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「──おい、起きろ」
午後二時。予め決められていた時刻となり、ルヴィスがアンナの私室を訪れ扉をノックするも返事はなく。致し方なくベッドルームまで足を運ぶとこの有り様だ。
「ったく……おい、シナブル起きろ」
こんな小声で、弟が起きるとは思えない。肩を揺すろうにも、その腕はぴたりと密着したアンナの身体に回されており、彼を起こすとアンナも起こしてしまう可能性が高い。この状況でそれは流石に避けておきたい所であった。仕方無しにシナブルの耳を摘み、ぐいと引き上げる。
「ん……」
ゆるりと瞼が持ち上がり、腕の中で眠る裸のアンナに驚いたのだろう、ビクリと肩が跳ね上がった。
「起きたか」
「……あに、うえ」
「二時だぞ」
「もう少し……休ませて差し上げてくれ。兄上が出ていったあと、もう一回やったんだ。疲れていらっしゃる」
「そう言われてもな。陛下の命だ、悪いが……」
と、ここで、アンナが目覚めたのか、もぞもぞと身を捩り出す。ルヴィスは足早にベッドの足元に移動して背を向け、シナブルは体を強張らせた。
「…………やっ……! なっ……な、なんで……あっ……そっか……今、何時なの」
「十四時です」
「もうそんな時間なの」
一旦身を起こし、自身の状態を確かめる。乱れたベッドに皺の寄ったシーツ。赤い跡の残る胸元に、じんわりと熱い身体。
「アンナ様。お時間です、よろしくお願い致します」
「……わかった」
足元で背を向けるルヴィスの声に、アンナは顔を上げる。揃って起き上がったシナブルの剥き出しの身体に視線を投げ、瞳を見つめた。
「姫……」
吸い寄せられるように、互いの唇が重なる。最早躊躇いも恥じらいもなく、欲し、求め合う二つの赤。
「んッ……あ……あっ……!」
とすん、とベッドに押し倒されたアンナの身体に、シナブルはすぐに覆い被さった。そっと血色の髪に触れ、己の下半身を見下ろす。
「寝覚めで……すみません、準備はもう出来てはいるのですが」
「いいわよ、すぐ挿れても」
「しかし、その、ぜ……前戯もなしに」
「……構わないわ」
その表情を目の当たりにしたシナブルは、ごくりと唾を飲み干す。恥じらいながらも「早くよこせ」と求める主の、なんと愛らしいことか。
(たっぷりと焦らしたあと……貪るように食べてしまいたいというのに……我慢ができないのは、お互い様なのか)
開いた股にスッと身を入れると陰茎を握り、じっとりと濡れた膣口に亀頭を押し当てる。押し当てたままくるくると円を描くと、ひくひくとアンナの腰が浮き上がる。
「あッ……あッ……あッ………お願いっ、シナブル」
「何なりと」
「早くっ……お願いッ……!」
「もう少し」
かくかくと震える太腿を、ぐいと押し上げ舌を這わす。びくりと跳ね上がったのは、内腿のほくろに触れたせいか。
「はぁッ……んっ……んっ……んぐッ……」
口元を覆い、これ以上言葉で求めるまいと指を噛み堪えるアンナは、堪らずシナブルの腕を掴む。首を横に振ると、再び「お願い」と声を上げた。
「お願いっ、お願いっ、お願いッ……もう無理……!」
「アンナ様……」
「お願いッ……シナブル、お願いもうだめ無理なの早くちょうだい……! ん……あ゙……あッあッあ゙ぁ……!」
「アンナ……」
「あッ……シナブル……!」
刹那、ぐい、と押し込まれ一体となる身体。互いが互いを求め、何度も名を呼んだ。背徳的だと己を責めれば責めるほど、快楽に溺れてゆく。
「あぁッ……あッ……あんッ、あッ……!」
「はぁッ……はぁッ……すみません、失礼します」
「えっ、あ、ちょ……やッあ、あッあッあっああッだめこれ、ぇ……!」
ぐっと足を上に仕上げ、奥の奥にまで辿り着き、密着し、膣口から尻の穴まで、すべてを曝け出す。このような姿、 婚約者にすら見られたことはなかった。
「ぐ、う、ッ……あ、ぁ゙、お゙ぐ、おく、奥ッだめっ、だめっ、だめぇッあ゙ッあ゙ッ、い、い゙……い゙く、ィ゙く、ぅッイクッ!! はッ……あ……あ……!」
「まだ……もっと……」
「あ、あ、あッ……はぁッ……シナブル……」
