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四章 魔術大会

驚愕

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『…………は?』
「「「……………………へ?」」」

 その初戦の一部始終に実況者はもちろんのこと生徒たちも茫然していた。
 誰もがドラコの行動を見ることができなかったのだ。
 
「へぇ。一年生にもやばい奴がいるもんだ」
「ですね。僕の時代の時にもこれほどの者はいませんでしたね」

 しかし、どうやら二人は見えていたようだ。
 そのことに気づいたアナは二人に問いかける。

『今の状況を解説お願いできますか?』

「今、ドラコ選手は三人に峰内をしたな」
「ですね。しかも水魔法ですね。あれほどの素早い術式転換は三年生でも難しいんじゃないですか?」
「あぁ。上層部でなければ無理だな。今参加してる奴らに上層部はいない。こりゃあキツイぞ」

 待合室ではまるで空気が全て入れ替わったような感覚に包まれる。

 ある者はドラコに賞賛の目を向け。
 ある者はドラコの成長っぷりに驚愕する。
 そして、ある者はいじめっ子のくせにと、更にドラコに対する評価を下げた。

『そんなことが…………おおっと! こんどはエレメンタルズと魔導士軍団が交戦しようとしているぞぉ!』

 固まりそうな雰囲気を察してかアナはモニターに別の場所を映し出した。
 エレメンタルズは補助魔法を行使し合ったためか、常時よりかなり身体能力が向上している。
 並大抵の魔族では敵わないほどだ。

 しかし、魔導士軍団も巨大な魔法陣を完成させている。

『エレメンタルズはこの魔法を相殺できると思いますか?』
「補助魔法で向上されているので行けるんじゃないか?」
「でも、あの魔法って核魔法ですよね。三人のタイミングがずれたら一瞬で終了ですね」

 ちなみにこの魔術大会では魔王が作った治癒魔法陣が使われている。
 まぁ死者蘇生といえばわかりやすいだろうか。
 この魔法陣に入っている者は復活して元の場所に戻るというものだ。
 これは最初の転移魔法に織り込まれていた。

『では、皆さん、モニターにご注目ください!』

 アナの言葉によって生徒たちの視線が再びモニターに移る。






「おい! お前ら! 合わせるぞ!」
「「おおぉ!」」

 エレメンタルズは声を掛け合いながら、路地裏の奥にいる魔導騎士団に突進する。
 しかし、考えてもみろ。何故、魔導騎士団が路地裏で待機していたかということに。

「来たぞ。我らの極大魔法を放つ時だ」
「あぁ。ここ一帯を吹き飛ばしてやる」
「我の至高、受けて見よ」

 魔導騎士団は歪な笑みを浮かべながらエレメンタルズを待ち受ける。

「「「はあああああぁぁぁぁ!」」」

 エレメンタルズは咆哮しながら突進する。
 そして、エレメンタルズをギリギリまで引き付けた魔導騎士団は極大魔法を放った。

「【獄炎の業火ボルケーノ・ノヴァ】!」

 その瞬間、魔導騎士団から地獄が放たれた。
 その業火はこの空間まで焼き尽くそうとする威力。
 そんな業火をエレメンタルズは一刀両断しようと試みる。

「「「はああああああぁぁぁぁ!!」」」

 三人は同時に縦に一閃した。
 補助魔法で上乗せされた斬撃は鋭く、風に乗るように放たれる。

 そして、業火と斬撃が相対し…………

 スパンッ!

「「「よっしゃあああああぁぁぁ!」」」
「「「な、なんだと。我らの魔法が…………」」」

 業火は横に綺麗に裂け左右に分断される。
 左右は焼け解けているが見事にエレメンタルズがいる場所だけ綺麗に無傷であった。

「「「…………降参だ」」」

 この日のために何度も練習を重ねてきた極大魔法が破られたのだ。
 魔導騎士団は落胆しながら降参し、元の場所へと転移した。
 わざわざ負けるのならば死ぬ思いをする必要もないと考えたのだろう。

 エレメンタルズのリーダーはその光景を見て背後にいる仲間に声をかける。

「よく頑張ったな。あんな魔法を切れるなんて俺も思っていなかった。なぁお前た…………ち?」

 しかし、そこにいるはずの仲間の姿はなかった。
 そして、その代わりに頭を二つ持った黒いマントを被った男がいた。

「まぁ喋んなや。おい、お前ら拘束魔法」
「「へい」」

 フードの男は背後にいるに多様なフードの男たちに指示を出す。
 そして、持っていた首をエレメンタルズのリーダーの顔の左右に置いた。

 もちろんこの二人は死んで、待合室に戻っている。
 しかし、この場で死体が消える。なんて機能はない。

「…………あ」

 この瞬間、リーダーは悟った。
 今から地獄を見るのだと。
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