上 下
9 / 20
1章 少年編

9話 登校

しおりを挟む
「フィル君、制服似合ってるね~!」
「リリアこそ。まさかこうやって一緒に登校するなんてね」

 僕とリリアは談笑をしながら国立魔術学院への登校道を進む。
 
 僕が王城に住むことになってから一日が経った。
 当然まだまだ王城生活にはなれない。
 メイドはいるし、執事はいるし。今朝だって起きたら既に着替えが用意されおり、とても美味しそうな朝食が準備されていた。
 そんな来賓のような扱いを受けている僕だが、僕の肩書はリリア専門の護衛となっている。
 そのため定期的に王宮魔術師のもとで特別訓練を受けることになった。
 無償で王城で住まわせてもらうのは心苦しいため僕としてもありがたい。
 それに僕はテイマーとしても魔術師としても三流。高レベルの指導を受けれるのは一石二鳥だ。

 そんな王女の護衛をすることになった僕だが、国王や王妃のご厚意で僕も王族同然の扱いを受けている。
 とりあえず残りの学生生活、二年半ははリリアたちと一緒に暮らすことになるらしい。
 僕も最初は申し訳ないので、普通に一般の護衛として扱ってほしいと言ったのだが、国王たちもそれに関しては断固として譲ってくれなかった。

「リリアは転校生扱いになるらしいけど、どこのクラスになるの?」

 もう季節は秋になろうとしている。
 この時期から学院に入学となると転校生という設定にするしかない。
 半年待てば二年生から編入ということも出来るのだが、リリアが今すぐに学院に通いたいと言ったようだ。
 
 魔術学院に入学するために、本来は高難易度の入試があるのだが、当然リリアの場合は省略。
 かくいう自分も元はニルヴァーナ家の人間ということで入試は受けていない。
 貴族出身の人間は入試を受けないことが多いのだ。

 話が逸れたので戻そう。
 リリアは入試を受けていないため、学院側はどれほど彼女の実力があるのか理解していない。
 そのため彼女がどのクラスに配属されるのか全く予想がつかなかった。

「えっとね……確かXクラスだ合ったはずだよ」
「え!? リリアがXクラス!?」

 僕はつい足を止めて唖然としてしまう。
 たとえ僕が彼女をテイムしていなくとも、一年で2レベルならCかBクラスには所属できるだろう。
 そんな彼女があの底辺のXクラスに所属になるとは信じ難かった。

「フィル君と同じクラスって言ったからね! これで学院でも一緒にいれるよ!」
「いや、でももっと上のクラスでいろいろ学んだ方がリリアにとっても……」

 Xクラスは問題児が集められたクラスと言われている。
 そんなクラスに所属すれば、リリアに悪影響を及ぼす可能性だってある。
 よくもまぁ国王が許したものだ。確実に王女が通うような教室ではない。
 
 なのに、リリアは頬を膨らませて、
 
「フィル君がいれば私はどこのクラスだって良いの! というか私の護衛なのに学院の間、ずっと私を一人にするつもり?」
「そ、それは……」

 リリアは小悪魔的な笑みを浮かべて言った。
 思わず僕はたじろいでしまう。
 確かに護衛なら出来るだけリリアと行動を共にしなければならない。他クラスであれば不都合が大きくなる。
 そう言われてしまえば僕も頑なに否定するわけにはいかないだろう。

「それに平民の私が急にAクラスになって入ったら怪しまれるからね!」

 リリアについてなのだが、国立魔術学院には一般市民のリリア、として入学することになった。
 王女様が学院に入学するなんてことが公に知られれば大騒ぎになること間違いない。リリアはまともな学院生活を送れなくなくなるだろう。
 それはリリアの社会見学の趣旨に反する。
 そのため彼女が王女だと知っているのは僕と学院の学長と理事長の三人だけだ。

 え、顔を見られたら分かるんじゃないかって?

 リリアは生まれてこの方、十五年以上、王城から出たことがない。
 そのため王女の顔を知っている者は少なく、知っていたとしても本物の王女が学院に通っているとは誰も思うまい。

「まぁXクラスって言ってもそんなに悪い人ばっかりじゃないはず。そんなに固くならずに楽しもうよ!」

 僕を安心させるように気楽に笑うリリア。
 初めての登校なのにもかかわらず、一切緊張している様子を見せない。
 そもそも彼女は魔術学院に行くことすら初めてなのだ。なのに僕の方が気を遣われていてどうする。 

「ほら、フィル君、早く行こ!」
 
 僕の手を引っ張るリリアに応えるよう僕は微笑みを漏らす。
 そして気分一転、僕たちは駆け足で魔術学位へと向かった。

 と言うのが、三十分ほど前のやり取りである。

 ◆

「あぁん? 誰だてめぇら」
「見ない顔ねぇ。転校生なのかしら?」
「ん、誰なの。知らない人なの」

 Xクラスの教室の扉を開けると、すぐにそんな声が飛んでくる。
 視界に入るのは、赤髪の青年と薄青髪の女性、そして橙色の髪を持つ小柄な少女。
 どこをどう見ても明らかに歓迎されていないのは分かる。

