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9/交わる身体(2)★
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◆
「はッ……はッ、んッ、ぁ、ああ、あぅ……ッ……」
俺の腰の脇のシーツを握り締めたほたるは、快感からなのだろう、眉をきつく寄せて、口は半開きになっている。ゆったりと腰を振る度に、甘い声が部屋中に響き渡る。
「とおや、きもち、い……い?」
「……うん」
「そっかあ」
どうしよう、ほたるの顔がめちゃくちゃエロい。自分の語彙力のなさに笑ってしまいそうになるが、女を抱くのに語彙力なんて必要ないだろう。
あとはなんだ……声、そう、声だ。部屋中に反響するような、甲高い嬌声。それに、この蕩けるような表情。例えるならば、泣き出す一歩前のようなそんな顔だ。
「んッ……あ、とおや、とおや……ねえ、ねえ……」
「なに?」
「イッ、あッ、あ……イッて、いい? イッても、いい?」
「ああ」
「んッ……」
上半身を前に倒したほたるは、俺の唇をでたらめに塞いだ。手の届く位置に胸が下りてきたので、乳首を摘まんで軽く愛撫を施す。
「んーッ……! ん、あああ、あ、あッ、やッやあぁッ!」
離れ離れになる唇。ほたるは、俺の耳元に顔を埋め、そのまま俺の体に腕を回し、先程よりも更に腰の動きを早めて──早めて、そして。
「あ──ッ! あ、イッ、あ、んッ……だめッイッ、イクッ……! あぁッ……!!」
達し、果てたのか、動きが完全に止まる。子猫のように俺の耳元で小さく声を漏らし、呼吸を整えると腰を浮かせ、俺の隣にごろんと転がった。
「イッた?」
「…………うん」
手首で目元を隠し、だらしなく開いた口から荒い息が漏れる。そんな彼女の足を開き、今度は俺が跨がった。
「……ここ、か?」
「……違う、もう少し、下……窪んでる、とこ」
「ここか」
温かく、吸い込まれそうな窪みへ己の陰茎を押し当てる。ぐいぐいと先端を擦り付けると、ほたるの腰がもぞもぞと暴れだした。
「あ……とおや、待って、待って……や、あッ……」
「駄目なのか?」
「だめじゃ、ないけど……」
「けど、なに?」
「い、今イッたばっかりだから、ちょっと待って、待っ……あ、あ、とおや、いや、いや……ッ」
潤んだ瞳で、顔を左右にふるふると振るほたるの肩を、無理矢理ベッドに押し付ける。右手で陰茎の根元を掴み、ぐっと腰を沈めていくと、先程体感した、あの温かな──ほたるの膣に、俺は──。
「────ッ!!」
「や、ああああぁぁッ!!」
「ハァッ……ハァッ……ハァッ……なんだ、これ……」
体位が違うからだろうか、それともほたるの反応のせいだろうか。気持ちが良いことに変わりはないが、全く違う感覚だ。
悲鳴のような嬌声を上げたほたるの顔は歪み、目の端から涙が溢れる。不味い、痛かったのだろうか。
「痛いか? 止めるか?」
ほたるは無言で首を横に振る。「ごめん」と小さく呟くと、涙を拭き俺の腕にしがみついた。
「きもち、いいだけなの、だから……」
「動いても……いいか?」
「……うん」
初めてのことだというのに、体は勝手に動き出す。ゆっくりと──次第に早く腰を振ると、ほたるの声もそれに伴い大きさを増してゆく。手を何処に置いたらいいのかわからず、迷った挙げ句俺はほたるの腰をがしりと掴む。
「とおや……すごい……い゛、きもち、いいッ……!」
「俺も、うッ……あ、きもちい……ッ……!」
ほたるの腰を掴み安定感を得た体に──足に力が籠る。ずん、と彼女の最奥まで突き上げ──引抜き──突き上げると、それにつられてパイプベッドがギシギシと軋んだ。
「あッ……あ、あ、あ、……や、あッ! ゃ、ああッ……すごい、い……すごいッ……!!」
「ッ……あ、出る……!!」
ものの一分にも満たない、短い交情だった。初めてにしては保ったほうなのかもしれない。
俺は肘をつき、そのままほたるに覆い被さると、そっと唇を重ね髪を撫でた。
「しちゃった……」
「だな」
「……うん」
「嫌だったか?」
「……ううん」
