【完結しました】こんなに好きになるつもりなんて、なかったのに~彼とわたしの愛欲にまみれた日々~

こうしき

文字の大きさ
上 下
36 / 61

36/肉欲の宴(1)★

しおりを挟む



 舞踏会で身に付けるような、派手な紫色の仮面を顔に纏い現れたのは、スラッとしたスリムな男だった。檀上はないが、照明が落とされタキシード姿の彼が仰々しく照らし出されると、数名の女性達が黄色い歓声を上げた。

「皆様こんばんは。ようこそお越し下さいました。私、主催者のたっくんと申します」

 たっくん、と名乗った仮面男は、その仮面を取り払う。男の俺から見てもなかなかに整った顔立ちだった。

「ドリンク、良いものが揃っていたでしょう? 今夜は思う存分お楽しみ下さい。会場内での撮影、それに連絡先の交換は禁止です、それと──」


(……なんだこいつ)


 スタンドマイクですらすらと喋るたっくんは、ジャケットを脱ぎ蝶ネクタイに手を掛け──手早く脱衣を済ませてゆく。下着一枚になったところで、コート姿の美夜川が彼の隣に颯爽と現れた。

「オープニングセックスと銘打って、相手をこの子にお願いしました。ああそこ、文句言わない言わない。後でおいで、ね?」

「……オープニングセックス?」

 眉をひそめた俺の指を、瞳美が後ろから絡め取った。照明は落とされたままなので彼女の表情を見てとることは出来なかった。

 下着一枚姿のたっくんは、すぐ傍の一段高い所にあるキングサイズのベッドへと美夜川を誘う。檀上は五十センチ近くあるようで、会場の何処に居ても二人の姿がはっきりと見えそうだ。
 ベッドの手前で踊るようにコートを脱いだ美夜川が纏っていたのは真っ赤なワンピースタイプのサンタ服。大きな胸は手前に迫り出し、彼女がくるくると回る度に揺れ動く。

「……おい、瞳美。これ……」
「何?」
「なんだよ、これ」
「言ったじゃない、アツアツパーティーって。セックスして身体アツアツ~ってね!」

 耳は瞳美の方を向いているが、視線は美夜川から離せなかった。彼女はほたるの友人だ、見るべきではないとわかっているのに、どうしようも出来ない。

 たっくんが美夜川の胸元の──赤い布地に手を掛ける。そろりそろりと下にずらしてゆくと、現れたのはピンと立ち上がった小さな乳首。

「おおぉっ……!」

 会場内に野太い歓声が上がる。それと同時に檀上の目の前まで数名の男達が引き寄せられた。それでも尚、俺の立ち位置からは美夜川の素肌が丸見えだった。

「でかっ……」
「あれとは一度ヤりてえな……」

 そんな欲にまみれた汚い声を浴びながら、たっくんの手により美夜川のサンタ服はどんどん引き下げられてゆく。腰の部分で一気に足元へ落下した赤い服の下に、彼女は下着を身に付けていなかった。全裸になった彼女の唇に、未だ下着姿のたっくんがそっと吸い付く。

『んッ……ん……』

 二人を取り囲んでいた男の一人が、スタンドマイクを二人の間に設置する。ベッドに押し倒された美夜川の喘ぐ声を鮮明に拾い上げ、会場内の隅々までその声は反響する。

『うッ……うッ……ああそこッ……! あ、あ……!』

 激しく指で犯される彼女の股の隣に、マイクがぴたりと押し当てられる。くちゅくちゅと愛液が絡まる厭らしい音に、我慢できなくなった男数名が自分の股間に手を伸ばす。


(ああ……やべえな、くっそ……)


 言わずもがな。俺の下半身もガチガチの臨戦態勢。だって仕方がないだろ。ほたるの友達──それもこんなに巨乳美人が目の前で素っ裸で喘いでいるんだ。興奮しないわけが──……。


(あ……)


『ん、んッぅ……あぁッ……!』


 挿入を果たし、獣のように美夜川を犯すたっくんの荒い息──それに彼女の悦ぶ声をマイクは鮮明に拾い上げる。短いその行為が終わるおよそ十分程度の間に脱衣を開始する者、多数有り。目の前に裸の男女がどんどん増えてゆく。