一度抜き取り体勢を変え、後ろから覆い被さる。顎先に触れ、くいと持ち上げると唇を吸い合い、指を絡ませた。
「ん……ん……ん゙ぅッ!」
「失礼します」
重なっていた唇が離れると、二人の間に銀の雫が糸を引いた。ぽたりと落下した雫は、アンナの手を抑え込むシナブルの手の甲を濡らした。
「あ……はぁッ……あ、ん、あ、あぁッ……!」
括れた腰を掴み、暴れぬよう抑えつけ腰を打ち付ける。やわやわとした尻に触れ、撫で、揉み、背中に手を這わせてゆく。
「あぁッ……うッ、あ゙ッ……! なか、きもち、い、いッ……きもちいい……」
「……気持ちいいですか」
「う、う、ゔ、んッ……!」
「姫……姫ッ……!」
「あ゙、あ゙ッあ゙ッ待っ……あああッ、待って、だめ、だめ、だめえ……い……い゙ッ、イっちゃう……!」
「すみません、動きます」
「はッ……はッ……はッ……あ゙……!」
挿入したままアンナの肩を掴み、後ろへぐいと引き寄せる。膝立ちのアンナはシナブルの足の間に挟まれたまま、打ち付けられる彼の腰に身を委ねた。
「待っ……て、これ、だめ……やッ……ちょっと……やめっ……!」
「申し訳ありません……」
「あッ、あ……ああッ! あッ! あぁんッ! ああッ! あッ! あ゙ッあ゙ッ! あぁんッ!」
「はぁッ…………はぁッ…………アンナ……」
「や゙、あ゙、だ、め゙、だめ゙ッあ゙ッ! あ゙、あ゙ッ! い゙、い、いッ、イク、ぅ゙、あ゙……イクッ、イクッイクッ、イクッ! イクから、ぁ、や、だめ゙、だめ、イッちゃう……!!」
達しても尚打ち付けられる腰に、悲鳴にも似たアンナの矯声がこだまする。身を伏せ抑えつけて隠そうにも、拘束されたまま、もっと啼けと言わんばかりに交情は激しさを増してゆく。
「ああッあッあッ……やッ……あ、……やだあッ……やだ、また、イク、むりッ、これ、あ゙……あ、あ、あ゙ッ、イクッ、イク、シナ、ブル、すき……すき……すき……すき……! あ゙、あ゙、あ゙ッ、イクぅッ……!!」
「ッ……あ、あ゙……、ぅ……!!」
ぴたりと止んだ音に、ルヴィスはサッと振り返り足を動かす。息の荒いまま膝を付きアンナの背にしなだれたままのシナブルと、尻を突き上げたままのアンナの姿に思わず全身がカッと熱を孕む。
「……おい、シナブル」
「はぁッ……う……」
ぬ──、とアンナの膣から抜き取られた陰茎から、真っ白な精液が滴る。その場にがくりと座り込むと、シナブルはアンナの尻を舐め、何度も吸い付いた。
「……確認させて頂きました」
「はぁっ……はぁ……ルヴィス、ごめ、ん……」
「謝らないで下さい。では、失礼致します……また夜の十時に参ります」
ルヴィスが去るのを待たず、シナブルはアンナに覆い被さる。背中に何度も唇を推し当て、両の胸に手を伸ばし、そっと触れ続けた。
「はぁッ……はッ……アンナ、様……」
「んッ……」
「愛して、います……愛しています」
「ありがとう……すき……大好きだからお願い、許して……」
「言ったではありませんか、十分ですと。共に……堕ちると」
「うん……」
うなじを吸い上げ、遂には唇が重なる。求め合った二人の腕が絡まり、向かい合い、引き寄せ合い、それが激しさを増す頃、ルヴィスが部屋を出て行った。
アンナはベッドの上でくるりと身を翻し、シナブルと向かい合う。真っ直ぐな瞳に吸い寄せられてしまう。
「んッ……」
再び重なる唇の間から、荒い息が漏れる。互いの体に腕を回し、求め合い──絡まってゆく。
「アンナ……」
乱れた血色の髪をそっと撫で、頬を包みこんで唇を落とす。優しく胸を愛撫すると、くぐもった声に欲情してしまう。
「……っ」
「どうしたの?」
こめかみを抑え、ごろりと横たわるシナブルの頬に、アンナの細い指が触れる。鼻がくっつきそうな距離だというのに、互いに恥ずかしがる様子もない。
「すみません……姫が……その、姫の全てが……お美しすぎて……昂っていたものが落ち着いてきた途端、目眩が」
「何、言ってんの」
「申し訳ありません……」
「……そんなの、あたしだって」
「何を……」
「ここも、ここも……」