果てた陰茎をほたるから抜くと、ゆるりと彼女が起き上がった。ベッドサイドのティッシュを数枚取ると、役割を果たし終えたコンドームへと手を伸ばす。
「これをね、こうやって……こう」
「ほう……」
「痛くなかった?」
「大丈夫だ」
ティッシュにくるんでゴミ箱へ。万が一にでも親父に見つからぬよう、上から更にティッシュで覆い隠す。
「はぁ……疲れた……」
「ちょっと……とおや、ごろんするのは良いけど、服着てベッドから下りて。じゃなきゃ……」
壁掛け時計に目をやると、十八時五十分。不味い、親父が戻ってくるまでに服を着ておかないと──けれど、俺は。
「ちょ、とおや、何……」
「ほたる、好きだ……大好きだ」
「……んッ!」
下着に手を伸ばしていたほたるの腕を絡めとり、思い切り抱きすくめた。唇と唇を重ね合わせ、舌を絡ませる。
「ふ……ッ、んッ……ぁ……ぅ……んッ……」
腕の中のほたるは、俺を払い除けようともぞもぞと身を捩っている。わかっているんだ、お前の言いたいことは──けれど。
「ほたる」
「……ッはぁ……ッ、とおや、時間、ヤバいから……やめて」
「もう一回、したい」
「はあ?」
時計を見る。十八時五十五分。わかっている。もう間もなく、親父が戻ってくるということは。けれど俺はもう一度──いや、二度でも三度でも──ほたると交わりたくて仕方がなかった。
「馬鹿言わないで。無理だって……おじ様、戻ってきちゃうから」
「じゃあ……後で……一旦親父と帰って、後でまた来ていいか?」
「それは……」
ほたるの目が宙を彷徨う。無茶を言っていることはわかっていた。けど、どうしても──どうしてもという欲望にを抑えることが出来ない。
──次の瞬間。
──トゥルルルルル──トゥルルルルル。
「で、電話?」
「……俺か」
「ちょっと、電話してる時間なんて!」
脱ぎ散らかしたスラックスのポケットを漁る。危ない……左側のポケットには親父の鞄から掠め取った印鑑が入っているんだった。
右側のポケットをからスマートフォンを取り出す。画面には「親父」という文字、それに携帯番号。
「親父からだ」
ほたるにそう告げると、俺は通話画面をタップした。
「はッ……はッ、んッ、ぁ、ああ、あぅ……ッ……」
俺の腰の脇のシーツを握り締めたほたるは、快感からなのだろう、眉をきつく寄せて、口は半開きになっている。ゆったりと腰を振る度に、甘い声が部屋中に響き渡る。
「とおや、きもち、い……い?」
「……うん」
「そっかあ」
どうしよう、ほたるの顔がめちゃくちゃエロい。自分の語彙力のなさに笑ってしまいそうになるが、女を抱くのに語彙力なんて必要ないだろう。
あとはなんだ……声、そう、声だ。部屋中に反響するような、甲高い嬌声。それに、この蕩けるような表情。例えるならば、泣き出す一歩前のようなそんな顔だ。
「んッ……あ、とおや、とおや……ねえ、ねえ……」
「なに?」
「イッ、あッ、あ……イッて、いい? イッても、いい?」
「ああ」
「んッ……」
上半身を前に倒したほたるは、俺の唇をでたらめに塞いだ。手の届く位置に胸が下りてきたので、乳首を摘まんで軽く愛撫を施す。
「んーッ……! ん、あああ、あ、あッ、やッやあぁッ!」
離れ離れになる唇。ほたるは、俺の耳元に顔を埋め、そのまま俺の体に腕を回し、先程よりも更に腰の動きを早めて──早めて、そして。
「あ──ッ! あ、イッ、あ、んッ……だめッイッ、イクッ……! あぁッ……!!」
達し、果てたのか、動きが完全に止まる。子猫のように俺の耳元で小さく声を漏らし、呼吸を整えると腰を浮かせ、俺の隣にごろんと転がった。
「イッた?」
「…………うん」
手首で目元を隠し、だらしなく開いた口から荒い息が漏れる。そんな彼女の足を開き、今度は俺が跨がった。
「……ここ、か?」
「……違う、もう少し、下……窪んでる、とこ」
「ここか」
温かく、吸い込まれそうな窪みへ己の陰茎を押し当てる。ぐいぐいと先端を擦り付けると、ほたるの腰がもぞもぞと暴れだした。
「あ……とおや、待って、待って……や、あッ……」
「駄目なのか?」
「だめじゃ、ないけど……」
「けど、なに?」
