いつも穏やかなセックスをする彼 (元執事)が、酒に酔うとドS王子に変貌して大変だった夜

2 ちゃんと我慢できた？

　涙でボヤけた視界には、上下する自分の胸──その先には着衣したままの、酒に飲まれた柊悟くん。

「ま……だ？」
「そう、まだイかせてあげない」

　舌の絡む激しい口づけの後、彼はわたしの鎖骨、それに胸元や乳房に音を立てながら唇を落とす。跡が残りそうなほどの激しい口づけが終わると、今度は胸の先端に食らいつき、何度も吸い上げた。

「柊悟君くん、ちょ……痛い……」
「痛くない」
「い……痛いよ」

　何度も吸い上げられたそこは、その存在を誇張するかのようにピンと立ちあがっている。そこでようやく両手が解放され、自由になるがそれは彼も同じこと。横に流れた乳房を丹念に撫で回しては揉みあげられている。

「……あッ！」
「こうして欲しいんでしょ」
「あ……う、あッ……！」

　ズボンの上からでも分かるくらい勃たち上がった彼の陰茎が、わたしの股の間にぐいぐいと押し当てられている。恐らくはショーツ越しにもわかるくらい濡れていであろう──にも関わらず、彼はしつこいくらいにそれを押し当てる。

「ズボン、濡れ……ちゃうよ」
「いいよ」
「んッ、はッあ……あッ……」
「欲しいの？」
「ほしッ……ほしい……」

　わたしの願いを受け入れる気になったのか、膝立ちの柊悟くんはベルトのバックルを外してズボンを膝まで下げた。上半身はカッターシャツ、下半身は下着で膝立のまま、仰向けに倒れたわたしを見下ろしまじまじと見つめている。

「欲しいの？」
「ほしい……」

　カッターシャツをはらりと捲り上げると、彼は口の端を引き上げてにやりと笑う。ぴったりと張り付いた下着の真ん中で、立ち上がっているのは彼の陰茎。触れずともわかる、がちがちに固まった大きな、男らしいそれはわたしの身体をいつもとろとろに溶かしてくれる。

「しゅう、ご、くん？」
「どうしようかな」

　下着を少しだけ引き下げると、彼はわたしの上に覆い被さった。カッターシャツ越しに勃ちあがったそれに釘付けになってしまう。

「ほたる、見すぎ」
「ご……ごめ──」
「そんなに欲しいの？」

　言って、彼の手は己の性器へと伸びる。手をそっと上下に動かし始めると、更に固さを増してゆく気配のそれ。徐々に速度を早めていき、彼の顔が快感で歪み始める。

「あ……あ、あ、あッ……ほ……ほたる、ほた──ほたるっ！」
「んんッ！！」

　ぐい、と頭を掴まれ、無理矢理に引き起こされる。上半身が起き上がると同時に、わたしの口の中に彼の陰茎が押し込まれた。その間にも彼の反対側の手は更に速度を上げて竿をしごく。

「あ……ああッ……もっと、うッ……あ、あ……！」
「んーッ！　ん、んッ……ん！」
「う、あ……あ、イクッ……！！」
「んッ！！」

　絶頂に達すると同時に、彼の陰茎が口から引き抜かれる。先端から飛び出した精液がわたしの髪と肩に飛び散り、受け止められなかったものはぽたぽたとシーツにまで落下した。

「はぁ……はぁ……ッ」
「……柊悟くん？」
「……欲しかった？」
「う…………」

　力尽き、前のめりに倒れた柊悟くんに押し倒される形になった。わたしの上で息荒く踞る彼は、残っていた精液をわたしの腹の上に絞り出す。まだ勢いのあるそれは、腹を飛び越え胸にまで届いた。

「膣なかに、出して欲しかった？」
「……いじわる」
「泣くほど欲しかったの？」
「泣いてないもん」

　瞳に溜まった涙はまだ零れてはいないはず。ふわりと寄ってきた彼の唇が、わたしの目の端から溜まった涙を吸い上げる。

「シャワー浴びてくる」
「大丈夫？　お酒がまだ──」
「大丈夫、大丈夫」

　床に転がっていたスマートフォンを拾い上げて操作し、ベッドサイドのチェストの上に置くと、柊悟くんはバスルームへと向かう。そんな彼の足取りは、先程に比べればしっかりとしている。まだふわりふわりと頼りない風ではあるが、あれだけ会話が出来るのであれば大丈夫なのだろう。


　浴室のドアがばたんと閉まると、わたしは枕元のティッシュに手を伸ばす。髪に付着した彼の精液は流石に綺麗に取ることが出来なかった。後でシャワーを浴びるしかないだろう。体に付着したものも拭うと、ティッシュを広げてそれを見つめた。

