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金竜
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金竜……グレン様が金竜になった。
逆さ吊りされた竜達が歓喜の声をあげる。
「「「金竜だ!」」」
「「「金竜が戻ったぞ!」」」
竜達は大喜びだ。逆さ吊りのままで。
大丈夫かしらこの竜達。
今までの私達とのやり取りで喜んでいい
要素があった?
唖然としていると『穴』から次々に黒い
ローブ姿の人が現れる。
巣穴にいた竜達なのだろう。
口々に金竜の帰還を祝う言葉を口にする。
里の全ての竜が集まっているのかな?
千人ぐらいはいそうだ。
男だらけ。
女性が極端に少ない。
人を番にするのを禁じている現状では
大多数の男性があぶれていそう。
生まれる子供も少なそうだ。
放っておいても緩やかに滅んでいきそう。
なんだろう?この違和感。
喜ぶ竜達と私達の間の温度差が物凄い。
あなた達が殺せと言ったグレン様が金竜。
よく喜べるわね。
口々に金竜が戻ったと喜んでいるけれど
戻ってないからね?
グレン様はあなた達の王にはならないわよ?
尋常じゃなく怒っていますからね。
まずいと思わないのだろうか。
思わず黒竜と青竜の顔を見る。
二人とも何とも言えない顔で首を振る。
「おい。滅ぼしていいか?」
目茶苦茶不機嫌なグレン様の声。
あ~うん。
その気持ち分かります。
なんか勝手な連中ですもんね。
「小僧、とりあえずもうちょっと待て。
リョク!コガネとコハクはどうした?」
黒竜が気を取り直して逆さ吊りにされた
リョクに尋ねる。
「ははは!金竜が戻った以上、奴らはもう
いらんな。下ろしてくれれば連れて来るぞ」
「仕方がない。小僧、下ろしてやってくれ」
「その必要はありません」
黒竜がグレン様に声をかけるとそれを制する
声がする。空から聞こえた?見上げると
こちらに向かって空を飛んで来る黄色い竜が
見える。
「……キハダ様」
青竜がポツリと呟く。
キハダ様……この黄色い竜が最長老様か。
私達の目の前まで来るとその手に包んで
いた人を二人、そっと地面に下ろした。
黒いローブ姿。金色の巻き髪の美しい男女。
男性の方はカナイロにとても似ている。
きっとこの人がコガネ。
コガネに心配そうに寄り添う女性。
この女性がコハクなのだろう。
コガネは何の意思も宿していない虚ろな瞳を
してただそこに立っていた。
明らかに様子のおかしいコガネの首から
肩にかけて見慣れた黒い刺青が見える。
竜殺しの剣の支配だ。
コガネの様子からして刺された本数は
三本だろう。完全な支配状態。何で?
黄色い竜が人化する。
白いローブ姿。真っ直ぐで長い黄色い髪。
ほっそりとした儚い感じのする女性。
この女性が最長老……どう見ても二十代前半
にしか見えない。
「久しぶりですねクロにアオ」
「もう会う事はないと思っていましたよ。
いい加減最長老の座と族長の座を降りたら
どうです?どうせ引きこもっていて
何もしていないのだから」
キハダに声をかけられた黒竜が辛辣に返す。
青竜も眉をひそめている。
「コガネのそれはなぜ?」
青竜が怒りを圧し殺したようにコガネの
刺青について尋ねる。
キハダは恥ずかしそうに俯く。
「……すみません。長老達がコガネに言う
ことを聞かせるために人の奴隷を使って
竜殺しの剣を刺したのです」
「コハクを殺して竜殺しの剣で支配された
コガネにアニエスと無理矢理番にする。
カナイロが言う事を聞かなかった場合は
そうするつもりで……同じ竜同士なのに。
酷い事をする。
クロがお前達を嫌がる気持ちが分かった。
俺もほとほと愛想が尽きたよ」
「私の力が至らないばかりに……コハク。
コガネの事、本当にすみませんでした。
クロにアオ。図々しい願いとは分かって
いますがコハクとコガネの事をお願いしたい
のです。彼らはもうここでは生きられない」
「安心しろ。頼まれなくとも連れて帰る。
それであんたはどうするつもりなんだ?」
黒竜の態度が少し軟化した。
少なくともキハダはコハクとコガネの事を
心配しているのが分かったからだ。
「何も。何もせずただ滅びの時を待ちます」
悄然としたキハダの言葉に黒竜は盛大に
ため息をつく。
その後ろでは変わらず金竜の帰還を竜達が
喜びお祭り騒ぎだ。
「あんたの時は金竜様が亡くなった時から
止まったままなんだな……」
黒竜の言葉にキハダがグレン様の方を見る。
そして私の顔も。
しばらく無言で私達を見つめていたキハダの
目からポロポロと涙が溢れる。
「……本当にあの人はいなくなったのね。
もう私の金竜様は戻らない」
そう言うとその場に泣き崩れた。
え~と。どうしたらいいのだろう?
