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1章 少年編
9話 登校
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「フィル君、制服似合ってるね~!」
「リリアこそ。まさかこうやって一緒に登校するなんてね」
僕とリリアは談笑をしながら国立魔術学院への登校道を進む。
僕が王城に住むことになってから一日が経った。
当然まだまだ王城生活にはなれない。
メイドはいるし、執事はいるし。今朝だって起きたら既に着替えが用意されおり、とても美味しそうな朝食が準備されていた。
そんな来賓のような扱いを受けている僕だが、僕の肩書はリリア専門の護衛となっている。
そのため定期的に王宮魔術師のもとで特別訓練を受けることになった。
無償で王城で住まわせてもらうのは心苦しいため僕としてもありがたい。
それに僕はテイマーとしても魔術師としても三流。高レベルの指導を受けれるのは一石二鳥だ。
そんな王女の護衛をすることになった僕だが、国王や王妃のご厚意で僕も王族同然の扱いを受けている。
とりあえず残りの学生生活、二年半ははリリアたちと一緒に暮らすことになるらしい。
僕も最初は申し訳ないので、普通に一般の護衛として扱ってほしいと言ったのだが、国王たちもそれに関しては断固として譲ってくれなかった。
「リリアは転校生扱いになるらしいけど、どこのクラスになるの?」
もう季節は秋になろうとしている。
この時期から学院に入学となると転校生という設定にするしかない。
半年待てば二年生から編入ということも出来るのだが、リリアが今すぐに学院に通いたいと言ったようだ。
魔術学院に入学するために、本来は高難易度の入試があるのだが、当然リリアの場合は省略。
かくいう自分も元はニルヴァーナ家の人間ということで入試は受けていない。
貴族出身の人間は入試を受けないことが多いのだ。
話が逸れたので戻そう。
リリアは入試を受けていないため、学院側はどれほど彼女の実力があるのか理解していない。
そのため彼女がどのクラスに配属されるのか全く予想がつかなかった。
「えっとね……確かXクラスだ合ったはずだよ」
「え!? リリアがXクラス!?」
僕はつい足を止めて唖然としてしまう。
たとえ僕が彼女をテイムしていなくとも、一年で2レベルならCかBクラスには所属できるだろう。
そんな彼女があの底辺のXクラスに所属になるとは信じ難かった。
「フィル君と同じクラスって言ったからね! これで学院でも一緒にいれるよ!」
「いや、でももっと上のクラスでいろいろ学んだ方がリリアにとっても……」
Xクラスは問題児が集められたクラスと言われている。
そんなクラスに所属すれば、リリアに悪影響を及ぼす可能性だってある。
よくもまぁ国王が許したものだ。確実に王女が通うような教室ではない。
なのに、リリアは頬を膨らませて、
「フィル君がいれば私はどこのクラスだって良いの! というか私の護衛なのに学院の間、ずっと私を一人にするつもり?」
「そ、それは……」
リリアは小悪魔的な笑みを浮かべて言った。
思わず僕はたじろいでしまう。
確かに護衛なら出来るだけリリアと行動を共にしなければならない。他クラスであれば不都合が大きくなる。
そう言われてしまえば僕も頑なに否定するわけにはいかないだろう。
「それに平民の私が急にAクラスになって入ったら怪しまれるからね!」
リリアについてなのだが、国立魔術学院には一般市民のリリア、として入学することになった。
王女様が学院に入学するなんてことが公に知られれば大騒ぎになること間違いない。リリアはまともな学院生活を送れなくなくなるだろう。
それはリリアの社会見学の趣旨に反する。
そのため彼女が王女だと知っているのは僕と学院の学長と理事長の三人だけだ。
え、顔を見られたら分かるんじゃないかって?
