いつも穏やかなセックスをする彼 (元執事)が、酒に酔うとドS王子に変貌して大変だった夜

こうしき

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11 この子ってフェラ上手いん?

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 わたしがシャワーを浴び終えベッドで寛いでいる所へ、同じくシャワーを終えた柊悟くんが足早に戻ってきたかと思えば間髪いれず押し倒された。

 彼曰く、「ごめん、まだ有り余ってて」とのことだった。

 わたしとしても、明日仕事が休みなのであればシャワーの後に身を重ねても……と思わなかった訳ではない。行為の前に飲んだらアレの効果はまだ残っているような気がしていたし、何よりもっと彼と繋がっていたかった。

 だから……拒むことなく、時間を忘れて彼と愛し合った。

 シーツを取り替え、抱き合って眠りについたのは日付が変わるギリギリ。翌朝もなんとか寝坊せずに起きることが出来たが、珍しいことに柊悟くんは寝坊気味。いつもわたしより三十分程度早起きをして朝食の準備をしてくれているのだが、わたしが目覚めた時にはまだ素肌を晒した状態で、心地良さそうに寝息を立てていた。その寝顔が愛おしくて、頬を緩ませていつまでも眺めてしまう。


(朝ごはんの準備しなきゃ……)


 そっと布団から抜け出し、シャワーを浴びて脱衣場を出ると、ベッドから起き上がりぼんやりと時計を見つめる柊悟くんと目が合った。

「起きた?」
「ごめん……寝坊して」
「大丈夫だよ、時間は余裕あるし。わたし、ご飯準備しとくからシャワーを浴びてきたら?」
「ありがとう」

 立ち上がった柊悟くんが、ふらりふらりと寄ってくる。そうかと思えば全裸のまま下着姿のわたしに抱きつきキスをねだった。

「駄目だよ、止まれなくなっちゃう」
「うん……」
「ちょっと、柊悟くん……」
「じゃあ……夜に、いい?」

 艶っぽい声が耳許を撫でる。彼のこの、誘う時の色気たっぷりの声が──わたしは堪らなく好きなのだ。彼が行為の最中、達するときの声色とはまた違うこの声で「今すぐ欲しい」と言われれば、100%拒むことが出来ない。

「……うん」
「じゃあ、シャワー浴びてくる」
「いってらっしゃい……」


 朝食を作り、二人揃ってそれを頂く。身支度を済ませ玄関に向かうと、先に出勤するわたしを柊悟くんが見送りに来てくれる。

「じゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい。気を付けてね」

 いつものように手を振って、扉を開けた──次の瞬間。

「ほたるうううぅっ!!」

「き……樹李さん!?」

 隣の部屋の玄関扉が勢いよく開き、中から部屋着姿の樹李さんが飛び出してきた。疲れきった顔をしているのに目は爛々と輝き、正直嫌な予感しかしなかった。

「ほたるっ……ありがとう、ありがとう」
「は……はあ……」
「昨夜のエッチの雰囲気からして、飲んでくれたんだよな?」
「ええ……まあ」
「色々聞きたいんだけど、仕事だろ? 時間あるときに詳しく!! 立石君にもよくお礼言っといてくれよな!」
「呼びましたか?」

 ひょっこりと玄関から姿を現した柊悟くんを見て、わたしと樹李さんの声が重なった。柊悟くんに詰め寄った樹李さんは、「ありがとう!」と連呼しながら手を擦り合わせ、彼に頭を下げ始めた。

「いや~!君は本当にいい男だね!」
「えっと……?」
「ほたるが悦ぶセックスをするのが、ほんと、上手いよな!どうやってるんだい?」
「どう、と言われましても……」

 顎に手を当て、考え始める柊悟くん。嫌な予感がする。けれどわたしには時間がない。

「聞くが、ほたるは、乳首を触られるのが好きか?」
「好きですね。触るというか、指で摘まんで……こう、くりくりとされるのが好きなようで」
「ほうほう。あと、前々から思ってたけど、この子ってフェラ上手いん?」
「上手ですよ。ほたる自身も好きみたいですし」
「柊悟くんっ!!しゃべりすぎっ!!」

 大きな声で怒鳴ると、彼もハッとして自分の口許を抑える。

「ごめん……樹李さんに聞かれると……なんだろう、口が滑るというか」
「それ、わかるけどやめて!」
「立石君、ひょっとしてほたるも飲んだ?」
「はい、半分強ほど」
「どうだった?」
「いつもより、エッチなほたるに仕上がりました」
「柊悟くんっ!!」

 このまま彼が樹李さんに捕まったままだと、あれやこれやと恥ずかしいことを全て喋ってしまいそうだ。かといってわたしは仕事に向かわなければ間に合わない時間になりつつあった。

「ほたる、もう恥ずかしがることなんてないじゃないか。あたしが何年、お前のエッチを盗み聴いてると思ってるの」
「そう……ですけどっ!」
「あたし個人としてはさぁ、ほたるがイク時に『イッちゃう、イッちゃう!』って言うの、めちゃくちゃ好きだぜ?超絶可愛い。聴いてるあたしまで濡れちまう」
「あれは最高に可愛いですよね」
「気が合うねえ!!」

 駄目だこいつら、本当に駄目だ。せめて廊下で話すのはやめてくれと伝えると、樹李さんは自室の玄関に柊悟くんを招き入れようと扉を開く。

「心配すんなほたる!彼に手を出すほどあたしも馬鹿じゃないから!」
「ほたる、遅刻しちゃうよ?俺なら大丈夫だから」

 にこやかな笑みを向ける二人を、これ以上怒鳴る気にもなれない。仕方なくわたしは階段へと足を向け、振り返りながら控えめに叫ぶ。 

「…………ッ!! もうっ、柊悟くん、喋り過ぎたら駄目だよ!時間も気にしてよ?」
「はい、わかってます。行ってらっしゃい」
「樹李さんも!お手柔らかにお願いします!!」
「へいへ~い」

 手を振る二人の顔に、罪悪感の色など皆無で。きっとこれからあれやこれやと話に花が咲くのであろうが、もはやわたしに止める術などないのだ。

 階段を駆け下り、愛車へと向かう。早く帰宅したい気持ちと、帰るのが恐ろしい気持ちが、胸のなかで犇(ひし)めき合っていた。



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