明るい星空のようなシナブルの髪に触れ、指で梳く。 耳朶に唇を落とし甘咬みすると、首筋をべろりと舐められ、小さな声が漏れた。
「髪は……褒められ飽きてるでしょ?」
「……いえ、そんなこと」
「こんなに綺麗なのに?」
この髪色は、シナブルの父譲りであったが、元を辿れば二人の祖父由来のものであった。陽の光を受けてきらきらと輝く髪は、見ていて飽きることがない。
「ここも、好き。綺麗……」
スッと触れるのは先程口に含んだ耳朶だった。彼の 耳殻をまじまじと見つめたのは今日が初めてのことであったが、整ったその形をつい目で追ってしまっていた。
「ここも、ここも」
薄い唇に触れて頬を撫で、首筋を撫で喉仏に触れた。二の腕に唇を落とし、厚い胸板に鼻を擦り付け、空いた両手は腹から腰、更にはその下へと伸びる。
「ここも、ここも、全部……綺麗よ。声だって……」
「声?」
「だって、あなたのあんな声……聴いたこともない……」
思い出すだけで全身が熱くなってゆく。伏せていた視線を持ち上げると、すかさず唇が下りてきた。
「んッ……ん、はッ……」
「……同じですよ」
「ん……」
「思い出すだけで、クラクラします」
「やだ……」
「姫?」
「見ないで」
「何故?」
このままでは気が触れてしまうと、小声で呟き背を向けた。駄目だと気持ちを抑え込むように、アンナはベッドの上で膝を抱え身を丸めた。
「お腹……痛いの。少し休むから、先にシャワー使って」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫……しすぎると……いつもこうだから」
「温めます」
「ううん……大丈夫よ」
「わりました。すみません、外で一服してきます」
「……うん」
起き上がるとローブを身に付け、壁にかけてあったフロックコートの内ポケットから煙草を取り出した。ベッドの右手の、バルコニーへと続く大窓から外に出ると、前髪をかき上げベンチに腰を下ろし、火をつける。
「フーッ…………はぁ……」
気が触れてしまいそうなのは、こちらも同じであった。エリックが仕事を終え、帰国するまで一体何日かかるのか。
(予定では二週間だったが……二週間もの間、毎日……三度もこれを……)
「……無茶だ」
頭を抱え、足元に視線を落とす。手の中の煙草を燃やし尽くすと、シナブルはゆるりと立ち上がる。ガラス戸を開けると、アンナの頭がゆっくりと動いた。
「……シナブル、来て」
「はい」
「もっと、来て」
「はい……」
ベッドに滑り込むと、アンナの白い指が耳朶に伸びてきた。「来て」と 強請られるのでぴったりと身体を寄せると、耳殻にちゅ、と下りてくる唇。
「やっぱり……ここ、好き」
「ありがとうございます。……お具合は?」
「もう少し休むわ……。ねえ、少し話をしてもいい?」
「はい」
シナブルの耳殻に触れながら、アンナはぽつり、ぽつりと言葉を紡ぐ。
「……もう、きっと…………あたしたち……元の関係には戻れない。自信がないもの……」
「姫……」
「ごめんなさい……! 弱い……自分が弱くて、醜くて、吐き気がする! こんなことになって……エリックに何て言えばいいの……!」
アンナの目からはつらつらと涙が零れ落ちる。堪らえようと唇を噛みしめるが、意味をなさない。
「俺も、自信がありません。意志の弱い男で、申し訳ありません」
「あたしが……あたしが悪いの。父上に逆らっていれば、こんなことには……!」
「しかし、それですと姫は……!」
「わかってる……ああもう、どうしたらいいの……!」
頭を抱えて縮こまると、大きな手が伸びてきた。顔を上げる間もなく、堅い胸に抱き寄せられてしまう。
「今は……ゆっくり休まれて下さい。眠られるまで、傍におります」
「ん……」
「一旦自室に戻ります。その後、 執務室で仕事をしておりますので、何かありましたらお呼び付け下さい」
「うん……」
互いの額に唇を落とし、アンナは瞼を下ろした。すぐに聞こえてきた寝息を確認すると、シナブルは名残惜しげにその場を後にした。
午後二時。予め決められていた時刻となり、ルヴィスがアンナの私室を訪れ扉をノックするも返事はなく。致し方なくベッドルームまで足を運ぶとこの有り様だ。