「…………」

　あそこまでされておいて、絶頂に達することなく放置されるなんて。わたしの下半身は先程の彼の指、それに性器を思い出し熱を孕む。もらい損ねたものを求めて股の間がむずむずと、落ち着かない。


（……だめ）


　彼がシャワーを終えるまで待たなくては。


（でも……）


　──我慢が出来ない。

「……柊悟くん」

　むず痒い下半身──その秘部に、そっと手を伸ばす。ショーツの紐を解き解放された膣の入口に中指で触れると、ねっとりと指に絡むものがあった。


（ごめんなさい。少し……だけ、だから）


　足をぐい、と広げて仰向けに寝転ぶ。指をつつ、と上に這わせ自身の蕾に触れると、想像以上にぷっくりと膨れ上がっていることに羞恥心が沸いて出た。指に絡んだ愛液を蕾に纏わせ、くりくりと触れると、びくんと太股が跳ね上がり、小さな声が漏れ始めた。

「あッ…………ん、んッ！」

　そのままゆっくりと、次第に激しく指を上下に動かすと、くちゅくちゅ──と厭らしい音が、一人足を開く部屋に静かに響く。その向こうでは柊悟くんがシャワーを浴びる水音がざあざあと、止まる気配もなく浴室の床を叩きつけている。

「は……は、ぁ……あ、あッ、んッんッ……」

　快感を得ているからだろうか、次第に腰がベッドから浮き始める。再び入口に触れれば、溶け出た愛液が尻にまで伝い始めた。中指だけではもの足りず、人差し指まで追加して、更には反対の手で胸の先端を弄くり回すと──

「ああッ……ん、あ、あッ、いッいッ……あッ！」

　──自分でも驚くくらい大きな声が出てしまい、思わず浴室の方に視線を投げる。大丈夫、まだ彼が上がってくる気配はない。
　太股ががくがくと震え始めた。間もなく達するのだとわかる──蕾に押し当てた指を襞ひだにまで伸ばし、くるくると──一段と激しく刺激を加えると、腰がびくびくと、足がガタガタと跳ね始めた。

「あッあッあッ──あ、しゅうご、く…………ッ！　んッ、んッあ、イッ、イクッ、ぅ、ああッ……！！」

　達してたというのに、べたべたになった二本の指は股の間にくっついて離れない。絶頂の快感で揺れる意識の中で、まだ尚気持ちよくなろうと、指は控え目に蕾を弄くり続けている。

「……ッ、ッん……ハァ……イッ……！！　ああ……も、う………………んッ、イッくぅ、あ……あ……」

　その後何度か達し、その余韻に浸っていたのも束の間、シャワーの水音が止む気配。慌てて飛び起き指と秘部をティッシュで拭き取り、手を洗い終えてベッドに身を投げる。

「ほたる、起きてる？」

　あっという間に身支度を済ませた柊悟くんが、全裸のままベッドサイドに腰かける。わたしの髪にそっと触れたかと思った直後、プシュッと缶ビールを開封する音に大きく振り返った。

「起きてるんじゃん」
「まだ、飲むの？」
「だめ？」

　あっという間に飲み干された缶がチェストの上にコトンと置かれる。それと入れ替わる形で手に取ったスマートフォンを操作し、彼はニヤリと口角を上げた。

「ほたる、大人しく俺のこと待ってた？」
「どういう意味？」
「ちゃんと、我慢出来た？」

　どきりと胸が跳ね顔を上げると、彼はベッドから立ち上がり、わたしに起き上がりベッドの上に座るよう促した。何をするのだろうと彼のスマートフォンを見つめると同時に、ガサガサと──奇妙な音がスマートフォンから発せられた。

「な、なに……」
「静かにしてて」
「うん……」


『あッ…………ん、んッ！』


「……！？」
「もう少し音量あげようか」
「え……ちょ、柊悟く──」


『は……は、ぁ……あ、あッ、んッんッ……』


「うそ、いや……ちょっと……」


『ああッ……ん、あ、あッ、いッいッ……あッ！

　あッあッあッ──あ、しゅうご、く…………ッ！　んッ、んッあ、イッ、イクッ、ぅ、ああッ……！！

　……ッ、ッん……ハァ……イッ……！！　ああ……も、う………………んッ、イッくぅ、あ……あ……』


　その後、バタバタとわたしが駆けた足音、それに風呂から上がってきた柊悟くんの声。

「うそでしょ」

　まさか、録音モードをオンにして入浴をするなんて。わたしの一人での行為は漏らすことなく彼のスマートフォンに録音されていた。