君を救う恩返し

AKA

文字の大きさ
上 下
6 / 10

翌日の朝

しおりを挟む
キッチンからか物音がして、俺は起きた。
「んっ、んあ~」
俺は体を伸ばした。
音がしている方を見てみると、何か準備をしている真矢の姿があった。
「何してるんだ」
「えっ、昨日言ったじゃないですか」
「ん~、あぁ確かにあったな。朝ご飯を作るとかそんな感じだったよな」
「そうですよ。どうしたら忘れるんですか」
呆れ顔で言うわれる。まぁ、確かに自分でコンビニまで買いに行ったのに忘れてるって結構やばくないか。
俺が衝撃を受けていると、真矢がため息を吐いた。
「これからの人生がお先真っ暗ですね」
「おい、俺にはまだ……まだ救いようはあるぞ」
「いや、冗談で言うったのに、そんなに間に受けなくてもいいんですよ」
「冗談でもそういう事言うなよ。信じそうになっただろう」
「いやいや、信じてましたよね。後、おはようのチュウとか忘れてますよ」
そういうって真矢はほっぺを向けてくる。
ここで反応してしまうのは、真矢の思う壺なので、ちょっと近づけばあっちが何か反応してくれるだろうと思い真矢の元に向かう。
徐々に近づいてっても反応がないまま目の前に来てしまった。
「どうしたんですか。するんですよね。目を閉じていた方がいいですか」
ニヤッとして煽られていることはよく分かった。
「クッ」
「あれれ、出来ないんですか」
「むっ」
「度胸がないですね」
「そうだよ、俺は度胸がないよ」
「もう、少し度胸つけないと女子にモテませんよ」
「いいよ。モテなくても一人で生きていくからね」
「寂しい生き方ですね」
「そうだな。ところで料理の方は大丈夫なのか」
「へっ、やばいヤバい早く取らないと焦げちゃうよ」
「おい、大丈夫か」
「大丈夫大丈夫、心配しないであっちに座ってていいですよ」
「大丈夫そうなら、先に座って待ってるからな」
「オーケー大丈夫だよ。もう少しで出来るから待っててね。そういえば、顔洗ってないでしょ。先に顔洗ってきたらどうですか」
「そういえばそうだね。先に洗ってくるよ」
洗面所に向かい顔を洗う。昨日から特に変わって無さそうでよかった。ただなんか母さんみたいな感じだな。
顔を洗って戻り座る。
「どう、目覚めた?」
「覚めたよ」
「それはよかったです」
「よっと」そんな掛け声と共に皿に綺麗に乗っけていた。
自信過剰なだけではなかったんだな。うまく出来てるじゃないか。料理が出来ない俺が言ってもなぁ、っとなんで自分でツッコミしてるんだ。
「隼人さんがリクエストしたベーコンエッグですよ」
真矢がそう言い皿を持って来て並べて行く。
では、どうぞお食べ下さい。
「じゃあ、いただきます」
見た感じすごく美味しそうだ。食品サンプルみたいに整った形をしている。
醤油をかけ、目玉焼きの黄身の周りを切っていく。
「なっ何をしているんですか」
えっ、何その顔もしかして俺引かれてる。
「いやぁ、最初黄身を食べて、その次に白身を食べたりしない」
「何ですか。その食べ方は、普通はそんな食べ方はしないと思いますが」
「へぇ~、そうなんだ」
もくもくと自分のやり方で切り分け、黄身を口に運んだ瞬間。
「我の料理力をとくと味わうが良い」
食べた瞬間にそういうもんだから少しむせてしまった。
「かはっ、急に、どうした、ゴホッ」
「大丈夫ですか。急にどうしたはこっちのセリフなんですけど、そんなにむせてどうしたんですか」
他人事のように言うっているがお前が元凶なんだよ。と思いつつ水を飲んだ。
「お前さぁ、急にらしくないさ厨二病発言やめろよ」
「すみません。なんか急に言いたくなったんですよ。あるじゃないですか、ね」
「いや、ねぇよ。まったくやめてくれよったく」
「ところで、味はどうですか」
「普通に美味しいけど」
「それはよかったです」
箸を進めて食べ始めると
「お兄ちゃんの口にあってよかった」
「ゴホッ」
水がない。水を汲みに行き、飲んだ。
また、やられた。今度は萌え声というような声で言うわれてしまった。これでは誰でもこうなってしまうだろう。
俺は席に戻って口を開いた。
「お前なぁ」
「いや、厨二病が駄目ならこれはいいかなって」
「いいわけないだろう」
そんな会話をしながら真矢は笑っていた。昨日より表情が柔らかくなったんじゃないかと思う。このまま諦めてくれると嬉しいんだが。何気に俺も楽しくなっていた。久しぶりに誰かと食べたからかもしれない。
そんな時間は楽しいほど早く過ぎて行くもので、すっかり家を出て行く時間になってしまった。
「そういえば、今日学校ですよね」
「そうだけど」
「そのままの格好で大丈夫ですか」
「いや、着替えるけど」
そう言って、時間を確認する。
「うわ、もう出ないと」
「えっ、そんな時間何ですか。大丈夫ですか」
「大丈夫大丈夫」
「そうですか」
「俺が帰って来るまで適当に過ごしていいから」
「分かりました」
そんな事を言いつつ着替えをした。
「じゃあ、行ってくるわ」
急いで靴を履いてドアに手を掛け開けて出た。
「ぃっ……」
ドアが閉まる時、何か行っていた気がする。
帰って来たら聞いてみるか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