「ったく……おい、シナブル起きろ」
こんな小声で、弟が起きるとは思えない。肩を揺すろうにも、その腕はぴたりと密着したアンナの身体に回されており、彼を起こすとアンナも起こしてしまう可能性が高い。この状況でそれは流石に避けておきたい所であった。仕方無しにシナブルの耳を摘み、ぐいと引き上げる。
「ん……」
ゆるりと瞼が持ち上がり、腕の中で眠る裸のアンナに驚いたのだろう、ビクリと肩が跳ね上がった。
「起きたか」
「……あに、うえ」
「二時だぞ」
「もう少し……休ませて差し上げてくれ。兄上が出ていったあと、もう一回やったんだ。疲れていらっしゃる」
「そう言われてもな。陛下の命だ、悪いが……」
と、ここで、アンナが目覚めたのか、もぞもぞと身を捩り出す。ルヴィスは足早にベッドの足元に移動して背を向け、シナブルは体を強張らせた。
「…………やっ……! なっ……な、なんで……あっ……そっか……今、何時なの」
「十四時です」
「もうそんな時間なの」
一旦身を起こし、自身の状態を確かめる。乱れたベッドに皺の寄ったシーツ。赤い跡の残る胸元に、じんわりと熱い身体。
「アンナ様。お時間です、よろしくお願い致します」
「……わかった」
足元で背を向けるルヴィスの声に、アンナは顔を上げる。揃って起き上がったシナブルの剥き出しの身体に視線を投げ、瞳を見つめた。
「姫……」
吸い寄せられるように、互いの唇が重なる。最早躊躇いも恥じらいもなく、欲し、求め合う二つの赤。
「んッ……あ……あっ……!」
とすん、とベッドに押し倒されたアンナの身体に、シナブルはすぐに覆い被さった。そっと血色の髪に触れ、己の下半身を見下ろす。
「寝覚めで……すみません、準備はもう出来てはいるのですが」
「いいわよ、すぐ挿れても」
「しかし、その、ぜ……前戯もなしに」
「……構わないわ」
その表情を目の当たりにしたシナブルは、ごくりと唾を飲み干す。恥じらいながらも「早くよこせ」と求める主の、なんと愛らしいことか。
(たっぷりと焦らしたあと……貪るように食べてしまいたいというのに……我慢ができないのは、お互い様なのか)
開いた股にスッと身を入れると陰茎を握り、じっとりと濡れた膣口に亀頭を押し当てる。押し当てたままくるくると円を描くと、ひくひくとアンナの腰が浮き上がる。
「あッ……あッ……あッ………お願いっ、シナブル」
「何なりと」
「早くっ……お願いッ……!」
「もう少し」
かくかくと震える太腿を、ぐいと押し上げ舌を這わす。びくりと跳ね上がったのは、内腿のほくろに触れたせいか。
「はぁッ……んっ……んっ……んぐッ……」
口元を覆い、これ以上言葉で求めるまいと指を噛み堪えるアンナは、堪らずシナブルの腕を掴む。首を横に振ると、再び「お願い」と声を上げた。
「お願いっ、お願いっ、お願いッ……もう無理……!」
「アンナ様……」
「お願いッ……シナブル、お願いもうだめ無理なの早くちょうだい……! ん……あ゙……あッあッあ゙ぁ……!」
「アンナ……」
「あッ……シナブル……!」
刹那、ぐい、と押し込まれ一体となる身体。互いが互いを求め、何度も名を呼んだ。背徳的だと己を責めれば責めるほど、快楽に溺れてゆく。
「あぁッ……あッ……あんッ、あッ……!」
「はぁッ……はぁッ……すみません、失礼します」
「えっ、あ、ちょ……やッあ、あッあッあっああッだめこれ、ぇ……!」
ぐっと足を上に仕上げ、奥の奥にまで辿り着き、密着し、膣口から尻の穴まで、すべてを曝け出す。このような姿、 婚約者にすら見られたことはなかった。
「ぐ、う、ッ……あ、ぁ゙、お゙ぐ、おく、奥ッだめっ、だめっ、だめぇッあ゙ッあ゙ッ、い、い゙……い゙く、ィ゙く、ぅッイクッ!! はッ……あ……あ……!」
「まだ……もっと……」
「あ、あ、あッ……はぁッ……シナブル……」
一度抜き取り体勢を変え、後ろから覆い被さる。顎先に触れ、くいと持ち上げると唇を吸い合い、指を絡ませた。
「ん……ん……ん゙ぅッ!」
「失礼します」
