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四章 魔術大会
最後
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「「はぁ、はぁ、はぁ」」
ランテとドラコは上空で視線を交差させながら肩で息をしている。
最初はドラコが優勢だった。ランテが負ける可能性の方が高かったのだ。
しかし、長年の経験と鍛錬の賜物であろう。
後半からはランテの粘りにより、ランテの方が優勢になり始めたのだ。
「俺は! ドラコになんか負けるわけにはいかないんだよ!」
ランテは今まで見たことのないような喧噪でドラコに吠えた。
その表情からは焦燥が見られる。
「俺だって兄さんには勝たないといけない。でなければあの方の隣にも立てない」
ドラコもドラコでランテに勝たなければならないという焦燥にかられていた。
ドラコはどうしても次期族長と言う肩書が欲しいのだ。
でなければ目の前にいてほしいあの方に置いて行かれると思ったからである。
そんなドラコの言葉にランテは更に激怒を表す。
「そんなことどうでもいいんだよ! 俺はお前が生まれる前から必死に努力してきた! なのに! なのに…………」
「……………………」
ドラコはその兄の姿を見てただ沈黙をしていた。
そのランテの表情から悲哀が垣間見えたからである。
「俺には才能がなかった! だから努力で積み上げてきたんだ! それなのに腐っていたお前がすぐに決勝? ふざけんなよ!」
今まで全ての物が自分より下だと見下してきたようなランテがそんな態度をとるのは異様だった。
決勝の前もドラコに反骨心をむき出しにするほど煽ってきたほどだ。
「お前さえいなければ俺は順調に族長になれてたんだ!」
「……………………」
別にその言葉にドラコは驚くことはなかった。
もともとそう思われているだろうなとは理解していたのだ。
しかし、それはドラコも同様である。
だが、
「…………ごめん。でも俺も負けるわけにはいかないんだ」
ドラコはランテ同様に怒りをあらわにすることはなかった。
ここで感情を表に出せば前の自分に戻る。そう思っていたのだ。
「…………くそっ! 絶対に殺してやる!」
ランテはその大人びたドラコの態度に更に憤りをあらわにした。
そして、本物の殺気をドラコに向けてランテは魔法を行使する。
「【神の雨】!」
「……………………ッ!」
ドラコはその魔法の行使に口を大きく開けて驚愕を見せる。
【神の雨】には数分の詠唱が必要なはずだ。
それを今、ランテは無詠唱で行使し…………
「まさか会話中、ずっと詠唱をしてたの?」
「あぁ! 残念だったな! これで全員終わりだ!」
どうやらランテはその会話の必死さとは裏腹にこっそり脳内で詠唱をしていたようだ。
ランテにはまだ無詠唱を行使する術を持っていない。
しかし、その代わりに脳内詠唱を身に着けているのだ。
そんなことを考えている間にも上空が光に包まれ始める。
先ほどは六人分の障壁を破ったのだ。今残っているのはドMクラブだけ。
完全に戦力不足である。
この魔法を回避する方法は存在しない。
あるとすれば発動するまでの一分以内にランテを殺すという方法だけだ。
「レイ様は…………はぁ」
ドラコはすぐに周りを見回すが、レイの気配は存在しない。
ピンチの時に必ず駆けつける。そんなヒーローはこの世に存在しないのだ。
そんな淡い期待をした自分自身にドラコは溜息を吐く。
「…………よし」
そして、この場で自ら殻を破るように覚悟を決めたのだった。
********
ご報告
今話をもって少し更新スピードを遅くしようと思います。
理由としては9月にあるファンタジー大賞に全力を注ぎたいからです。
もちろん、私は学生の身。大賞などで受賞できるはずもありません。
しかし、こうして皆様に読んでもらえてるということは少しでも可能性があるということでもあります。
目標は100以内!
もし、こんな学生作家でもよければ応援していただけると嬉しいです!
ランテとドラコは上空で視線を交差させながら肩で息をしている。
最初はドラコが優勢だった。ランテが負ける可能性の方が高かったのだ。
しかし、長年の経験と鍛錬の賜物であろう。
後半からはランテの粘りにより、ランテの方が優勢になり始めたのだ。
「俺は! ドラコになんか負けるわけにはいかないんだよ!」
ランテは今まで見たことのないような喧噪でドラコに吠えた。
その表情からは焦燥が見られる。
「俺だって兄さんには勝たないといけない。でなければあの方の隣にも立てない」
ドラコもドラコでランテに勝たなければならないという焦燥にかられていた。
ドラコはどうしても次期族長と言う肩書が欲しいのだ。
でなければ目の前にいてほしいあの方に置いて行かれると思ったからである。
そんなドラコの言葉にランテは更に激怒を表す。
「そんなことどうでもいいんだよ! 俺はお前が生まれる前から必死に努力してきた! なのに! なのに…………」
「……………………」
ドラコはその兄の姿を見てただ沈黙をしていた。
そのランテの表情から悲哀が垣間見えたからである。
「俺には才能がなかった! だから努力で積み上げてきたんだ! それなのに腐っていたお前がすぐに決勝? ふざけんなよ!」
今まで全ての物が自分より下だと見下してきたようなランテがそんな態度をとるのは異様だった。
決勝の前もドラコに反骨心をむき出しにするほど煽ってきたほどだ。
「お前さえいなければ俺は順調に族長になれてたんだ!」
「……………………」
別にその言葉にドラコは驚くことはなかった。
もともとそう思われているだろうなとは理解していたのだ。
しかし、それはドラコも同様である。
だが、
「…………ごめん。でも俺も負けるわけにはいかないんだ」
ドラコはランテ同様に怒りをあらわにすることはなかった。
ここで感情を表に出せば前の自分に戻る。そう思っていたのだ。
「…………くそっ! 絶対に殺してやる!」
ランテはその大人びたドラコの態度に更に憤りをあらわにした。
そして、本物の殺気をドラコに向けてランテは魔法を行使する。
「【神の雨】!」
「……………………ッ!」
ドラコはその魔法の行使に口を大きく開けて驚愕を見せる。
【神の雨】には数分の詠唱が必要なはずだ。
それを今、ランテは無詠唱で行使し…………
「まさか会話中、ずっと詠唱をしてたの?」
「あぁ! 残念だったな! これで全員終わりだ!」
どうやらランテはその会話の必死さとは裏腹にこっそり脳内で詠唱をしていたようだ。
ランテにはまだ無詠唱を行使する術を持っていない。
しかし、その代わりに脳内詠唱を身に着けているのだ。
そんなことを考えている間にも上空が光に包まれ始める。
先ほどは六人分の障壁を破ったのだ。今残っているのはドMクラブだけ。
完全に戦力不足である。
この魔法を回避する方法は存在しない。
あるとすれば発動するまでの一分以内にランテを殺すという方法だけだ。
「レイ様は…………はぁ」
ドラコはすぐに周りを見回すが、レイの気配は存在しない。
ピンチの時に必ず駆けつける。そんなヒーローはこの世に存在しないのだ。
そんな淡い期待をした自分自身にドラコは溜息を吐く。
「…………よし」
そして、この場で自ら殻を破るように覚悟を決めたのだった。
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今話をもって少し更新スピードを遅くしようと思います。
理由としては9月にあるファンタジー大賞に全力を注ぎたいからです。
もちろん、私は学生の身。大賞などで受賞できるはずもありません。
しかし、こうして皆様に読んでもらえてるということは少しでも可能性があるということでもあります。
目標は100以内!
もし、こんな学生作家でもよければ応援していただけると嬉しいです!
応援ありがとうございます!
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