『うッ……うッ……あぁ……イクッ……!!』
『俺も……出すよ?』
『うんッ……うんッ……』
『ッ……あぁッイクッ……!!』

 互いに達した二人を包み込むのは割れんばかりの大喝采。起き上がれない美夜川をそのままに、立ち上がったたっくんはマイクを手に隣のベッドへと移動する。

「はぁっ……それでは皆様、存分にお楽しみ下さい……!」

 彼が言い放った刹那、仰向けに倒れたままの美夜川に四人の男が飛びかかった。そのうち彼女に覆い被さったのは一人で、早々に彼女の足を広げ腰を振り始める。

『んぐぅッ……む、んッんぃッ……ひッぅ……』

 捨てられたマイクが美夜川のか細い嬌声を拾い上げ、またしても会場には大音量の嬌声が響き渡る。残った男三人のうち一人は彼女の頭側へ腰を下ろし、己の性器を彼女の口に押込み、後の二人は別の女を捕まえ、無理矢理に身体を絡ませ始めた。


 たっくん側はどうかと目をやれば、こちらも四人の女と取り込み中。ベッドに腰掛け二人の女とキスを交わしながら、足元には前のめりになって彼の性器を舐め回す女が二人。尻を突き出した彼女達の後ろには、本人達が気付いてないのを良いことに、不意を突き覆い被る男達の姿。

「ひっ……瞳美っ……お前どういうつもりで……!」
「だって桃哉君、クリスマスイブに一人で寂しかったんじゃないの? 色んな女の子とセックスし放題なんだよ? 嬉しいでしょ乱交パーティー!」
「嬉しくねえよ胸糞悪い!」

 こんな、誰が誰ともわからぬ肉欲の場で女を抱くなんて想像するだけで吐き気がする。俺にはほたるが────……いや、フラれたんだったか…………けれど。

「えぇ~。せっかく桃哉君とエッチ出来ると思ってたのに」

 言いながら瞳美は脱衣を済ませてしまった。ただの飲み友達だと思っていた彼女の裸は、想像以上に美しかった。

「ヤろうよ、ねえ~! エッチしたい~っ!」
「ふざけんな!俺は帰るぞ!」
「なんでよつまんないっ! 私、綺麗でしょ?」
「身体はな! 顔は好みじゃねえよ!」
「ひっどおい!」

 会場全体が熱気に包まれていた。話し声などほとんど聞こえない。目が合った瞬間、その場で抱き合いキスを交わし床に身を倒す者ばかりだ。

「あぁッあんッ!あッ……あぁ~ッ!」

 絨毯の上で喘ぐ女の横を通り過ぎ、出口へと向かう。ここは気持ちが悪い。多くの女の喘ぐ声に身体は興奮しているというのに、心は冷々と凍えるようだ。この会場には愛がない。欲だらけで気持ちの悪い──掃き溜めのような場所だ。

 ──俺が会場を突っ切ったその時だった。

「いやっ!離して!帰してよ!」

 左方約三メートル先に、二人の男に無理矢理脱がされる女が悲鳴を上げていた。どうやら俺と同様、事情を知らずにここへ来た奴らしい。俺が足を止めている間にも彼女のシャツは破かれ、白い肌が露出してゆく。

「お兄さん、お兄さん」

 そんな俺の背後に、二人の女が張りつく。やはりというか既に全裸の二人は、遠慮なしに俺の股間に手を伸ばしズボンの上から撫で回す。

「二対一、どーう?」
「美味しいと思うけど?」
「……悪い」

 女二人を振り払うと、俺は泣き喚く女へと足を向ける。駆け寄ると上半身をひん剥かれた彼女は、男二人に胸を舐め回され諦めたように目を閉じていた。

「お前ら、あっちにいいのが二人いるぞ」

 俺が今来た方向を指差すと、顔を上げた男二人はくるりと首を後方に捻る。その隙に半裸の女を抱き寄せて横抱きにし、出入り口を目指して全力で駆け出した。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...