魔王に養われる【ヒモ勇者】ですが何か？～仲間に裏切られたけど、魔王に拾われたので、全力で魔界ライフを満喫しようと思います～

間章１ 空虚

19話 ターニングポイント

　その翌日。ガイアとレーナは聖剣を回収するために、人間界と魔界の境界線へと足を進めていた。
　真っ赤な荒野を歩いている中、ガイアは溜まっていた愚痴を吐き捨てる。

「ちっ、ルーカスの奴、偉そうに命令しやがって」
「仕方ありませんよ。実際、最も実力があるのは賢者のルーカスなのですから」
「それはそうなんだけどよ……」
「結局、私たちはルーカスの【平等な天秤リブラント】に頼っちゃってますからね」

　ルーカスの最も強力なスキル【平等な天秤リブラント】は、賢者の力を平等に分配するというもの。
　そのスキルのおかげで皆が平等に、足手まといになることなく、まとまった力を発揮することが出来ていた。

「……本当にそうなのか？」

　ガイアは神妙な面持ちでぼそりと、自分だけに聞こえる声で呟く。
　それは自分自身に問いかけるように。決めつけていた世界を一から見直すように。
　戦闘職ではないレーナは気づいていないだろうが、勇者エルが死んで・・・からガイアには確かな違和感があった。
　まるで自分の中にあった何かがぽっかりと抜け落ちたような。喪失感とでも言えばいいだろうか。
　自分の中で炎々と燃えあがる炎が急に勢いを失った気がしていた。

　そんなガイアの異変を感じ取ったのか、レーナは小首をかしげる。

「ん？　どうかしましたか？」

　――まぁ今考えたところで答えは出ないだろう。それがガイアの出した結論だった。
　彼は脳裏に浮かんだ疑問を振り払って、先を見据える。

「いいや、それよりもう少しで着くぞ」

　そう、今思えばこの時に気が付くべきだった。
　そもそも何故、賢者が最も優れていると決めつけていたのか。何故、逆の可能性に気付かなかったのかと。
　されど、この時の二人は知る由もない。