【完結しました】こんなに好きになるつもりなんて、なかったのに~彼とわたしの愛欲にまみれた日々~

こうしき

文字の大きさ
上 下
15 / 61

15/快楽の余韻★

しおりを挟む
俺は何度目の挑戦だろうか…こっそりとアスランとリオルの侍従部屋を借りながらパウンドケーキを作っていた。

「うん、上手く焼けた!」

火加減が難しくて何度も失敗をしながら数日間で焼き上げた3本のパウンドケーキは、ブランデーの入ったもの、ナッツの入ったもの、バナナの入ったものだ。

安心しながら型ごと取り出すと、冷ますために放置する。

「アスランもリオルもありがとう…やっと焼けたよ」

形も失敗せずに、後は冷めたら切ってから味見をして持っていこう。
美味しいと言ってくれたらいいのだけれど。
セラフィリーアは汚してしまったキッチンを片付けながら、楽しそうに笑った。



「アイヴィス様、今日こそは綺麗に焼けました」

15時の時計が鳴るのを確認してから、普段ハワードが用意するワゴンを押しながら執務室に入る。
ちょうど決裁が終わったのか、アイヴィスが手にしていた玉璽を箱に戻した所だった。

「お茶にしましょう?」

こうでもしなければアイヴィスは休息しないことを知っている。
人が足りないのだろうか…不思議に思いながらセラフィリーアはティーセットの準備をしていく。

「アイヴィス様、こちらにいらしてください。パウンドケーキですが、私が作りましたがあまり甘くない筈ですから」

既に切り分けて貰っているパウンドケーキをそれぞれ一欠ずつ皿に寄せてテーブルに置く。
なかなか立ち上がらないアイヴィスの腕にそっと触れて立ち上がらせるとソファーに座らせる。
その隣にちょこんとセラフィリーアも座ってアイヴィスを見上げた。

「アイヴィス様、あーん?」

パウンドケーキを一口大にすると、そっと差し出す。
アイヴィスはそれを口にするとゆっくり咀嚼してから嚥下した。

「美味しい…ですね」

「ふふ、甘さを抑えてブランデーをいれているものです。アイヴィス様の口に合うかと思って…」

「セラはもういたたきましたか?食べていないなら一緒にいただきましょう?」

手にしていたフォークをそっと取られ、アイヴィスがパウンドケーキを切り分けると、バナナのパウンドケーキを差し出された。

「ん、ありがとうございます」

モグモグとすると紅茶を口に入れる。
優しい甘さが口のなかにひろがった。

「アイヴィス様…」

優しい甘さを感じて欲しくて、チュッとその唇にキスをする。
ふわりとブランデーの香りがした。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

大好きな幼馴染と結婚した夜

clayclay
恋愛
架空の国、アーケディア国でのお話。幼馴染との初めての夜。 前作の両親から生まれたエイミーと、その幼馴染のお話です。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

処理中です...