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眠れぬ夜の過ごし方
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「っ、あ…!」
下半身を貫かれる衝撃で声があがる。お世辞にも上手いとは言えない行為に、運がなかったなと頭の片隅で考える余裕すら生まれていた。
今日は中々に重たい仕事だったせいか酷く疲弊していて、本来ならば直ぐにでも寝てしまいたかった。しかし、己の弱さなのか……精神的にキていたのか、仮眠すら取ることが出来ず気付けば夜の街に繰り出していた。
「ふ…ンっ……!」
腰を掴んで激しく揺さぶられ、思考が一気に引き戻される。
ろくに前戯もせず始まった行為は、ただ腰を振るだけの獣のそれと同じ。余程経験が無いのか、はたまたこれで上手いと思っているのかは分からないが、冗談にも気持ち良いとは呼べる代物ではなかった。
(これじゃ、1人でしてる方がマシ……だったかなぁ)
此方を気に掛ける事もない一方的なセックス。いっそ早く終わればいいのにと思うが、中々相手は果てる気配がない……
(しかも遅漏かぁ……)
本当に、今日はついていないと思って諦める他はない。
『抱きたい』時もあれば『抱かれたい』と感じる事もある。中々に難儀なもので、それは日によって違う。
ただ性欲を満たしたいだけならば、女を買うか誘えば済む話だが、抱かれたいとなるとそうも言っていられない。何故、同じ男に抱かれたいと感じてしまうのかはわからないが、時折無性に求めてしまう。
(こんなの、家族には絶対知られちゃダメだ)
自分だけ『違った』のに、同じだと受け入れて認めてくれているあの大事な場所。それを壊すわけにはいかない。
(だから、俺は同じになれなかったのかも)
兄も、父も母も……きっとこんな淫らでふしだらな事はしていないだろう。無論、下の兄妹だってそうだ。
(あぁ、ダメだ……)
気が滅入っている時は良くないことばかり考えてしまう。ならば、いっそ何者考えられなくなれば良いのだ。幸い今目の前に丁度良い相手がいるではないか。
「ね……、もっと……何も考えられないくらい、激しくしてくれない?」
挑発的に誘うように男を締め付ければ、それに乗った男は体位を変えて更に深く奧を突いてきた。
「ひっ、あ!!ンンっ!ぁ……ふ、っ!」
四つん這いで尻を高く上げられ、上半身がベッドに沈み込むような体位で、男の陰茎が激しく抽挿を繰り返す。肌のぶつかり合う音と、男の息遣い、自分の喘ぎ声が部屋に響いてとても卑猥だった。
(このまま、この行為に溺れよう)
そうすれば、きっと明日にはまたいつも通りに振る舞えるだろう。後輩や同僚たちと他愛ない話で笑えるだろう。
そうやって自分を納得させ、何も実を結ばないこの淫らな行為に溺れていった。
◆
「……痕は付けるなって言ったのになぁ」
翌朝、自室で身支度を整えている時に気付いた、明け方まで情事に更け込んでいた証。一夜限りだと言うのに、自分の所有物にでもしたつもりなのだろうか?
「隠れるから良いけど、見えないようにしとかないと……」
絆創膏で首の痕を隠し、髪を整える。
(大丈夫、今日も俺はいつも通り)
鏡に写る己の姿はいつも変わらない。大丈夫だと、そう言い聞かせて……いつも通りの今日を始める為に、自室のドアを開けた。
下半身を貫かれる衝撃で声があがる。お世辞にも上手いとは言えない行為に、運がなかったなと頭の片隅で考える余裕すら生まれていた。
今日は中々に重たい仕事だったせいか酷く疲弊していて、本来ならば直ぐにでも寝てしまいたかった。しかし、己の弱さなのか……精神的にキていたのか、仮眠すら取ることが出来ず気付けば夜の街に繰り出していた。
「ふ…ンっ……!」
腰を掴んで激しく揺さぶられ、思考が一気に引き戻される。
ろくに前戯もせず始まった行為は、ただ腰を振るだけの獣のそれと同じ。余程経験が無いのか、はたまたこれで上手いと思っているのかは分からないが、冗談にも気持ち良いとは呼べる代物ではなかった。
(これじゃ、1人でしてる方がマシ……だったかなぁ)
此方を気に掛ける事もない一方的なセックス。いっそ早く終わればいいのにと思うが、中々相手は果てる気配がない……
(しかも遅漏かぁ……)
本当に、今日はついていないと思って諦める他はない。
『抱きたい』時もあれば『抱かれたい』と感じる事もある。中々に難儀なもので、それは日によって違う。
ただ性欲を満たしたいだけならば、女を買うか誘えば済む話だが、抱かれたいとなるとそうも言っていられない。何故、同じ男に抱かれたいと感じてしまうのかはわからないが、時折無性に求めてしまう。
(こんなの、家族には絶対知られちゃダメだ)
自分だけ『違った』のに、同じだと受け入れて認めてくれているあの大事な場所。それを壊すわけにはいかない。
(だから、俺は同じになれなかったのかも)
兄も、父も母も……きっとこんな淫らでふしだらな事はしていないだろう。無論、下の兄妹だってそうだ。
(あぁ、ダメだ……)
気が滅入っている時は良くないことばかり考えてしまう。ならば、いっそ何者考えられなくなれば良いのだ。幸い今目の前に丁度良い相手がいるではないか。
「ね……、もっと……何も考えられないくらい、激しくしてくれない?」
挑発的に誘うように男を締め付ければ、それに乗った男は体位を変えて更に深く奧を突いてきた。
「ひっ、あ!!ンンっ!ぁ……ふ、っ!」
四つん這いで尻を高く上げられ、上半身がベッドに沈み込むような体位で、男の陰茎が激しく抽挿を繰り返す。肌のぶつかり合う音と、男の息遣い、自分の喘ぎ声が部屋に響いてとても卑猥だった。
(このまま、この行為に溺れよう)
そうすれば、きっと明日にはまたいつも通りに振る舞えるだろう。後輩や同僚たちと他愛ない話で笑えるだろう。
そうやって自分を納得させ、何も実を結ばないこの淫らな行為に溺れていった。
◆
「……痕は付けるなって言ったのになぁ」
翌朝、自室で身支度を整えている時に気付いた、明け方まで情事に更け込んでいた証。一夜限りだと言うのに、自分の所有物にでもしたつもりなのだろうか?
「隠れるから良いけど、見えないようにしとかないと……」
絆創膏で首の痕を隠し、髪を整える。
(大丈夫、今日も俺はいつも通り)
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