リリアは生まれてこの方、十五年以上、王城から出たことがない。
そのため王女の顔を知っている者は少なく、知っていたとしても本物の王女が学院に通っているとは誰も思うまい。
「まぁXクラスって言ってもそんなに悪い人ばっかりじゃないはず。そんなに固くならずに楽しもうよ!」
僕を安心させるように気楽に笑うリリア。
初めての登校なのにもかかわらず、一切緊張している様子を見せない。
そもそも彼女は魔術学院に行くことすら初めてなのだ。なのに僕の方が気を遣われていてどうする。
「ほら、フィル君、早く行こ!」
僕の手を引っ張るリリアに応えるよう僕は微笑みを漏らす。
そして気分一転、僕たちは駆け足で魔術学位へと向かった。
と言うのが、三十分ほど前のやり取りである。
◆
「あぁん? 誰だてめぇら」
「見ない顔ねぇ。転校生なのかしら?」
「ん、誰なの。知らない人なの」
Xクラスの教室の扉を開けると、すぐにそんな声が飛んでくる。
視界に入るのは、赤髪の青年と薄青髪の女性、そして橙色の髪を持つ小柄な少女。
どこをどう見ても明らかに歓迎されていないのは分かる。
特に赤髪の青年に関しては最初から敵意がむき出しだ。
彼は僕とリリアを睨みつけるように視線を送りながら口にする。
「出ていけ。ここはお前らみたいなガキが来る場所じゃねぇんだよ」
「リリアこそ。まさかこうやって一緒に登校するなんてね」
僕とリリアは談笑をしながら国立魔術学院への登校道を進む。
僕が王城に住むことになってから一日が経った。
当然まだまだ王城生活にはなれない。
メイドはいるし、執事はいるし。今朝だって起きたら既に着替えが用意されおり、とても美味しそうな朝食が準備されていた。
そんな来賓のような扱いを受けている僕だが、僕の肩書はリリア専門の護衛となっている。
そのため定期的に王宮魔術師のもとで特別訓練を受けることになった。
無償で王城で住まわせてもらうのは心苦しいため僕としてもありがたい。
それに僕はテイマーとしても魔術師としても三流。高レベルの指導を受けれるのは一石二鳥だ。
そんな王女の護衛をすることになった僕だが、国王や王妃のご厚意で僕も王族同然の扱いを受けている。
とりあえず残りの学生生活、二年半ははリリアたちと一緒に暮らすことになるらしい。
僕も最初は申し訳ないので、普通に一般の護衛として扱ってほしいと言ったのだが、国王たちもそれに関しては断固として譲ってくれなかった。
「リリアは転校生扱いになるらしいけど、どこのクラスになるの?」
もう季節は秋になろうとしている。
この時期から学院に入学となると転校生という設定にするしかない。
半年待てば二年生から編入ということも出来るのだが、リリアが今すぐに学院に通いたいと言ったようだ。
魔術学院に入学するために、本来は高難易度の入試があるのだが、当然リリアの場合は省略。
かくいう自分も元はニルヴァーナ家の人間ということで入試は受けていない。
貴族出身の人間は入試を受けないことが多いのだ。
話が逸れたので戻そう。
リリアは入試を受けていないため、学院側はどれほど彼女の実力があるのか理解していない。
そのため彼女がどのクラスに配属されるのか全く予想がつかなかった。
「えっとね……確かXクラスだ合ったはずだよ」
「え!? リリアがXクラス!?」
僕はつい足を止めて唖然としてしまう。
たとえ僕が彼女をテイムしていなくとも、一年で2レベルならCかBクラスには所属できるだろう。
そんな彼女があの底辺のXクラスに所属になるとは信じ難かった。
「フィル君と同じクラスって言ったからね! これで学院でも一緒にいれるよ!」
「いや、でももっと上のクラスでいろいろ学んだ方がリリアにとっても……」
Xクラスは問題児が集められたクラスと言われている。
そんなクラスに所属すれば、リリアに悪影響を及ぼす可能性だってある。
よくもまぁ国王が許したものだ。確実に王女が通うような教室ではない。
なのに、リリアは頬を膨らませて、
「フィル君がいれば私はどこのクラスだって良いの! というか私の護衛なのに学院の間、ずっと私を一人にするつもり?」
「そ、それは……」
リリアは小悪魔的な笑みを浮かべて言った。
思わず僕はたじろいでしまう。
確かに護衛なら出来るだけリリアと行動を共にしなければならない。他クラスであれば不都合が大きくなる。
そう言われてしまえば僕も頑なに否定するわけにはいかないだろう。
「それに平民の私が急にAクラスになって入ったら怪しまれるからね!」
リリアについてなのだが、国立魔術学院には一般市民のリリア、として入学することになった。
王女様が学院に入学するなんてことが公に知られれば大騒ぎになること間違いない。リリアはまともな学院生活を送れなくなくなるだろう。
それはリリアの社会見学の趣旨に反する。
そのため彼女が王女だと知っているのは僕と学院の学長と理事長の三人だけだ。
え、顔を見られたら分かるんじゃないかって?
リリアは生まれてこの方、十五年以上、王城から出たことがない。
そのため王女の顔を知っている者は少なく、知っていたとしても本物の王女が学院に通っているとは誰も思うまい。
「まぁXクラスって言ってもそんなに悪い人ばっかりじゃないはず。そんなに固くならずに楽しもうよ!」
僕を安心させるように気楽に笑うリリア。
初めての登校なのにもかかわらず、一切緊張している様子を見せない。
そもそも彼女は魔術学院に行くことすら初めてなのだ。なのに僕の方が気を遣われていてどうする。
「ほら、フィル君、早く行こ!」
僕の手を引っ張るリリアに応えるよう僕は微笑みを漏らす。
そして気分一転、僕たちは駆け足で魔術学位へと向かった。
と言うのが、三十分ほど前のやり取りである。
◆
「あぁん? 誰だてめぇら」
「見ない顔ねぇ。転校生なのかしら?」
「ん、誰なの。知らない人なの」
Xクラスの教室の扉を開けると、すぐにそんな声が飛んでくる。
視界に入るのは、赤髪の青年と薄青髪の女性、そして橙色の髪を持つ小柄な少女。
どこをどう見ても明らかに歓迎されていないのは分かる。
特に赤髪の青年に関しては最初から敵意がむき出しだ。
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