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三章 暗躍

反逆

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「な、な、何してるんですかあああああぁぁぁぁ!?」
「え? 何って雷落としただけだけど」
「国家反逆罪ですよ! 頭狂ったんですか!」
「それは言い過ぎ」
「…………ぐへっ!」

 ハデスは喧騒を変えて俺に聞いてくる。
 ちょっとハデスに説教されるのは納得いかなかったので一発どついておいた。

 まぁ魔王城に手応えなかったので無事だろう。
 そもそもあの魔法はしょぼい雷しか出せない風魔法の中級レベルの魔法だ。

 しかし、まぁ俺の考えは上手くいったようだ。

「何が起きたああああああぁぁぁぁ!」
「火事だぁ! 警備兵を増員しろおおおぉぉぉ!」
「国民の避難誘導も!」」

 魔王城に攻撃されたのなら問題になるだろう。
 しかし、相手は雷。俺が魔法を使ったという証拠は何処にも存在しない。

 そのため、特に警戒を強める必要はなく、その警備を魔王城の復旧へと広げることができる。
 俺が落とした場所は魔王の部屋らしき頂上から離れた場所だ。
 これで俺が魔王城に侵入しようがすぐにバレるということはない。

「じゃあ行くよ。ハデス」
「行くってどこに…………」
「お前の息子に会いに行くんだよ。【エアリスト】!」

 俺は自分に風の上級補助魔法をかける。
 【エアロ】だけならただのスピードを上げるだけだ。実際、ハデスには追い付かれるほどのほんのり上げるレベル。
 しかし、【エアリスト】は次元が違う。

 これはエルフに代々伝わる上空でも戦えるようにと発案された魔法だ。
 自分の体重を風で軽くし、鳥のように空を舞うことができる。

 何故、そんな魔法を俺が知っているかって?

 【統率之王アレス】の権能で配下の魔法は軒並みに行使できるのだ。
 しかし、それは軒並み。ハデスは配下であるが、奥底がもやがかかったように見えない。やはりまだ俺の実力が足りないようだ。

「ってああああああああぁぁぁぁぁ!?」
「魔王のくせにそれぐらいで驚かないでよ」
「魔王ってそんな万能な言葉じゃないですからね!?」

 俺とハデスは魔王城前から空を舞って魔王城の頂上にポツンと見える部屋を目指して直線に飛んだ。



「レイ。魔王城には【完全魔導壁パレガルド】が何重張にもられていて…………」
「【完全魔導壁パレガルド】?」

 パリンッ! パリンッ! パリンッ!

「…………対勇者用の決壊がこれほど易々と割られたらこっちとしても立場がないですね」

 ハデスは頭を抱えるように唸る。
 まぁこれは国の最後の砦のような魔法なのだろう。
 しかし俺にとっては軽く当たったら割れる程度のガラスだ。

「ハデス、あの部屋で合ってる?」
「ええ。あの部屋が魔王の部屋です」
「じゃあ突撃しよう!」
「…………もう流石になにも驚かなくなってきましたよ!」

 俺の言葉にハデスは呆れたように笑った。
 だが、その表情からは何処かだ楽しげが伝わってくる。

 しかし、今こうして考えると、ハデスには息子がいるのだ。
 ということは年齢的に父親の世代であるということである。

 おっさんと戯れる俺って何なのだろう。

 パリンッ!

 そんなことを考えながら俺とハデスは魔王の部屋のガラス窓をぶち破る。

 あ、ちなみに言っておきますけど、ガラス窓を突き破るのはお勧めしません。
 現段階で俺の腕にガラスがいくつか刺さってます。普通に痛いです。

「な、なんだ貴様らは!」

 俺が前方を向くと目の前には俺くらいの年のハデスがいた。
 …………ん? ハデス?

「おい! ネイトラム! 愚息のお前に言いたいことがある!」
「なんだよクソ親父! 親子喧嘩で負けたからって助っと連れてきたのかよ!」

 そんな犬二人の会話に俺は茫然としていた。
 
 いやね。期待していたなんてことはありませんよ。
 でもね、ちょっとぐらい思うじゃないですか。どれだけ強そうな魔王なのかなって。
 
 本当ならツッコミをバシッと入れるべきなんだろうが、今の俺にはそんな余裕はなかった。

「……………………はぁ」

 どうやらこの世界での魔王は犬らしいです。
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