私とグレン様に分け与えられた金竜の核を
感じとったのかな?
泣き続ける女性にオロオロする私。
その間に青竜がコハクに近より何かを囁く。
驚いたように私の方を見るコハク。
あ~何を言ったのか分かったわ。
私は青竜に頷くとコガネを空間収納に
しまった。
これで最短だと五日で支配が消える。
青竜の支配の刺青は五日で消えたものね。
コガネが消えた一瞬、不安そうな顔になった
コハク。でも青竜が安心させるように頷くと
ほっとした顔になり私にお辞儀をした。
私はコハクに近より声をかける。
「一人になって不安でしょう?良かったら
あなたも収納しましょうか?」
「え?そんな事もできるのですか?
コガネの事、ありがとう。
その……私もお願いしてもいいかしら?」
私は笑って頷くとコハクも空間収納した。
さて後はこの泣いているキハダを
どうしよう?
なんだか可哀想で。
悩んでいると胸の辺りが熱い。
胸に右手をあてるとその熱が右手に移る。
掌に金色の蝶が。
あれ?この蝶は……。
金竜?金竜の気配がする。
私の掌から飛び立ちキハダの周りをくるくる
と飛び回る。
パタパタと羽を羽ばたかせてキハダの肩に
とまる金色の蝶。
キハダが顔をあげる。
涙に濡れたキハダの顔に驚きの表情が広がる。
「……ヤマブキ?」
肩に乗った蝶に声をかける。
金色の蝶は応えるように羽をパタパタさせる。
金竜の名前……ヤマブキなんだ。
小さな小さな金竜の気配。
それでもキハダは大事そうにそっと
指を伸ばす。
キハダの指に蝶がとまる。
「帰ってきてくれたの……ヤマブキ。
ごめんなさい。ごめんなさいヤマブキ。
私が竜石なんて作らせたから……」
キハダはそう言うとまた泣き出した。
竜石?
リョクも言っていたけどなんの事だろう?
竜石の事を考えていたら何かに呼ばれた
気がした。
──悪い物じゃない。
帝国で金竜に呼ばれた時と同じだ。
呼ばれた方に歩き出す。
「アニエス?どこに行く?」
スタスタと歩く私にグレン様が声をかける。
それと同時にお馴染みの感覚がする。
あ~また落ちるよ私。
足元の『穴』に呼ばれて落ちる。
暗転する。
私の意識はそこで途絶えた。
逆さ吊りされた竜達が歓喜の声をあげる。
「「「金竜だ!」」」
「「「金竜が戻ったぞ!」」」
竜達は大喜びだ。逆さ吊りのままで。
大丈夫かしらこの竜達。
今までの私達とのやり取りで喜んでいい
要素があった?
唖然としていると『穴』から次々に黒い
ローブ姿の人が現れる。
巣穴にいた竜達なのだろう。
口々に金竜の帰還を祝う言葉を口にする。
里の全ての竜が集まっているのかな?
千人ぐらいはいそうだ。
男だらけ。
女性が極端に少ない。
人を番にするのを禁じている現状では
大多数の男性があぶれていそう。
生まれる子供も少なそうだ。
放っておいても緩やかに滅んでいきそう。
なんだろう?この違和感。
喜ぶ竜達と私達の間の温度差が物凄い。
あなた達が殺せと言ったグレン様が金竜。
よく喜べるわね。
口々に金竜が戻ったと喜んでいるけれど
戻ってないからね?
グレン様はあなた達の王にはならないわよ?
尋常じゃなく怒っていますからね。
まずいと思わないのだろうか。
思わず黒竜と青竜の顔を見る。
二人とも何とも言えない顔で首を振る。
「おい。滅ぼしていいか?」
目茶苦茶不機嫌なグレン様の声。
あ~うん。
その気持ち分かります。
なんか勝手な連中ですもんね。
「小僧、とりあえずもうちょっと待て。
リョク!コガネとコハクはどうした?」
黒竜が気を取り直して逆さ吊りにされた
リョクに尋ねる。
「ははは!金竜が戻った以上、奴らはもう
いらんな。下ろしてくれれば連れて来るぞ」
「仕方がない。小僧、下ろしてやってくれ」
「その必要はありません」
黒竜がグレン様に声をかけるとそれを制する
声がする。空から聞こえた?見上げると
こちらに向かって空を飛んで来る黄色い竜が
見える。
「……キハダ様」
青竜がポツリと呟く。
キハダ様……この黄色い竜が最長老様か。
私達の目の前まで来るとその手に包んで
いた人を二人、そっと地面に下ろした。
黒いローブ姿。金色の巻き髪の美しい男女。
男性の方はカナイロにとても似ている。
きっとこの人がコガネ。
コガネに心配そうに寄り添う女性。
この女性がコハクなのだろう。
コガネは何の意思も宿していない虚ろな瞳を
してただそこに立っていた。
明らかに様子のおかしいコガネの首から
肩にかけて見慣れた黒い刺青が見える。
竜殺しの剣の支配だ。
コガネの様子からして刺された本数は
三本だろう。完全な支配状態。何で?