昇降口のショート・ロマンス

堀尾さよ
青春
エブリスタにも掲載中。 「言いたかった」「言えなかった」淡い淡い片思い。

【休載中】銀世界を筆は今日も

Noel.R
青春
時々、言葉を失う瞬間がある。 それでも、いや寧ろそんな時ほど、真っ白な世界は色付くんだ。 色褪せない青春を、かけがえのない思い出を、忘れられない過去を、その身に刻み込むために。 溢れ出す奔流を止める術を僕は知らない。だから流れの中を、ゆっくりと... 音楽が、喜びが、悲しみが、苦しみが、怒りが、願いが、交錯する。 救いを求め彷徨う青年達の物語。 その先に、何が聴こえる…? 現実世界との平行世界だと思って読んでいただければと思います。 時系列はある程度現実と被らせていますが、実際の出来事とは関係ございません。 不定期連載です。感想お待ちしております。

ひみつの休息

篠崎春菜
青春
 「女性の添い寝フレンドを募集しています」。SNSのそんな投稿から始まった、二人の高校生の話。

息絶える瞬間の詩のように

有沢真尋
青春
 海辺の田舎町で、若手アーティストを招聘した芸術祭が開催されることに。  ある絵を見て以来、うまく「自分の絵」がかけなくなっていた女子高生・香雅里(かがり)は、招聘アーティストの名前に「あの絵のひと」を見つけ、どうしても会いたいと思い詰める。  だけど、現れた日本画家・有島はとてつもなくガラの悪い青年で…… ※喫煙描写があります。苦手な方はご注意ください。 表紙イラスト:あっきコタロウさま (https://note.com/and_dance_waltz/m/mb4b5e1433059)

〖完結〗インディアン・サマー -spring-

月波結
青春
大学生ハルの恋人は、一卵性双生児の母親同士から生まれた従兄弟のアキ、高校3年生。 ハルは悩み事があるけれど、大事な時期であり、年下でもあるアキに悩み事を相談できずにいる。 そんなある日、ハルは家を出て、街でカウンセラーのキョウジという男に助けられる。キョウジは神社の息子だが子供の頃の夢を叶えて今はカウンセラーをしている。 問題解決まで、彼の小さくて古いアパートにいてもいいというキョウジ。 信じてもいいのかな、と思いつつ、素直になれないハル。 放任主義を装うハルの母。 ハルの両親は離婚して、ハルは母親に引き取られた。なんだか馴染まない新しいマンションにいた日々。 心の中のもやもやが溜まる一方だったのだが、キョウジと過ごすうちに⋯⋯。 姉妹編に『インディアン・サマー -autumn-』があります。時系列的にはそちらが先ですが、spring単体でも楽しめると思います。よろしくお願いします。

ヘルツを彼女に合わせたら

高津すぐり
青春
大好きなラジオ番組「R-MIX」を聴こうとした高校生のフクチは、パーソナリティが突然、若い少女に代わった事に衝撃を受ける。謎の新人パーソナリティ・ハルカ、彼女の正体は一体? ラジオが好きな省エネ男子高校生と、ラジオスターを目指す女子高校生の青春物語。

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

牛と呼ばれた娘   苦しみながら痩せる本

Hiroko
青春
思い付きで書き綴ったものです。 最後まで書けなかったらごめんなさい。 物語や登場人物は架空のものですが、ダイエットは私が二か月で10キロ落とすのに成功した方法を書いていきます。

処理中です...