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四章 魔術大会
主人公
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「ドラコ! お前はランテに集中しろ!」
「でも…………いや、分かったす!」
ドラコは俺を見て、一瞬悩んだものの首を縦に振った。
ちなみに今の俺は血だらけで死にかけの状態である。
あと一撃でも食らえば動けなくなるだろう。
ここまで俺に深手を負わせたゲータだが正直に言うと化け物だった。
今まで戦ってきた相手で一位番強かった。
他の族長候補たちの生徒と比べれば魔力量は少ない。
そのためゲータは魔法攻撃などはしてこなかった。
全て拳である。
矢が効かない俺にとって拳など意味を持たない。
そう思っていたのだが何度も深手を負わされた。
どうやらゲータは魔力を全身に纏わせていたようだ。
そのため魔力で殴られている状態になる。
そして、一番厄介だったのがゲータの根性だ。
どれだけ気絶させても、どれだけ叩きのめしても何度でも立ち上がる。
残りの二人は魔王覇気で一瞬で沈めた。
しかし、ゲータは魔王覇気すら我慢で乗り越えるのだ。
魔王覇気は幹部でも耐えることが出きなかったのにもかかわらずである。
『…………おい、レイと言ったな? また戦おうぜ』
正直、今回は無詠唱魔法の連発でどうにか乗り切ったものの、次は危うい。
そして、一番の問題点は俺が回復魔法を行使できないということだ。
実際、今の俺は血だらけである。
今まで回復ポーションかパーティーメンバーであった聖女の回復魔法で乗り切ってきたため、鍛えてこなかったのだ。
そして、今でもエルフリアが行使できるため鍛えていない。
今回の魔術大会はアイテム、魔道具の持ち込みが禁止されているため回復ポーションも行使できない。
「あれ? 死にかけじゃない~。そんな状態に私たちに勝てるとでも?」
「そうです。無駄な抵抗は貴方自身を苦しめるだけですよ」
二人はそんな瀕死状態の俺を見て口角を上げる。
そして、すぐに俺を仕留めにかかろうと再び突進してきた。
「「はああああああぁぁぁぁ!」」
「…………うっ!」
何度も左右から放たれる斬撃を短剣で防ぐ。
だが、二人も族長候補だ。
俺に隙が出来ないように何度も乱舞し、俺は防戦一方のまま後方へと下がらされる。
そして、瀕死状態の俺だ。このまま押されていては負けは確定しているような…………
「…………なっ!」
背中に当たる住宅街の壁に俺は驚きを隠せない。
左右にも住宅街。どうやら一本道に追い込まれたようだ。
「これでもう逃げられないわよ~」
「さっさと諦めていれば苦しい思いもしなくてよかったのに」
二人はゆっくりと俺のもとへと近づいてい来る。
魔法で空に逃げる?
いや、対策していないはずがない。【テレポート】を行使されて墜とされるのがおちだ。
「…………アハハ。本当に何て俺は馬鹿なんだろ」
俺は負け惜しみのように自虐的に言った。
俺はこの一週間ドラコを育成してきた。
別にその行為を俺は後悔していない。
実際、今だってドラコは殻を破り新たな段階へと進もうとしている。
因果であったランテを踏み台に新たな自分になろうとしているのだ。
しかし、俺はどうだ?
