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39話 昇級試験
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アリアによる一週間の訓練は一瞬で過ぎ去る。
そしてすぐその結果を試すように昇級試験がやってきた。
「ここが昇級試験の会場っすか」
「なかなか人が少ないね。百人いないんじゃない?」
リッドとアレクの二人は昇級試験の会場へとたどり着いた。
試験では全ての階級の受験生が集まる。そう考えれば百人は少し少なめだろう。
「あ、アレクさん。あれってルーグさんじゃないっすか?」
「まじかよ。期待の新星って言われてるB級冒険者じゃないか。そんな奴らと一緒に試験を受けるんだな……」
二人は初めての試験に緊張をあらわにする。
原初の剣の名を広めるためにもこの機会を逃すわけにはいけない。二人には原初の剣の今後の方針がかかっているのだ。
「でも、俺たちもこの一週間死ぬほど頑張りましたし、何とかなるんじゃないっすか?」
「そうだね……でも三人と比べたら自信がなくならない?」
「あ~。それ分かるっす。アレンさんなんか湖を一太刀で割ってましたよ」
二人は苦い記憶に苦笑を漏らす。
常に目の前には格上の存在がいたため、二人は未だに自分たちが成長しているのか気づいていない。
この昇級試験でどれだけ成果が発揮できるのか。二人は心配でたまらないというわけである。
集合時間になると職員らしき男性が前のステージに立つ。
そして、拡声の魔法が付与されているものに口を近づける。
「あ、あ、あ、聞こえますね~。これから第二百五回。昇級試験を始めます~」
職員は手元の書類に視線を移し、そのままだらだらと読み続けていった。
「冒険者に必要なのは実力。圧倒的な実力が必要になります~。ということで今回の試験は臨時で戦闘試験のみとします」
「「「は、はあああああああぁぁぁぁぁ!?」」」
その職員の言葉に周りの受験生たちは目を見開いて驚く。
本来試験とは筆記試験と戦闘試験の二つに分かれている。
二つの総合評価によって合否が決まるというわけだ。
それがこの二百四回までの歴史であり、常識であった。
「最近は知識だけ無駄にあって実力がない冒険者が多い、そんな連絡が上の人たちから来てたので今回から少しルールを変更することになりました~」
上の人。リッドとアレクが知る由もないが、それは至極の三剣である。
この一週間、二人は何の筆記の勉強もしていなかった。一点も取れるわけがないだろう。
二人にとっては好機であった。
もちろん至極の三剣が二人のためだけに動いたというわけではない。
つい先日現れた『英雄』。彼との実力差を感じ、このままではいけないと考えたのだ。
太古の時代に比べてどんどん人類の実力は低下してきていた。それをどうにか止めようと三人はしているのである。
至極の三剣は学園の方針改革は当たり前のこと、学園に通っていない冒険者でも上を狙える社会を作ろうとしていたのだ。
「ふ、ふざけるなよ! こっちは必死に筆記の勉強をしてきたんだぞ!」
「そうだそうだ! そんなの公平じゃないだろ!」
「実力主義とか脳筋なのかよ!」
受験生たちは当然納得がいってないようで、惻隠に罵声を飛ばした。
そんな彼らを見て職員は深い溜息を吐く。
「はぁ……これだからゴミは」
「「「は?」」」
職員の言葉に衝撃を受けた受験生たちはその場で固まってしまう。
職員が受験生に対してゴミだといったのだ。驚くのは道理であろう。
そんな中、リッドとアレクは職員を興味深そうに見ていた。
「面白いっすね。あの職員」
「あぁ。普通に強いんだよな。絶対に上級冒険者だ」
二人は感覚的にだが、相手の強さを見極めれるようになっていた。
それは圧倒的に強い冒険者の限定であるが、生存本能が発達していたのだ。
先ほどまでの礼儀正しい職員とは一変して、憤怒交じりに告げる。
「ゴミがうだうだ文句言うんじゃねぇよ。文句言いてぇなら俺に勝ってからにしろ」
「「「うっ……」」」
その圧力に、その殺気に、先ほどまで文句を言っていた受験生たちは黙り込む。
「戦闘試験は今までと同じ。適当に二人一組を組んで戦え。階級の差はどうでもいい。あとは勝手にこっちが判断する。もちろん判断材料が少なければ落とすから時間内に出来るだけ戦っておけ。説明は以上だ」
職員はそう言い残して俺たちの前から姿を消した。
それと同時に前にある大きな扉が開く。戦闘試験が行われる会場であろう。
リッドとアレクは互いの拳をこつんと合わせて鳴らせる。
「リッド。お互い頑張ろうな」
