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3章 養い対決
28話 吸血族
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俺はエリーナと向かい合いうようにして座る。
「私たち、魔族に吸血族という種族がいるのはご存じですか?」
「もちろん」
魔族と言っても、全員が全く同じ種族というわけではない。
人族にもドワーフや、エルフなどの派生した種族がいるように、魔族にもいくつかの種族が存在する。
その中の一つが『吸血族』だ。
「何度か戦ったことがあるけど……何がしたいのかいまいち分からない相手だったな」
俺が出会ったことのある吸血族は皆、目の前で固まる。動揺しているという方が正しいだろうか。
彼らはまるで信じられないものを見ているかのような視線を向けてくるのだ。
そんな俺の言葉にエリ―ナは首を傾げた。
「え? 催眠系や誘惑系などの状態異常の魔法をかけられなかったんですか?」
「あぁ~そういうことか。俺、【状態異常無効】のスキルを持ってるから効かないんだ」
俺がそう説明すると、エリーナはどこか腑に落ちたように頷く。
「だから、睡眠薬も効かなかったんですね……」
「え、今なんて?」
ん? 今危ない言葉が聞こえた気がしたんだけど。
「もうバレちゃったので言いますが、お水の中に睡眠薬入れてました」
「だからあの時、驚いてたのか」
「はい、本当に申し訳ございません……」
エリーナは一度ぺこりと頭を下げる。
そして、少しムスッとした表情で言った。
「でも、エル様にも非はあるんですよ? 美味しそうな首を隠さずに大っぴらに見せて……襲ってほしいと言っているようなものです!」
「そ、それはごめん」
俺はエリーナの勢いに咄嗟に謝ってしまう。
まぁ彼女の言う通り、首を見せていた俺も悪いし……って待てよ、別に俺悪くなくね?
「エリーナが我慢出来なかっただけじゃないのか?」
「いえ、他の吸血族でも絶対に無理です。もし、エル様が吸血族の村に行ったら一瞬で女どもに囲まれて、干からびるまで吸われますよ?」
「何それ怖っ」
そんな光景を想像してしまった俺は身震いをしてしまう。
エリーナは豊かな胸をドンっと張って自信ありげに告げた。
「なので少量で我慢した私は我慢強いというわけです!」
何故それほどまで堂々として言えるのか俺には分からない。
「まぁ一応我慢強いか強くないかは置いといて、なんで急に襲ってきたんだよ。別に言ってくれたら許可したぞ?」
エリ―ナが正直に頼んできたとしても俺は吸血を許可しただろう。
それこそ睡眠薬や拘束魔法など、回りくどいことをせずとも。
そう不思議に思っていると、エリ―ナは急に頬を真っ赤に染めた。
「言い伝えがあるんですよ……吸血族に伝わる」
「言い伝え?」
「は、初めて吸血した相手と結ばれるという言い伝えです……!」
もじもじと悶えながら言う彼女を前に、俺はつい視線をそらしてしまう。
少しからずは俺に好意を持ってくれているのではないかと思っていた。
しかし、ただの好意が行動理由としてはいささか違和感が多い気がする。
何か別の意図があるような、行為とは別の感情があるような、そんな気が――
俺はわざとらしい咳をしながら話を逸らす。
「ごほっ、ごほっ……ってかそもそも養い対決なんてもの、なんでしようとしたんだ? エリ―ナならもっと賢い案を考えられそうだけど?」
それは単なる興味だった。
言葉以上に意味はなく、他意もない。
しかし、俺が言葉を放った瞬間、確かにこの場の空気が変わった。
真剣味が増したというべきか。それは先ほどまで笑みを浮かべていてたエリーナの表情から笑みが消えていることが何よりの証拠だ。
「絶対に魔王様とエル様が結婚してほしくないからです。もし、魔王様がどうしてもエル様と結婚しようとするなら……」
エリ―ナは俺の瞳をしっかりと捉え、真剣な面持ちで告げた。
「私は魔王様の敵になります」
