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18話 支援
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「原初の剣にはこれからギルド一位を目指してもらいます」
「は? 何言ってるの? 原初の剣は潰れる寸前のギルドなのよ?」
流石に私もエギンの言葉は信じ難かった。
A級冒険者やS級冒険者がいる白金の刃とは違って原初の剣はE級の隊員が一人。
これでどう立ち向かうというのだろうか。
「もちろん今は潰れる寸前かもしれません。でも先生が教育者になりました」
「いや、私のことを過大評価し過ぎよ。私は解雇されるレベルの役立たずなの」
「それは隊員が言うことを聞かなかっただけです。実際、先生のおかげで一気にこの地位まで這い上がれた人間がここにいます」
私は苦笑を浮かべながら断ろうとする。
しかし、エギンは真剣な眼差しで、まるで本当に一位を狙えるかのように口にした。
「先生の指導は天才的過ぎてついていけないだけなんですよ」
「いや、普通のつもりなんだけど……動物園で働くことが天才?」
「発想の意味で、です。急に動物園で働けなんて言われてのこのこと働く人なんてどこにいます?」
「そこ」
私は目の前にいるエギンを指さす。
エギンは一瞬固まるものの、すぐにわざとらしい咳をして話を戻した。
「おっほん。まぁそういうことです。今や原初の剣はゼロからスタートしている。そこで先生も実績を積めば隊員も言うことを聞いてくれるでしょう」
「そう上手くいくと思う? まるで夢みたいな目標だけれど」
「先生の教え子が絶対と言うんです。それに俺の今の職業をお忘れで? 冒険者をまとめ上げる会長ですよ?」
「まぁエギンは上手くいったのかもしれないけれど……」
急にギルド順位一位を目指そう。それもE級冒険者しかいないギルドで。
このことを打ち明けられて誰が首を縦に振るだろうか。
そんな動揺している私にとどめをさすようにエギンは口を開いた。
「先生はあの伝説の教育者がお好きでしたよね?」
「え、えぇ。急にどうしたの?」
「状況が酷似してませんか? あの教育者はこの道を辿って頂点を勝ち取ったんですよ?」
「なっ!?」
言われてみればそうだ。自分から望んでいたくせに、そんな状況に陥れば弱音を吐いてしまう。
これが伝説上の存在との差なのだろう。
「俺は先生なら伝説に追いつける……いや、勝ることだってできると思っています」
「……」
エギンの真剣さに私は苦笑を浮かべながら断るなんてことが出来なくなっていた。
彼は本気だ。本気で私に一位を狙わせに行こうと考えている。
「どうせ先生のことです。そのE級の冒険者にも大胆な目標を掲げさせたんでしょう?」
「うぐっ……まぁそうね」
図星であった私は喉に言葉を詰まらせてしまった。
目標設定は大事だ。エギンの時も会長にしてあげる、そんな目標を口にして彼を教育した。
もちろん本気で狙っていたといえば噓になる。しかし、そのレベルまで教育してあげようとは思っていた。
「その目標を達成するためにはギルド順位一位になった方が早いと思いますが。それに伝説の教育者ならこのような誘い、二つ返事で了承すると思いますが?」
「なかなかエギンも言うようになったわね」
「あっはっは。そりゃあ先生の教え子ですから」
エギンはさわやかな笑みを漏らしながら頷いた。
昔は強面で誰からも絡まれないように行動していた彼だが、今では多くの職員から慕われる会長だ。
ましてや私を言葉で打ち負かすなど初めてである。
私はそんな彼の成長を微笑ましく思いながらもにんまりと口角を上げた。
「いいわ。その誘いに乗ってあげる」
「それでこそ先生です。俺たちも全力でサポートしますね」
私たちはお互いに強く手を握る。
こうして始まったのだった。
原初の剣による最弱からの下克上が。
「は? 何言ってるの? 原初の剣は潰れる寸前のギルドなのよ?」
流石に私もエギンの言葉は信じ難かった。
A級冒険者やS級冒険者がいる白金の刃とは違って原初の剣はE級の隊員が一人。
これでどう立ち向かうというのだろうか。
「もちろん今は潰れる寸前かもしれません。でも先生が教育者になりました」
「いや、私のことを過大評価し過ぎよ。私は解雇されるレベルの役立たずなの」
「それは隊員が言うことを聞かなかっただけです。実際、先生のおかげで一気にこの地位まで這い上がれた人間がここにいます」
私は苦笑を浮かべながら断ろうとする。
しかし、エギンは真剣な眼差しで、まるで本当に一位を狙えるかのように口にした。
「先生の指導は天才的過ぎてついていけないだけなんですよ」
「いや、普通のつもりなんだけど……動物園で働くことが天才?」
「発想の意味で、です。急に動物園で働けなんて言われてのこのこと働く人なんてどこにいます?」
「そこ」
私は目の前にいるエギンを指さす。
エギンは一瞬固まるものの、すぐにわざとらしい咳をして話を戻した。
「おっほん。まぁそういうことです。今や原初の剣はゼロからスタートしている。そこで先生も実績を積めば隊員も言うことを聞いてくれるでしょう」
「そう上手くいくと思う? まるで夢みたいな目標だけれど」
「先生の教え子が絶対と言うんです。それに俺の今の職業をお忘れで? 冒険者をまとめ上げる会長ですよ?」
「まぁエギンは上手くいったのかもしれないけれど……」
急にギルド順位一位を目指そう。それもE級冒険者しかいないギルドで。
このことを打ち明けられて誰が首を縦に振るだろうか。
そんな動揺している私にとどめをさすようにエギンは口を開いた。
「先生はあの伝説の教育者がお好きでしたよね?」
「え、えぇ。急にどうしたの?」
「状況が酷似してませんか? あの教育者はこの道を辿って頂点を勝ち取ったんですよ?」
「なっ!?」
言われてみればそうだ。自分から望んでいたくせに、そんな状況に陥れば弱音を吐いてしまう。
これが伝説上の存在との差なのだろう。
「俺は先生なら伝説に追いつける……いや、勝ることだってできると思っています」
「……」
エギンの真剣さに私は苦笑を浮かべながら断るなんてことが出来なくなっていた。
彼は本気だ。本気で私に一位を狙わせに行こうと考えている。
「どうせ先生のことです。そのE級の冒険者にも大胆な目標を掲げさせたんでしょう?」
「うぐっ……まぁそうね」
図星であった私は喉に言葉を詰まらせてしまった。
目標設定は大事だ。エギンの時も会長にしてあげる、そんな目標を口にして彼を教育した。
もちろん本気で狙っていたといえば噓になる。しかし、そのレベルまで教育してあげようとは思っていた。
「その目標を達成するためにはギルド順位一位になった方が早いと思いますが。それに伝説の教育者ならこのような誘い、二つ返事で了承すると思いますが?」
「なかなかエギンも言うようになったわね」
「あっはっは。そりゃあ先生の教え子ですから」
エギンはさわやかな笑みを漏らしながら頷いた。
昔は強面で誰からも絡まれないように行動していた彼だが、今では多くの職員から慕われる会長だ。
ましてや私を言葉で打ち負かすなど初めてである。
私はそんな彼の成長を微笑ましく思いながらもにんまりと口角を上げた。
「いいわ。その誘いに乗ってあげる」
「それでこそ先生です。俺たちも全力でサポートしますね」
私たちはお互いに強く手を握る。
こうして始まったのだった。
原初の剣による最弱からの下克上が。
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