『完結』不当解雇された【教育者】は底辺ギルドを再建して無双する〜英雄の娘である私は常識破りの教育で化け物を量産します〜

柊彼方

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26話 始まり

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 一夜明け、アリアたちは本格的にギルド再建へと取り掛かろうとしていた。
 今も朝からルーカス率いる大工たちが一から改築し始めてくれている。
 そのため迷惑にならないよう、四人はアリアの家へと集まっていた。



 私は先日クエストを達成して得た資金を管理職であるミーシャへと手渡す。

「ミーシャ。これはギルドの資金にして」
「あ、うん……って、えええええええええぇぇぇぇぇぇ!?」

 ミーシャは今までになく目を見開いて驚いた。
 その絶叫交じりの声を聞いて、一階で遊んでいたシアンとリッドが駆けつける。

「どうしたんですかお姉ちゃん……ってなに持ってるんですか!?」
「こ、これが都会……!」

 二人はミーシャの手の中にある札束を見て目を丸くした。
 五百万メルほどあるだろうか。これで当分の資金は確保できるはずだ。

「あ、アリア? これをどこで?」
「昨日ちょっと簡単・・なクエストを達成してね。あ、これがその記録書よ」

 私は報酬と一緒にもらっていた記録書をミーシャに手渡した。
 ミーシャは恐る恐る受け取り、ゆっくりと紙に視線を落とす。
 そして、彼女の表情はみるみるうちに豹変していった。

「こ、こ、これって……!」
「何が書かれてるの?」

 異変を感じてたシアンは彼女の背後に周り、後ろから記録書に目を通す。
 すると彼もミーシャ同様に目を丸くさせ、口をパクパクとさせた。
 二人は息を合わせるよう、驚愕をあらわにする。

「「――――ッ!? C級ギルド証明書ぉ!?」」
「え? そんなこと書かれてたの?」

 私は二人の驚き様を見て釣られるように驚いた。

 原初の剣は現在、F級ギルド。
 C級ギルドに昇級するためには数十ものクエストを達成し、三十層以上のダンジョン攻略が必要である。
 そのような実績が今のこの原初の剣にあるはずもない。
 どうやらエギンが言っていた例の補助のようだ。
 
「まぁよかったじゃない。これでもっと早く再建が――」
「「「じぃーー」」」
「わ、分かったわ。説明するわよ。昨日ね…………」

 三人の視線に耐えられなくなった私は渋々首を縦に振る。
 流石に私の実家について説明したところで納得してくれないだろう。
 そのため、私はエギンと交流があり、協会全体が原初の剣を支援してくれるということを説明した。

「ってことになったんだけど、」
「「「…………」」」

 私が説明し終えると三人は驚きを通り越したのか呆れた目で私を見てくる。
 三人を代表するようにシアンが口を開いた。 

「アリアさんってやばい方だったんですね」
「や、やばい!?」
「協会の会長さんやルーカスさんとも仲がいいなんて普通じゃないですよ」

 シアンは驚き疲れているのか、苦笑を浮かべている。

 もちろん私も現在進行形で驚いている。
 あのルーカスが世界一の大工に、あの下っ端職員のエギンが会長になるなど思ってもいなかったのだ。
 ましてやそんな二人が私のおかげなどと口にするなど夢かと思ってしまうほどである。

「……だから僕は思うんです」
「ん?」

 急に真剣な面持ちになったシアンに私は首を傾げる。
 シアンは私に面と向かって微笑みながら告げた。

「そんなアリアさんに出会えてよかったなと。凄い人たちから慕われるなんてアリアさんが凄い教育者プロフェッサーである証拠じゃないですか」
「そんなことないわ。彼らは彼らの努力で成長したの。実際、前にも言ったように私は白金の刃から――」

 私はそんなシアンの誉め言葉を首を左右に振り、否定しようとする。
 だが、彼はそんな私の言葉を遮るように言った。

「それは白金の刃が見る目がなかっただけです。僕はこの一日でどれだけアリアさんが凄くて優しい方か少しは理解出来たと思ってます」
「そうだよ。こんなもの持ってきておいて役立たずなんて誰が判断するの?」
「そうっすよ! アリア先生は俺を英雄にしてくれるって言ったじゃないですか! その言葉は今までどんな大人たちにかけられた言葉より一番重みがありました!」

 ミーシャとリッドはシアンに賛同するように口角を上げる。

 私はどこか不安だった。
 実績を出さなければまた捨てられる。
 そんな不安が私を常時襲っていた。

「先ほどは実績を口にしましたが、僕はアリアさんの人柄を好いているんです。底辺のギルドに手を貸そうなんてよっぽどのお人好しじゃないかぎりしませんよ」

 しかし、そんな考えは私の杞憂だったようだ。
 シアンは昨日、私を迎え入れてくれた時のように温かい笑みを漏らしたのだった。
 
「アリアさん。僕たちはあなたを信じてます。もうお構いなく全力を出しちゃってください」

 私はこの瞬間を一生忘れることはないだろう。
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