「えぇ。一緒に飛び級を目指しましょう」
そして、彼らは前へと足を進めたのだった。
そしてすぐその結果を試すように昇級試験がやってきた。
「ここが昇級試験の会場っすか」
「なかなか人が少ないね。百人いないんじゃない?」
リッドとアレクの二人は昇級試験の会場へとたどり着いた。
試験では全ての階級の受験生が集まる。そう考えれば百人は少し少なめだろう。
「あ、アレクさん。あれってルーグさんじゃないっすか?」
「まじかよ。期待の新星って言われてるB級冒険者じゃないか。そんな奴らと一緒に試験を受けるんだな……」
二人は初めての試験に緊張をあらわにする。
原初の剣の名を広めるためにもこの機会を逃すわけにはいけない。二人には原初の剣の今後の方針がかかっているのだ。
「でも、俺たちもこの一週間死ぬほど頑張りましたし、何とかなるんじゃないっすか?」
「そうだね……でも三人と比べたら自信がなくならない?」
「あ~。それ分かるっす。アレンさんなんか湖を一太刀で割ってましたよ」
二人は苦い記憶に苦笑を漏らす。
常に目の前には格上の存在がいたため、二人は未だに自分たちが成長しているのか気づいていない。
この昇級試験でどれだけ成果が発揮できるのか。二人は心配でたまらないというわけである。
集合時間になると職員らしき男性が前のステージに立つ。
そして、拡声の魔法が付与されているものに口を近づける。
「あ、あ、あ、聞こえますね~。これから第二百五回。昇級試験を始めます~」
職員は手元の書類に視線を移し、そのままだらだらと読み続けていった。
「冒険者に必要なのは実力。圧倒的な実力が必要になります~。ということで今回の試験は臨時で戦闘試験のみとします」
「「「は、はあああああああぁぁぁぁぁ!?」」」
その職員の言葉に周りの受験生たちは目を見開いて驚く。
本来試験とは筆記試験と戦闘試験の二つに分かれている。
二つの総合評価によって合否が決まるというわけだ。
それがこの二百四回までの歴史であり、常識であった。
「最近は知識だけ無駄にあって実力がない冒険者が多い、そんな連絡が上の人たちから来てたので今回から少しルールを変更することになりました~」
上の人。リッドとアレクが知る由もないが、それは至極の三剣である。
この一週間、二人は何の筆記の勉強もしていなかった。一点も取れるわけがないだろう。
二人にとっては好機であった。
もちろん至極の三剣が二人のためだけに動いたというわけではない。
つい先日現れた『英雄』。彼との実力差を感じ、このままではいけないと考えたのだ。
太古の時代に比べてどんどん人類の実力は低下してきていた。それをどうにか止めようと三人はしているのである。
至極の三剣は学園の方針改革は当たり前のこと、学園に通っていない冒険者でも上を狙える社会を作ろうとしていたのだ。
「ふ、ふざけるなよ! こっちは必死に筆記の勉強をしてきたんだぞ!」
「そうだそうだ! そんなの公平じゃないだろ!」
「実力主義とか脳筋なのかよ!」
受験生たちは当然納得がいってないようで、惻隠に罵声を飛ばした。
そんな彼らを見て職員は深い溜息を吐く。
「はぁ……これだからゴミは」
「「「は?」」」
職員の言葉に衝撃を受けた受験生たちはその場で固まってしまう。
職員が受験生に対してゴミだといったのだ。驚くのは道理であろう。
そんな中、リッドとアレクは職員を興味深そうに見ていた。
「面白いっすね。あの職員」
「あぁ。普通に強いんだよな。絶対に上級冒険者だ」
二人は感覚的にだが、相手の強さを見極めれるようになっていた。
それは圧倒的に強い冒険者の限定であるが、生存本能が発達していたのだ。
先ほどまでの礼儀正しい職員とは一変して、憤怒交じりに告げる。
「ゴミがうだうだ文句言うんじゃねぇよ。文句言いてぇなら俺に勝ってからにしろ」
「「「うっ……」」」
その圧力に、その殺気に、先ほどまで文句を言っていた受験生たちは黙り込む。
「戦闘試験は今までと同じ。適当に二人一組を組んで戦え。階級の差はどうでもいい。あとは勝手にこっちが判断する。もちろん判断材料が少なければ落とすから時間内に出来るだけ戦っておけ。説明は以上だ」
職員はそう言い残して俺たちの前から姿を消した。
それと同時に前にある大きな扉が開く。戦闘試験が行われる会場であろう。
リッドとアレクは互いの拳をこつんと合わせて鳴らせる。
「リッド。お互い頑張ろうな」
「えぇ。一緒に飛び級を目指しましょう」
そして、彼らは前へと足を進めたのだった。
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