 特に赤髪の青年に関しては最初から敵意がむき出しだ。
 彼は僕とリリアを睨みつけるように視線を送りながら口にする。

「出ていけ。ここはお前らみたいなガキが来る場所じゃねぇんだよ」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界もふもふ召喚士〜俺はポンコツらしいので白虎と幼狐、イケおじ達と共にスローライフがしたいです〜

大福金
ファンタジー
タトゥーアーティストの仕事をしている乱道(らんどう)二十五歳はある日、仕事終わりに突如異世界に召喚されてしまう。 乱道が召喚されし国【エスメラルダ帝国】は聖印に支配された国だった。 「はぁ? 俺が救世主? この模様が聖印だって? イヤイヤイヤイヤ!? これ全てタトゥーですけど!?」 「「「「「えーーーーっ!?」」」」」 タトゥー(偽物)だと分かると、手のひらを返した様に乱道を「役立たず」「ポンコツ」と馬鹿にする帝国の者達。 乱道と一緒に召喚された男は、三体もの召喚獣を召喚した。 皆がその男に夢中で、乱道のことなど偽物だとほったらかし、終いには帝国で最下級とされる下民の紋を入れられる。 最悪の状況の中、乱道を救ったのは右ふくらはぎに描かれた白虎の琥珀。 その容姿はまるで可愛いぬいぐるみ。 『らんどーちゃま、ワレに任せるでち』 二足歩行でテチテチ肉球を鳴らせて歩き、キュルンと瞳を輝かせあざとく乱道を見つめる琥珀。 その姿を見た乱道は…… 「オレの琥珀はこんな姿じゃねえ!」 っと絶叫するのだった。 そんな乱道が可愛いもふもふの琥珀や可愛い幼狐と共に伝説の大召喚師と言われるまでのお話。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

天才第二王子は引きこもりたい 【穀潰士】の無自覚無双

柊彼方
ファンタジー
「この穀潰しが!」 アストリア国の第二王子『ニート』は十年以上王城に引きこもっており、国民からは『穀潰しの第二王子』と呼ばれていた。 ニート自身その罵倒を受け入れていたのだ。さらには穀潰士などと言う空想上の職業に憧れを抱いていた。 だが、ある日突然、国王である父親によってニートは強制的に学園に通わされることになる。 しかし誰も知らなかった。ニートが実は『天才』であるということを。 今まで引きこもっていたことで隠されていたニートの化け物じみた実力が次々と明らかになる。 学院で起こされた波は徐々に広がりを見せ、それは国を覆うほどのものとなるのだった。 その後、ニートが学生ライフを送りながらいろいろな事件に巻き込まれるのだが…… 「家族を守る。それが俺の穀潰士としての使命だ」 これは、穀潰しの第二王子と蔑まれていたニートが、いつの日か『穀潰士の第二王子』と賞賛されるような、そんな物語。

パーティーを追放された装備製作者、実は世界最強 〜ソロになったので、自分で作った最強装備で無双する〜

Tamaki Yoshigae
ファンタジー
ロイルはSランク冒険者パーティーの一員で、付与術師としてメンバーの武器の調整を担当していた。 だがある日、彼は「お前の付与などなくても俺たちは最強だ」と言われ、パーティーをクビになる。 仕方なく彼は、辺境で人生を再スタートすることにした。 素人が扱っても規格外の威力が出る武器を作れる彼は、今まで戦闘経験ゼロながらも瞬く間に成り上がる。 一方、自分たちの実力を過信するあまりチートな付与術師を失ったパーティーは、かつての猛威を振るえなくなっていた。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

受験生でしたが転生したので異世界で念願の教師やります -B級教師はS級生徒に囲まれて努力の成果を見せつける-

haruhi8128
ファンタジー
受験を間近に控えた高3の正月。 過労により死んでしまった。 ところがある神様の手伝いがてら異世界に転生することに!? とある商人のもとに生まれ変わったライヤは受験生時代に培った勉強法と、粘り強さを武器に王国でも屈指の人物へと成長する。 前世からの夢であった教師となるという夢を叶えたライヤだったが、周りは貴族出身のエリートばかりで平民であるライヤは煙たがられる。 そんな中、学生時代に築いた唯一のつながり、王国第一王女アンに振り回される日々を送る。 貴族出身のエリートしかいないS級の教師に命じられ、その中に第3王女もいたのだが生徒には舐められるばかり。 平民で、特別な才能もないライヤに彼らの教師が務まるのか……!? 努力型主人公を書いて見たくて挑戦してみました! 前作の「戦力より戦略。」よりは文章も見やすく、内容も統一できているのかなと感じます。 是非今後の励みにしたいのでお気に入り登録や感想もお願いします! 話ごとのちょっとしたものでも構いませんので!

処理中です...