黄色い竜が人化する。
白いローブ姿。真っ直ぐで長い黄色い髪。
ほっそりとした儚い感じのする女性。
この女性が最長老……どう見ても二十代前半
にしか見えない。
「久しぶりですねクロにアオ」
「もう会う事はないと思っていましたよ。
いい加減最長老の座と族長の座を降りたら
どうです?どうせ引きこもっていて
何もしていないのだから」
キハダに声をかけられた黒竜が辛辣に返す。
青竜も眉をひそめている。
「コガネのそれはなぜ?」
青竜が怒りを圧し殺したようにコガネの
刺青について尋ねる。
キハダは恥ずかしそうに俯く。
「……すみません。長老達がコガネに言う
ことを聞かせるために人の奴隷を使って
竜殺しの剣を刺したのです」
「コハクを殺して竜殺しの剣で支配された
コガネにアニエスと無理矢理番にする。
カナイロが言う事を聞かなかった場合は
そうするつもりで……同じ竜同士なのに。
酷い事をする。
クロがお前達を嫌がる気持ちが分かった。
俺もほとほと愛想が尽きたよ」
「私の力が至らないばかりに……コハク。
コガネの事、本当にすみませんでした。
クロにアオ。図々しい願いとは分かって
いますがコハクとコガネの事をお願いしたい
のです。彼らはもうここでは生きられない」
「安心しろ。頼まれなくとも連れて帰る。
それであんたはどうするつもりなんだ?」
黒竜の態度が少し軟化した。
少なくともキハダはコハクとコガネの事を
心配しているのが分かったからだ。
「何も。何もせずただ滅びの時を待ちます」
悄然としたキハダの言葉に黒竜は盛大に
ため息をつく。
その後ろでは変わらず金竜の帰還を竜達が
喜びお祭り騒ぎだ。
「あんたの時は金竜様が亡くなった時から
止まったままなんだな……」
黒竜の言葉にキハダがグレン様の方を見る。
そして私の顔も。
しばらく無言で私達を見つめていたキハダの
目からポロポロと涙が溢れる。
「……本当にあの人はいなくなったのね。
もう私の金竜様は戻らない」
そう言うとその場に泣き崩れた。
え~と。どうしたらいいのだろう?
私とグレン様に分け与えられた金竜の核を
感じとったのかな?
泣き続ける女性にオロオロする私。
その間に青竜がコハクに近より何かを囁く。
驚いたように私の方を見るコハク。
あ~何を言ったのか分かったわ。
私は青竜に頷くとコガネを空間収納に
しまった。
これで最短だと五日で支配が消える。
青竜の支配の刺青は五日で消えたものね。
コガネが消えた一瞬、不安そうな顔になった
コハク。でも青竜が安心させるように頷くと
ほっとした顔になり私にお辞儀をした。
私はコハクに近より声をかける。
「一人になって不安でしょう?良かったら
あなたも収納しましょうか?」
「え?そんな事もできるのですか?
コガネの事、ありがとう。
その……私もお願いしてもいいかしら?」
私は笑って頷くとコハクも空間収納した。
さて後はこの泣いているキハダを
どうしよう?
なんだか可哀想で。
悩んでいると胸の辺りが熱い。
胸に右手をあてるとその熱が右手に移る。
掌に金色の蝶が。
あれ?この蝶は……。
金竜?金竜の気配がする。
私の掌から飛び立ちキハダの周りをくるくる
と飛び回る。
パタパタと羽を羽ばたかせてキハダの肩に
とまる金色の蝶。
キハダが顔をあげる。
涙に濡れたキハダの顔に驚きの表情が広がる。
「……ヤマブキ?」
肩に乗った蝶に声をかける。
金色の蝶は応えるように羽をパタパタさせる。
金竜の名前……ヤマブキなんだ。
小さな小さな金竜の気配。
それでもキハダは大事そうにそっと
指を伸ばす。
キハダの指に蝶がとまる。
「帰ってきてくれたの……ヤマブキ。
ごめんなさい。ごめんなさいヤマブキ。
私が竜石なんて作らせたから……」
キハダはそう言うとまた泣き出した。
竜石?
リョクも言っていたけどなんの事だろう?
竜石の事を考えていたら何かに呼ばれた
気がした。
──悪い物じゃない。
帝国で金竜に呼ばれた時と同じだ。
呼ばれた方に歩き出す。
「アニエス?どこに行く?」
スタスタと歩く私にグレン様が声をかける。
それと同時にお馴染みの感覚がする。
あ~また落ちるよ私。
足元の『穴』に呼ばれて落ちる。
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