため、彼女の言いたいことは十分に理解できた。
けれど、すぐにリリアは普段の陽気な笑顔に戻った。
握りこぶしを二つ作って意気揚々と告げる。
「まぁ大丈夫! フィル君は絶対に私が守ってみせるから!」
いや、それは僕の仕事なんですけど……
確実に王女に言わせる言葉ではないな、と思いつつもその思いはありがたく受け取っておく。
当然、術者であるテイマーを守るのは獣の役目。
しかし対象が人間となれば別だ。
僕はそんな主従関係ではなく、対等な関係でいたいと思っている。
だからこそ僕がリリアに後れを取るわけにはいかないのだ。
「でも僕だって負けないから!」
「それはどうかな~? 私、多分、急激に強くなっちゃうよ~?」
リリアは自信ありげに笑いながら、僕を人差し指でつついてくる。
国王から聞いた話では、アリスの父である剣豪に剣術教わっているとか。
僕を指導してくれているノアと兄のリンクが劣っているわけではないが、相手は最高水準の指導者だ。
ボーっとしているとすぐにリリアに突き放されてしまうだろう。
そうなれば護衛としての面目が丸つぶれだ。それに僕の男としてのプライドが許せない。
「ってもうこんな時間! フィル君、早く行くよ!」
「あ、うん! って一人で走れるから!」
僕は先を走るリリアに腕を引っ張られながら魔術学院へと向かった。
それから十分ほどで魔術学院には着いた。
と言っても、最初の一限目が始まるまで残り五分。
明日はもう少し早めに王城を出た方がいいかもしれない。
最初は嫌悪感を抱いていたXクラスという肩書も、今では一切の悪感情を含まずに受け入れられる。
これからアリスとレイラの二人の先輩と一緒に授業が受けられるのが楽しみだ。
強いて言うならベータとも仲良くなってみたいが。
「「おはようございます!」」
僕たちは元気よく挨拶をしてXクラスの教室に入る。
だが、その挨拶が返されることはなかった。
「あ、フィル! リリア! やっと来たわね!」
「遅かったの!」
「二人ともどうしたんですか? そんな慌てた様子で」
教室に入ると血相を変えた先輩二人が出迎えてくれた。
まだシルヴァ先生は来ていないようだ。
「どうしたんですかじゃないわよ! 緊急事態なのよ!」
息を荒げながら話すアリス。
そんな彼女の様子を見れば演技ではなく本当に一刻を争う状況なのだと理解出来た。
するとレイラは目じりに涙をためながら、小さな声を大きくして叫ぶ。
「べ、ベータがBクラスの生徒にボコボコにされてるの!」
「「え?」」
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