それは冗談でも、戯言でもない。
彼女の本心からの言葉だった。
「私たち、魔族に吸血族という種族がいるのはご存じですか?」
「もちろん」
魔族と言っても、全員が全く同じ種族というわけではない。
人族にもドワーフや、エルフなどの派生した種族がいるように、魔族にもいくつかの種族が存在する。
その中の一つが『吸血族』だ。
「何度か戦ったことがあるけど……何がしたいのかいまいち分からない相手だったな」
俺が出会ったことのある吸血族は皆、目の前で固まる。動揺しているという方が正しいだろうか。
彼らはまるで信じられないものを見ているかのような視線を向けてくるのだ。
そんな俺の言葉にエリ―ナは首を傾げた。
「え? 催眠系や誘惑系などの状態異常の魔法をかけられなかったんですか?」
「あぁ~そういうことか。俺、【状態異常無効】のスキルを持ってるから効かないんだ」
俺がそう説明すると、エリーナはどこか腑に落ちたように頷く。
「だから、睡眠薬も効かなかったんですね……」
「え、今なんて?」
ん? 今危ない言葉が聞こえた気がしたんだけど。
「もうバレちゃったので言いますが、お水の中に睡眠薬入れてました」
「だからあの時、驚いてたのか」
「はい、本当に申し訳ございません……」
エリーナは一度ぺこりと頭を下げる。
そして、少しムスッとした表情で言った。
「でも、エル様にも非はあるんですよ? 美味しそうな首を隠さずに大っぴらに見せて……襲ってほしいと言っているようなものです!」
「そ、それはごめん」
俺はエリーナの勢いに咄嗟に謝ってしまう。
まぁ彼女の言う通り、首を見せていた俺も悪いし……って待てよ、別に俺悪くなくね?
「エリーナが我慢出来なかっただけじゃないのか?」
「いえ、他の吸血族でも絶対に無理です。もし、エル様が吸血族の村に行ったら一瞬で女どもに囲まれて、干からびるまで吸われますよ?」
「何それ怖っ」
そんな光景を想像してしまった俺は身震いをしてしまう。
エリーナは豊かな胸をドンっと張って自信ありげに告げた。
「なので少量で我慢した私は我慢強いというわけです!」
何故それほどまで堂々として言えるのか俺には分からない。
「まぁ一応我慢強いか強くないかは置いといて、なんで急に襲ってきたんだよ。別に言ってくれたら許可したぞ?」
エリ―ナが正直に頼んできたとしても俺は吸血を許可しただろう。
それこそ睡眠薬や拘束魔法など、回りくどいことをせずとも。
そう不思議に思っていると、エリ―ナは急に頬を真っ赤に染めた。
「言い伝えがあるんですよ……吸血族に伝わる」
「言い伝え?」
「は、初めて吸血した相手と結ばれるという言い伝えです……!」
もじもじと悶えながら言う彼女を前に、俺はつい視線をそらしてしまう。
少しからずは俺に好意を持ってくれているのではないかと思っていた。
しかし、ただの好意が行動理由としてはいささか違和感が多い気がする。
何か別の意図があるような、行為とは別の感情があるような、そんな気が――
俺はわざとらしい咳をしながら話を逸らす。
「ごほっ、ごほっ……ってかそもそも養い対決なんてもの、なんでしようとしたんだ? エリ―ナならもっと賢い案を考えられそうだけど?」
それは単なる興味だった。
言葉以上に意味はなく、他意もない。
しかし、俺が言葉を放った瞬間、確かにこの場の空気が変わった。
真剣味が増したというべきか。それは先ほどまで笑みを浮かべていてたエリーナの表情から笑みが消えていることが何よりの証拠だ。
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エリ―ナは俺の瞳をしっかりと捉え、真剣な面持ちで告げた。
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それは冗談でも、戯言でもない。
彼女の本心からの言葉だった。
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