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65話 震天動地
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「「「は、はああああああああぁぁぁぁぁ!?」」」
アレクたちの試合の一部始終を見ていた王族たちはその場に口を開けて固まってしまった。
誰もが予期せぬ光景に思考を放棄させてしまったのだ。
「な、なんで斬られても無傷なんだよ……」
「それに一斉砲火……あれ王宮魔術師が百人集まっても無理だぞ!?」
「あの魔法、上級魔法よね? な、なんでそんな魔法をアレクが使えるのよ!?」
王族になり損ねた不良品。それが彼らにとってのアレクの印象だった。
そして、それに相対する男が王族の中の王族、ミートである。
そんなミートがアレクに負けた。その衝撃はかなりのものだ。
「あ、アリア様、ミートは無事なのでしょうか?」
国王は心配そうに聞いてくる。
やはり、国王はまともだ、いや、しっかりとしているというべきか。
どれだけ異様な光景が広がり、驚きたい状況でも我が子を優先する。
そこらの腐った王族とは違う。
「無事ですよ?」
「あ、あんな魔法を食らったら流石に危ないのでは……?」
今もステージは煙に包まれており、よく様子は見えない。
あれほどの灼熱が百方向以上から食らったのだ。
まともに食らっていたら皮膚がどろっどろに溶けて死ぬだろう。
「大丈夫です。ほら、見えましたよ」
煙が拡散されていくと、会場の真ん中に一つの人影が見え始める。
その人影は全身裸のミートであった。
あまりの衝撃に、尻もちをついたまま気絶しているようだ。
「流石にあれは死にますからね。私が耐熱付与をかけておきました」
「だ、だから服だけが焼けているのか……って、耐熱付与!? まさか付与魔法を使えるんですか!?」
「え、えぇ。まぁ簡単な魔法ですけど。そこまで驚くことですかね?」
付与魔法が珍しいことは私も十分知っている。
だが、そこまで驚くことだろうか?
宮廷魔導士なら余裕で使えると思っていたのだが、まさか使えないなんてことは……流石にないよね?
「……もう一生従います。はい、国王の座いります?」
「なっ!? そ、そんなものいりませんよ! もっと陛下は威厳を出してください!」
国王は再びへり下りはじめた。
私の中の国王の印象が今日一日で百八十度変わってしまった気がする。
そんなことを思っていると背後から声をかけられた。
「あ、あのぉ、少しいいでしょうか?」
「ん? あ、さっきの……」
声をかけてきたのは先ほど私の胸ぐらを掴んだ男だ。
彼の後ろにはさらに先ほどの試合を見ていた王族たちもいる。
彼らは互いに顔を見合わせ、声を合わせるように言った。
「「「本当に申し訳ございませんでした!」」」
「……へ?」
不正だとかなんとかで怒られると思っていたのだが、どうやら違うようだ。
国王同様に、王族たちは謝罪の言葉を口々にする。
「まさか、あなた様がそこまでお偉い方だとは思わず……」
「ミート様を守っていただきありがとうございました」
「先ほどのご無礼、どうか許していただきたく……私に出来ることなら何でもしますので……」
えぇ……これって同じ人たちなのかな? 影武者じゃない?