重なっていた唇が離れると、二人の間に銀の雫が糸を引いた。ぽたりと落下した雫は、アンナの手を抑え込むシナブルの手の甲を濡らした。
「あ……はぁッ……あ、ん、あ、あぁッ……!」
括れた腰を掴み、暴れぬよう抑えつけ腰を打ち付ける。やわやわとした尻に触れ、撫で、揉み、背中に手を這わせてゆく。
「あぁッ……うッ、あ゙ッ……! なか、きもち、い、いッ……きもちいい……」
「……気持ちいいですか」
「う、う、ゔ、んッ……!」
「姫……姫ッ……!」
「あ゙、あ゙ッあ゙ッ待っ……あああッ、待って、だめ、だめ、だめえ……い……い゙ッ、イっちゃう……!」
「すみません、動きます」
「はッ……はッ……はッ……あ゙……!」
挿入したままアンナの肩を掴み、後ろへぐいと引き寄せる。膝立ちのアンナはシナブルの足の間に挟まれたまま、打ち付けられる彼の腰に身を委ねた。
「待っ……て、これ、だめ……やッ……ちょっと……やめっ……!」
「申し訳ありません……」
「あッ、あ……ああッ! あッ! あぁんッ! ああッ! あッ! あ゙ッあ゙ッ! あぁんッ!」
「はぁッ…………はぁッ…………アンナ……」
「や゙、あ゙、だ、め゙、だめ゙ッあ゙ッ! あ゙、あ゙ッ! い゙、い、いッ、イク、ぅ゙、あ゙……イクッ、イクッイクッ、イクッ! イクから、ぁ、や、だめ゙、だめ、イッちゃう……!!」
達しても尚打ち付けられる腰に、悲鳴にも似たアンナの矯声がこだまする。身を伏せ抑えつけて隠そうにも、拘束されたまま、もっと啼けと言わんばかりに交情は激しさを増してゆく。
「ああッあッあッ……やッ……あ、……やだあッ……やだ、また、イク、むりッ、これ、あ゙……あ、あ、あ゙ッ、イクッ、イク、シナ、ブル、すき……すき……すき……すき……! あ゙、あ゙、あ゙ッ、イクぅッ……!!」
「ッ……あ、あ゙……、ぅ……!!」
ぴたりと止んだ音に、ルヴィスはサッと振り返り足を動かす。息の荒いまま膝を付きアンナの背にしなだれたままのシナブルと、尻を突き上げたままのアンナの姿に思わず全身がカッと熱を孕む。
「……おい、シナブル」
「はぁッ……う……」
ぬ──、とアンナの膣から抜き取られた陰茎から、真っ白な精液が滴る。その場にがくりと座り込むと、シナブルはアンナの尻を舐め、何度も吸い付いた。
「……確認させて頂きました」
「はぁっ……はぁ……ルヴィス、ごめ、ん……」
「謝らないで下さい。では、失礼致します……また夜の十時に参ります」
ルヴィスが去るのを待たず、シナブルはアンナに覆い被さる。背中に何度も唇を推し当て、両の胸に手を伸ばし、そっと触れ続けた。
「はぁッ……はッ……アンナ、様……」
「んッ……」
「愛して、います……愛しています」
「ありがとう……すき……大好きだからお願い、許して……」
「言ったではありませんか、十分ですと。共に……堕ちると」
「うん……」
うなじを吸い上げ、遂には唇が重なる。求め合った二人の腕が絡まり、向かい合い、引き寄せ合い、それが激しさを増す頃、ルヴィスが部屋を出て行った。
アンナはベッドの上でくるりと身を翻し、シナブルと向かい合う。真っ直ぐな瞳に吸い寄せられてしまう。
「んッ……」
再び重なる唇の間から、荒い息が漏れる。互いの体に腕を回し、求め合い──絡まってゆく。
「アンナ……」
乱れた血色の髪をそっと撫で、頬を包みこんで唇を落とす。優しく胸を愛撫すると、くぐもった声に欲情してしまう。
「……っ」
「どうしたの?」
こめかみを抑え、ごろりと横たわるシナブルの頬に、アンナの細い指が触れる。鼻がくっつきそうな距離だというのに、互いに恥ずかしがる様子もない。
「すみません……姫が……その、姫の全てが……お美しすぎて……昂っていたものが落ち着いてきた途端、目眩が」
「何、言ってんの」
「申し訳ありません……」
「……そんなの、あたしだって」
「何を……」
「ここも、ここも……」
明るい星空のようなシナブルの髪に触れ、指で梳く。 耳朶に唇を落とし甘咬みすると、首筋をべろりと舐められ、小さな声が漏れた。
「髪は……褒められ飽きてるでしょ?」
「……いえ、そんなこと」
「こんなに綺麗なのに?」