ハデスの力を少し借りて強欲になって、自分の力を見誤って。
俺は最強? 何を馬鹿なことを言っている。
幹部以上の魔族は何人もいる。ましてや今の俺には族長たちに勝てることも出来ないだろう。
そう。俺には足りなかったのだ。
注がれ始めた俺の器は完成していない。
力が出ない。力が出せない。繋がりが全然足りない。
俺はまだ…………未完成なのだ。
二人はゆっくりと俺に向かって長剣を突き刺そうとしてくる。
これで俺は終わり。ドラコがランテに勝とうが二人がドラコを始末するだろう。
完璧に俺の実力不足だ。これで俺たちのパーティーが優勝できることはない。俺はそう思っていた。
しかし、
「【パーフェクトヒール!】」
そんな俺に全てを治癒する魔法が行使された。
そして、俺の前に頼りがいのある一人の女性が現れる。
「お待たせしました! レイ様!」
返り血で所々真っ赤に染まったエルフリアがにっこりと笑ったのだった。
「でも…………いや、分かったす!」
ドラコは俺を見て、一瞬悩んだものの首を縦に振った。
ちなみに今の俺は血だらけで死にかけの状態である。
あと一撃でも食らえば動けなくなるだろう。
ここまで俺に深手を負わせたゲータだが正直に言うと化け物だった。
今まで戦ってきた相手で一位番強かった。
他の族長候補たちの生徒と比べれば魔力量は少ない。
そのためゲータは魔法攻撃などはしてこなかった。
全て拳である。
矢が効かない俺にとって拳など意味を持たない。
そう思っていたのだが何度も深手を負わされた。
どうやらゲータは魔力を全身に纏わせていたようだ。
そのため魔力で殴られている状態になる。
そして、一番厄介だったのがゲータの根性だ。
どれだけ気絶させても、どれだけ叩きのめしても何度でも立ち上がる。
残りの二人は魔王覇気で一瞬で沈めた。
しかし、ゲータは魔王覇気すら我慢で乗り越えるのだ。
魔王覇気は幹部でも耐えることが出きなかったのにもかかわらずである。
『…………おい、レイと言ったな? また戦おうぜ』
正直、今回は無詠唱魔法の連発でどうにか乗り切ったものの、次は危うい。
そして、一番の問題点は俺が回復魔法を行使できないということだ。
実際、今の俺は血だらけである。
今まで回復ポーションかパーティーメンバーであった聖女の回復魔法で乗り切ってきたため、鍛えてこなかったのだ。
そして、今でもエルフリアが行使できるため鍛えていない。
今回の魔術大会はアイテム、魔道具の持ち込みが禁止されているため回復ポーションも行使できない。
「あれ? 死にかけじゃない~。そんな状態に私たちに勝てるとでも?」
「そうです。無駄な抵抗は貴方自身を苦しめるだけですよ」
二人はそんな瀕死状態の俺を見て口角を上げる。
そして、すぐに俺を仕留めにかかろうと再び突進してきた。
「「はああああああぁぁぁぁ!」」
「…………うっ!」
何度も左右から放たれる斬撃を短剣で防ぐ。
だが、二人も族長候補だ。
俺に隙が出来ないように何度も乱舞し、俺は防戦一方のまま後方へと下がらされる。
そして、瀕死状態の俺だ。このまま押されていては負けは確定しているような…………
「…………なっ!」
背中に当たる住宅街の壁に俺は驚きを隠せない。
左右にも住宅街。どうやら一本道に追い込まれたようだ。
「これでもう逃げられないわよ~」
「さっさと諦めていれば苦しい思いもしなくてよかったのに」
二人はゆっくりと俺のもとへと近づいてい来る。
魔法で空に逃げる?
いや、対策していないはずがない。【テレポート】を行使されて墜とされるのがおちだ。
「…………アハハ。本当に何て俺は馬鹿なんだろ」
俺は負け惜しみのように自虐的に言った。
俺はこの一週間ドラコを育成してきた。
別にその行為を俺は後悔していない。
実際、今だってドラコは殻を破り新たな段階へと進もうとしている。
因果であったランテを踏み台に新たな自分になろうとしているのだ。
しかし、俺はどうだ?
ハデスの力を少し借りて強欲になって、自分の力を見誤って。
俺は最強? 何を馬鹿なことを言っている。
幹部以上の魔族は何人もいる。ましてや今の俺には族長たちに勝てることも出来ないだろう。
そう。俺には足りなかったのだ。
注がれ始めた俺の器は完成していない。
力が出ない。力が出せない。繋がりが全然足りない。
俺はまだ…………未完成なのだ。
二人はゆっくりと俺に向かって長剣を突き刺そうとしてくる。
これで俺は終わり。ドラコがランテに勝とうが二人がドラコを始末するだろう。
完璧に俺の実力不足だ。これで俺たちのパーティーが優勝できることはない。俺はそう思っていた。
しかし、
「【パーフェクトヒール!】」
そんな俺に全てを治癒する魔法が行使された。
そして、俺の前に頼りがいのある一人の女性が現れる。
「お待たせしました! レイ様!」
返り血で所々真っ赤に染まったエルフリアがにっこりと笑ったのだった。
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