「い、今イッたばっかりだから、ちょっと待って、待っ……あ、あ、とおや、いや、いや……ッ」
潤んだ瞳で、顔を左右にふるふると振るほたるの肩を、無理矢理ベッドに押し付ける。右手で陰茎の根元を掴み、ぐっと腰を沈めていくと、先程体感した、あの温かな──ほたるの膣に、俺は──。
「────ッ!!」
「や、ああああぁぁッ!!」
「ハァッ……ハァッ……ハァッ……なんだ、これ……」
体位が違うからだろうか、それともほたるの反応のせいだろうか。気持ちが良いことに変わりはないが、全く違う感覚だ。
悲鳴のような嬌声を上げたほたるの顔は歪み、目の端から涙が溢れる。不味い、痛かったのだろうか。
「痛いか? 止めるか?」
ほたるは無言で首を横に振る。「ごめん」と小さく呟くと、涙を拭き俺の腕にしがみついた。
「きもち、いいだけなの、だから……」
「動いても……いいか?」
「……うん」
初めてのことだというのに、体は勝手に動き出す。ゆっくりと──次第に早く腰を振ると、ほたるの声もそれに伴い大きさを増してゆく。手を何処に置いたらいいのかわからず、迷った挙げ句俺はほたるの腰をがしりと掴む。
「とおや……すごい……い゛、きもち、いいッ……!」
「俺も、うッ……あ、きもちい……ッ……!」
ほたるの腰を掴み安定感を得た体に──足に力が籠る。ずん、と彼女の最奥まで突き上げ──引抜き──突き上げると、それにつられてパイプベッドがギシギシと軋んだ。
「あッ……あ、あ、あ、……や、あッ! ゃ、ああッ……すごい、い……すごいッ……!!」
「ッ……あ、出る……!!」
ものの一分にも満たない、短い交情だった。初めてにしては保ったほうなのかもしれない。
俺は肘をつき、そのままほたるに覆い被さると、そっと唇を重ね髪を撫でた。
「しちゃった……」
「だな」
「……うん」
「嫌だったか?」
「……ううん」
果てた陰茎をほたるから抜くと、ゆるりと彼女が起き上がった。ベッドサイドのティッシュを数枚取ると、役割を果たし終えたコンドームへと手を伸ばす。
「これをね、こうやって……こう」
「ほう……」
「痛くなかった?」
「大丈夫だ」
ティッシュにくるんでゴミ箱へ。万が一にでも親父に見つからぬよう、上から更にティッシュで覆い隠す。
「はぁ……疲れた……」
「ちょっと……とおや、ごろんするのは良いけど、服着てベッドから下りて。じゃなきゃ……」
壁掛け時計に目をやると、十八時五十分。不味い、親父が戻ってくるまでに服を着ておかないと──けれど、俺は。
「ちょ、とおや、何……」
「ほたる、好きだ……大好きだ」
「……んッ!」
下着に手を伸ばしていたほたるの腕を絡めとり、思い切り抱きすくめた。唇と唇を重ね合わせ、舌を絡ませる。
「ふ……ッ、んッ……ぁ……ぅ……んッ……」
腕の中のほたるは、俺を払い除けようともぞもぞと身を捩っている。わかっているんだ、お前の言いたいことは──けれど。
「ほたる」
「……ッはぁ……ッ、とおや、時間、ヤバいから……やめて」
「もう一回、したい」
「はあ?」
時計を見る。十八時五十五分。わかっている。もう間もなく、親父が戻ってくるということは。けれど俺はもう一度──いや、二度でも三度でも──ほたると交わりたくて仕方がなかった。
「馬鹿言わないで。無理だって……おじ様、戻ってきちゃうから」
「じゃあ……後で……一旦親父と帰って、後でまた来ていいか?」
「それは……」
ほたるの目が宙を彷徨う。無茶を言っていることはわかっていた。けど、どうしても──どうしてもという欲望にを抑えることが出来ない。
──次の瞬間。
──トゥルルルルル──トゥルルルルル。
「で、電話?」
「……俺か」
「ちょっと、電話してる時間なんて!」
脱ぎ散らかしたスラックスのポケットを漁る。危ない……左側のポケットには親父の鞄から掠め取った印鑑が入っているんだった。
右側のポケットをからスマートフォンを取り出す。画面には「親父」という文字、それに携帯番号。
「親父からだ」
ほたるにそう告げると、俺は通話画面をタップした。
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