『完結』不当解雇された【教育者】は底辺ギルドを再建して無双する〜英雄の娘である私は常識破りの教育で化け物を量産します〜

柊彼方

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38話 過ぎ去る日々

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 リッドにはアレンを、アレクにはカイザーとマリィを顧問役としてつけておいた。
 何故か三人も個別で訓練を受けたいと申し出たので、午前は合同、午後からは個人の訓練となる。

 リッドとアレンは数十メートルの大きさがある小山のような岩の前にいた。

「リッド。こんな岩ぐらい割れなくてどうするんだい?」
「こんなに大きな岩、風魔法で切れますかね?」
「ただの風魔法では無理だろうね。工夫をするんだ」

 アレンの教え方はやはり上手い。
 そしてそんな彼の指導に対してリッドのひたむきさが上手く噛み合っていた。

 リッドには風魔法を専攻してもらっている。
 彼に適性があったというのも理由であるが、やはり大剣使いには風魔法が必要である。
 重量があるという欠点を風魔法で補えば、利点しかなくなるのだ。
 そんな大剣使いの完成形にリッドはなりつつある。 

「例えばそうだね……包丁を持っているとしよう。切れなければリッドはどうする?」
「上下に引きま……あっ! そういうことか!」
「分かったみたいだね。それを風魔法でもっと高速に行うんだ」

 アレンがリッドにさせようとしていることは風魔法によって空気を振動さること。
 それが活用できた暁には全てのものが触れただけで切れるようになるだろう。

 リッドは満身創痍になりながらも目の前の魔力操作に集中する。
 そして、作り上げた風魔法で作り上げた空気を振動させたブレードをアレンに見せた。

「こ、これでどうですか?」
「うんうん。いいね! これで基礎は完了だよ」
「き、基礎? じょ、冗談っすよね?」
「冗談なわけないじゃないか。こんな技は誰でも出来るさ」
「だ、誰でも? ま、まじか……」

 両肩を揺らし、息をしながらリッドは表情を真っ青に染める。
 こうしてリッドはアレンの地獄のレッスンを受け続けることになったのだった。




 一方、アレクの方では完全に二人が彼のメンタルをへし折りに来ていた

「おいおい、こんなことも出来ないのかよ。バカ王子」
「闘気をまとうなんて当たり前なの。さっさと覚えてね。アホ王子」

 どう見てもアリアのギルドに入ったアレクへの嫉妬だろう。

「うぐっ、レベルが違い過ぎるんだ……」

 アレクは弱音を吐くように言った。
 彼はリッドとは異なり、三人の地位と実力を知っている。
 どれだけ訓練内容が高度であるのか理解しているのだ。

「何言ってんだ? 闘気なんて普通だろ」
「レベルが違い過ぎる? 私たちは半日で覚えたよ」

 二人は何を言ってるのかとでも思うようにアレクに告げる。
 ちなみに今のアレクが習得しようとしている技術は【闘気】。
 自分の根源から湧き上がる魔力をまとい、自分の身体能力を強化する技である。

 ちなみに二人は基礎のように言っているが、これはB級冒険者から覚える至難の業だ。
 本来なら数か月、半年はかかる。そんな技を二人はアレクに一日で教えようとしていた。

「そう言えば来週から試験があるんだろ?」

 カイザーは思い出すように言う。

 リッドとアレクの二人は現在、E級冒険者。
 原初の剣がC級ギルドになったため二人は昇級の資格を得たのである。
 
「あれだ、昇級試験にはクソみたいな奴らが多い」
「そうね。あれは目立ったもん勝ちだから弱そうなやつを狙う者も多いのよ」

 二人は面倒くさそうな表情を浮かべる。

「二人とも昇級試験を受けたんすか?」
「あぁ。まぁ俺らは学園からだったからな。B級からS級の飛び級だぜ」
「あの時もだるいのはいたね。マジで雑魚かったけどねん」

 アレクの質問に二人は自信満々に告げた。

 ちなみに昇級試験に飛び級などと言う制度は存在しない。
 過去数十年で一人も出来なかった偉業を三人は軽々と成し遂げたのだ。

「アリアの下についたんだ。飛び級ぐらいしてこいよ」
「そうだね。そのためにもさっさと闘気ぐらいまといなよ」
「ま、まじかよ……」

 アレクもリッド同様に地獄の訓練を始めることになったのだった。

 こうして地獄の一週間は嵐のように一瞬で過ぎ去る――
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