この髪色は、シナブルの父譲りであったが、元を辿れば二人の祖父由来のものであった。陽の光を受けてきらきらと輝く髪は、見ていて飽きることがない。
「ここも、好き。綺麗……」
スッと触れるのは先程口に含んだ耳朶だった。彼の 耳殻をまじまじと見つめたのは今日が初めてのことであったが、整ったその形をつい目で追ってしまっていた。
「ここも、ここも」
薄い唇に触れて頬を撫で、首筋を撫で喉仏に触れた。二の腕に唇を落とし、厚い胸板に鼻を擦り付け、空いた両手は腹から腰、更にはその下へと伸びる。
「ここも、ここも、全部……綺麗よ。声だって……」
「声?」
「だって、あなたのあんな声……聴いたこともない……」
思い出すだけで全身が熱くなってゆく。伏せていた視線を持ち上げると、すかさず唇が下りてきた。
「んッ……ん、はッ……」
「……同じですよ」
「ん……」
「思い出すだけで、クラクラします」
「やだ……」
「姫?」
「見ないで」
「何故?」
このままでは気が触れてしまうと、小声で呟き背を向けた。駄目だと気持ちを抑え込むように、アンナはベッドの上で膝を抱え身を丸めた。
「お腹……痛いの。少し休むから、先にシャワー使って」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫……しすぎると……いつもこうだから」
「温めます」
「ううん……大丈夫よ」
「わりました。すみません、外で一服してきます」
「……うん」
起き上がるとローブを身に付け、壁にかけてあったフロックコートの内ポケットから煙草を取り出した。ベッドの右手の、バルコニーへと続く大窓から外に出ると、前髪をかき上げベンチに腰を下ろし、火をつける。
「フーッ…………はぁ……」
気が触れてしまいそうなのは、こちらも同じであった。エリックが仕事を終え、帰国するまで一体何日かかるのか。
(予定では二週間だったが……二週間もの間、毎日……三度もこれを……)
「……無茶だ」
頭を抱え、足元に視線を落とす。手の中の煙草を燃やし尽くすと、シナブルはゆるりと立ち上がる。ガラス戸を開けると、アンナの頭がゆっくりと動いた。
「……シナブル、来て」
「はい」
「もっと、来て」
「はい……」
ベッドに滑り込むと、アンナの白い指が耳朶に伸びてきた。「来て」と 強請られるのでぴったりと身体を寄せると、耳殻にちゅ、と下りてくる唇。
「やっぱり……ここ、好き」
「ありがとうございます。……お具合は?」
「もう少し休むわ……。ねえ、少し話をしてもいい?」
「はい」
シナブルの耳殻に触れながら、アンナはぽつり、ぽつりと言葉を紡ぐ。
「……もう、きっと…………あたしたち……元の関係には戻れない。自信がないもの……」
「姫……」
「ごめんなさい……! 弱い……自分が弱くて、醜くて、吐き気がする! こんなことになって……エリックに何て言えばいいの……!」
アンナの目からはつらつらと涙が零れ落ちる。堪らえようと唇を噛みしめるが、意味をなさない。
「俺も、自信がありません。意志の弱い男で、申し訳ありません」
「あたしが……あたしが悪いの。父上に逆らっていれば、こんなことには……!」
「しかし、それですと姫は……!」
「わかってる……ああもう、どうしたらいいの……!」
頭を抱えて縮こまると、大きな手が伸びてきた。顔を上げる間もなく、堅い胸に抱き寄せられてしまう。
「今は……ゆっくり休まれて下さい。眠られるまで、傍におります」
「ん……」
「一旦自室に戻ります。その後、 執務室で仕事をしておりますので、何かありましたらお呼び付け下さい」
「うん……」
互いの額に唇を落とし、アンナは瞼を下ろした。すぐに聞こえてきた寝息を確認すると、シナブルは名残惜しげにその場を後にした。
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バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
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