そう思ってしまうほどの変わりようだ。手のひら返しとはこのことを言うのだろう。
「べ、別にいですよ……?」
なんと言葉を返せばいいか分からないため、私はそんな曖昧な言葉を返した。
すると真っ青だった彼らの表情から笑顔が漏れ始める。
「ありがとうございました! もう一生ついていきます!」
「あぁ、これが本当の強者なんだろうな……俺たちは何て誤りを……」
「俺たちも見習わないとな……ゼロから頑張っていこう」
アレクだけかと思っていたが、どうやら王属は皆情緒が不安定なようだ。
もう三十分前とは別人である。中には悟りを開きかけてる者もいるほどだ。
はぁ……アレクが頭を抱えるのも分かる気がするよ。
アレクたちの試合の一部始終を見ていた王族たちはその場に口を開けて固まってしまった。
誰もが予期せぬ光景に思考を放棄させてしまったのだ。
「な、なんで斬られても無傷なんだよ……」
「それに一斉砲火……あれ王宮魔術師が百人集まっても無理だぞ!?」
「あの魔法、上級魔法よね? な、なんでそんな魔法をアレクが使えるのよ!?」
王族になり損ねた不良品。それが彼らにとってのアレクの印象だった。
そして、それに相対する男が王族の中の王族、ミートである。
そんなミートがアレクに負けた。その衝撃はかなりのものだ。
「あ、アリア様、ミートは無事なのでしょうか?」
国王は心配そうに聞いてくる。
やはり、国王はまともだ、いや、しっかりとしているというべきか。
どれだけ異様な光景が広がり、驚きたい状況でも我が子を優先する。
そこらの腐った王族とは違う。
「無事ですよ?」
「あ、あんな魔法を食らったら流石に危ないのでは……?」
今もステージは煙に包まれており、よく様子は見えない。
あれほどの灼熱が百方向以上から食らったのだ。
まともに食らっていたら皮膚がどろっどろに溶けて死ぬだろう。
「大丈夫です。ほら、見えましたよ」
煙が拡散されていくと、会場の真ん中に一つの人影が見え始める。
その人影は全身裸のミートであった。
あまりの衝撃に、尻もちをついたまま気絶しているようだ。
「流石にあれは死にますからね。私が耐熱付与をかけておきました」
「だ、だから服だけが焼けているのか……って、耐熱付与!? まさか付与魔法を使えるんですか!?」
「え、えぇ。まぁ簡単な魔法ですけど。そこまで驚くことですかね?」
付与魔法が珍しいことは私も十分知っている。
だが、そこまで驚くことだろうか?
宮廷魔導士なら余裕で使えると思っていたのだが、まさか使えないなんてことは……流石にないよね?
「……もう一生従います。はい、国王の座いります?」
「なっ!? そ、そんなものいりませんよ! もっと陛下は威厳を出してください!」
国王は再びへり下りはじめた。
私の中の国王の印象が今日一日で百八十度変わってしまった気がする。
そんなことを思っていると背後から声をかけられた。
「あ、あのぉ、少しいいでしょうか?」
「ん? あ、さっきの……」
声をかけてきたのは先ほど私の胸ぐらを掴んだ男だ。
彼の後ろにはさらに先ほどの試合を見ていた王族たちもいる。
彼らは互いに顔を見合わせ、声を合わせるように言った。
「「「本当に申し訳ございませんでした!」」」
「……へ?」
不正だとかなんとかで怒られると思っていたのだが、どうやら違うようだ。
国王同様に、王族たちは謝罪の言葉を口々にする。
「まさか、あなた様がそこまでお偉い方だとは思わず……」
「ミート様を守っていただきありがとうございました」
「先ほどのご無礼、どうか許していただきたく……私に出来ることなら何でもしますので……」
えぇ……これって同じ人たちなのかな? 影武者じゃない?
そう思ってしまうほどの変わりようだ。手のひら返しとはこのことを言うのだろう。
「べ、別にいですよ……?」
なんと言葉を返せばいいか分からないため、私はそんな曖昧な言葉を返した。
すると真っ青だった彼らの表情から笑顔が漏れ始める。
「ありがとうございました! もう一生ついていきます!」
「あぁ、これが本当の強者なんだろうな……俺たちは何て誤りを……」
「俺たちも見習わないとな……ゼロから頑張っていこう」
アレクだけかと思っていたが、どうやら王属は皆情緒が不安定なようだ。
もう三十分前とは別人である。中には悟りを開きかけてる者もいるほどだ。
はぁ……アレクが頭を抱えるのも分かる気がするよ。
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