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スローライフはどこへ?
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俺とハデスはエルフリアと距離をとって対面している。
「では、始めましょうか!」
「「……………………」」
そのエルフリアの言葉を合図に勝負は開始された。
――時を遡ること二時間前
「レイ様の隣に立てるために私、とても頑張ったんですからね!」
エルフリアは少し頬を紅潮させながら言った。
そんな言葉に俺は戸惑いを隠せない。
「あ、ありがとうって言えばいいのかな? ま、まぁ俺は嬉しいよ!」
「本当ですか!? 頑張った甲斐がありました!」
エルフリアは可愛らしいガッツポーズをして喜びをあらわにしている。
先ほどの長く語ってくれたエルフリアの今までの話を簡単にまとめよう。
エルフリアは俺に痛めつけられたのがとても嬉しかったようで、また俺に会いたいと思っていたそうだ。
しかし、俺は勇者だった。どんどん深層に潜っていき、ダンジョンで出会える確率はほぼゼロに等しくなったのだ。
そこでエルフリアは考えた。魔族の中で一番取れたら俺とまた会えるのではないか? それも魔王として仲良くできるのではないかと。
ダンジョンに住んでいたエルフリアはダンジョンを出て魔族の国へと戻った。
そこからは話さなくても分かるだろう。
族内を上に速攻で駆け上がり、一年で族長へと上りつめた。
更には魔族の中でも弱いと言われていた妖精族をエルフへと進化させたのだ。
その行動理由さえまともであれば賞賛待ったなしの業績である。
「それでレイ様は何故このようなところに? もしかして私に会いに来てくれたんで――」
「木材の資源について話をしたくてね」
このままエルフリアに自由に話をさせていたら運命の赤い糸とか何とか言いそうだ。
そのため、俺は遮るように本題を口にする。
すると、エルフリアは俺に向けていたファンのような表情から、族長としての表情に戻る。
「レイ様。私たちは魔王の傘下に入っていないのは先ほども言いましたよね?」
「…………あぁ」
エルフリア自身が魔王の座を狙うのであればそれは当然の行動だ。
だが、魔王の傘下に入ってなければ魔王の庇護がないということ。真っ先に人族に狙われるとも言い換えれる。
「それは私の手で魔王を叩きのめしたいというのもあります」
「え、えぇ…………」
そのエルフリアの言葉にハデスはドン引きしているような様子を見せた。
別に自称魔王なのだからそこまで演技をしなくてもいいのではなかろうか。
まぁ何事にも本気になることは良いことではあるが。
「でも、一番の理由はこの森を守りたいからです」
「…………」
その真剣な眼差しに俺は何も言葉を返すことが出来なかった。
何故ならその言葉からは絶対に曲げられない信念が感じられたからだ。
先ほどの魔族の国がほぼ金属だけで建てられていた理由も分かる。
大森林を管轄しているエルフが木材を提供していなかったためだ。
となると俺も木材を使うのは難しいだろう。
ちっ。ログハウス風の家でごろごろするのが夢だったのになぁ。
だが、こうやって心の中で愚痴を吐いたって何も変わらない。
「そうか…………無理を言ってすまなかっ――」
「しかし、相手がレイ様となると話は違います」
「「…………え?」」
エルフリアは豊胸である胸を張ってドヤ顔をして言った。
そんな態度の変化に俺とハデスは唖然としてしまう。
特にハデスは顎が地面に着いてしまうのではないか。そんなレベルで口を開けていた。
「そうですね…………決闘をしましょう! それで私を十分痛めつけられたらレイ様の提案を出来る限り受け入れます!」
「アハハ…………分かった」
私に勝ったら。ではなく、痛めつけたらという条件に俺は苦笑いをすることしか出来なかった。
だが、こんな好条件をのまない理由はない。
――こうして今に至るのだ。
「では、始めましょうか!」
「「……………………」」
そのエルフリアの言葉を合図に勝負は開始された。
――時を遡ること二時間前
「レイ様の隣に立てるために私、とても頑張ったんですからね!」
エルフリアは少し頬を紅潮させながら言った。
そんな言葉に俺は戸惑いを隠せない。
「あ、ありがとうって言えばいいのかな? ま、まぁ俺は嬉しいよ!」
「本当ですか!? 頑張った甲斐がありました!」
エルフリアは可愛らしいガッツポーズをして喜びをあらわにしている。
先ほどの長く語ってくれたエルフリアの今までの話を簡単にまとめよう。
エルフリアは俺に痛めつけられたのがとても嬉しかったようで、また俺に会いたいと思っていたそうだ。
しかし、俺は勇者だった。どんどん深層に潜っていき、ダンジョンで出会える確率はほぼゼロに等しくなったのだ。
そこでエルフリアは考えた。魔族の中で一番取れたら俺とまた会えるのではないか? それも魔王として仲良くできるのではないかと。
ダンジョンに住んでいたエルフリアはダンジョンを出て魔族の国へと戻った。
そこからは話さなくても分かるだろう。
族内を上に速攻で駆け上がり、一年で族長へと上りつめた。
更には魔族の中でも弱いと言われていた妖精族をエルフへと進化させたのだ。
その行動理由さえまともであれば賞賛待ったなしの業績である。
「それでレイ様は何故このようなところに? もしかして私に会いに来てくれたんで――」
「木材の資源について話をしたくてね」
このままエルフリアに自由に話をさせていたら運命の赤い糸とか何とか言いそうだ。
そのため、俺は遮るように本題を口にする。
すると、エルフリアは俺に向けていたファンのような表情から、族長としての表情に戻る。
「レイ様。私たちは魔王の傘下に入っていないのは先ほども言いましたよね?」
「…………あぁ」
エルフリア自身が魔王の座を狙うのであればそれは当然の行動だ。
だが、魔王の傘下に入ってなければ魔王の庇護がないということ。真っ先に人族に狙われるとも言い換えれる。
「それは私の手で魔王を叩きのめしたいというのもあります」
「え、えぇ…………」
そのエルフリアの言葉にハデスはドン引きしているような様子を見せた。
別に自称魔王なのだからそこまで演技をしなくてもいいのではなかろうか。
まぁ何事にも本気になることは良いことではあるが。
「でも、一番の理由はこの森を守りたいからです」
「…………」
その真剣な眼差しに俺は何も言葉を返すことが出来なかった。
何故ならその言葉からは絶対に曲げられない信念が感じられたからだ。
先ほどの魔族の国がほぼ金属だけで建てられていた理由も分かる。
大森林を管轄しているエルフが木材を提供していなかったためだ。
となると俺も木材を使うのは難しいだろう。
ちっ。ログハウス風の家でごろごろするのが夢だったのになぁ。
だが、こうやって心の中で愚痴を吐いたって何も変わらない。
「そうか…………無理を言ってすまなかっ――」
「しかし、相手がレイ様となると話は違います」
「「…………え?」」
エルフリアは豊胸である胸を張ってドヤ顔をして言った。
そんな態度の変化に俺とハデスは唖然としてしまう。
特にハデスは顎が地面に着いてしまうのではないか。そんなレベルで口を開けていた。
「そうですね…………決闘をしましょう! それで私を十分痛めつけられたらレイ様の提案を出来る限り受け入れます!」
「アハハ…………分かった」
私に勝ったら。ではなく、痛めつけたらという条件に俺は苦笑いをすることしか出来なかった。
だが、こんな好条件をのまない理由はない。
――こうして今に至るのだ。
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