109 / 135
閑話。ピンク、一足先に春が来る
しおりを挟む
また前回同様、記憶のないまま魔物の氾濫
が終息した。
なんかまた私はブレスを吐いたらしい。
グレン様にも黒竜にも竜化しない人の姿で
ブレスを吐くなんて器用だなと笑われた。
器用とかそういう問題?
でも、まあいいか。あの二人が笑うのだから
きっと笑い事なのだろう。うん。
大群の状態異常の魔物相手に戦った国軍、
辺境伯領軍の兵士達には負傷者が大勢出た。
ただ幸いに死者はほとんど出ていない。
プリシラ様は魔力枯渇のために意識が
戻らない。あれだけの魔物の攻撃から
防衛結界を張り続け、砦を守り抜いたの
だから当然と言えば当然の結果なのかも
しれない。
本当にすごい人だ。
あの方がお館様の奥様で本当に良かった。
ロイシュタール様の見立てでは命には別状は
ないとの事。
魔力が回復するまで眠り続ける。
心配そうにお館様がずっと付き添っている。
ロイシュタール様がお館様にそっと
耳打ちする。
お館様が茹であがったタコのように
真っ赤になっている。
あ~なんか何を言われたのか私、
分かっちゃった。
魔力の性行為による夫婦間による譲渡。
だよね。
夫婦でも意識のない相手にどうなのそれ?
でも治療行為か。
例えば私が魔力枯渇して意識のない状態で
グレン様に……恥ずかしいけど嫌じゃない。
結局、二人の信頼関係の問題だ。
早くプリシラ様の意識が戻るといいな。
帝国に火をつけられたり、魔物に荒らされた
辺境伯領の街。
前回の氾濫の時にも街への魔物の流入は
なかったのに今回は……。
私の故郷は見るも無惨に破壊された。
それでもプリシラ様のお陰で民間人の
人的被害は全くなし。
人々の表情は明るい。
辺境人の強さを垣間見た気がする。
父や兄が言っていたように人さえ無事なら
それでいい。
いくらでもやり直しがきく。
帝国は今はアルフォンス様の反乱軍、
ロイシュタール様のキルバン、
バルド様のカナンの連合軍が完全に制圧。
支配下に置かれた。
皇帝であるオズワルドもアルトリアに
捕らえられたため、戦争は終結。
ちらつく雪が足枷だけど、それでも
復興に向けて皆が動き出した。
「え?!何?今何て言ったのドーラ」
負傷者の治療に忙しく働くドーラが
短い休憩時間に何かとんでもない事を
言い出した。
髪に編み込んだリボンはピンク。
相変わらずピンク愛に満ち溢れている。
「何度も言わせないでよ!恥ずかしい……」
真っ赤な顔で両手で顔を隠すドーラ。
ちょっと前までアルフォンス様の事を
慕う追っかけお嬢様だったのに……。
「だから、あんたのお兄様のエリック様と
その……お付き合いさせていただく事に
なったの!あ~~恥ずかしい!」
………あの美貌のアルフォンス様から
どう見ても熊にしか見えないうちの兄。
どうしたのドーラ?振り幅が大き過ぎない?
しかもエリック兄さんは火焔熊につけられた
顔の傷のせいで余計に威圧感がある。
ついぞ女性にもてた事がないのに。
「従軍中に魔物に襲われたのをエリック様に
助けていただいたのよ。もう、それが物凄く
カッコよくてぇ!!きゃ~~!!
魔物の群れをバッサ、バッサと斬り倒し、
『お嬢さんお怪我は?』ですって!
とても紳士でいらして……。
昨日、思い切ってお付き合いをお願いしたら
快く了承して下さったの!
私の身分が平民でも構わないとおっしゃて……。
そうしたら夜にお父様であるアシェンティ
子爵様と一緒にわざわざお見えになって、
いっその事、さっさと婚約しようと
書類を持って来られて……。
辺境伯様とグレン様が立ち会って下さって
婚約しちゃったの!幸せ過ぎて怖い!」
頬を染めて語るドーラ。
……この期を逃したらエリック兄さんは
絶対に結婚できないと思ったなあの熊父!
エリック兄さんが告白されたその日の夜に
即、婚約って……しかもグレン様まで
片棒を担ぐなんて。
何をしているのあの人は……。
あまりの事に頭が痛い。
ドーラはちょっと思い込みは激しいけれど
一途ないい子だから私は義姉になって
くれるのはうれしいけれど……。
いいの?本当に。
エリック兄さんは性格は無茶苦茶いいけど、
脳筋の熊だよ?
でも、幸せそうなドーラ。
う~ん。いいのかな?うん。よし!
素直に喜ぶ事にした。
「よろしくお願いします。お義姉様」
頭を下げるとさらに真っ赤になるドーラ。
可愛い!でも気になる事は聞いておこう。
「ねえ、ドーラ。アルフォンス様の事は
もういいの?」
「うん。アイリス様とうまくいったみたい
だし、アルフォンス様が幸せならそれで……」
ちょっと切なく笑うドーラ。
「ちなみにアルフォンス様の時は何が
きっかけで好きになったの?」
「ん?私が馬車の事故で大怪我した時に
その場に居合わせたアルフォンス様に
治癒魔法で助けていただいたのよ。
カッコ良かったなぁ。あれから私、適正が
あった治癒魔法の修行を本格的に始めたの。
アルフォンス様への恋は実らなかったけれど
アルフォンス様がきっかけで頑張った
治癒魔法はこうして辺境で役に立っている。
うん。失恋はしたけど後悔はないわ。
それにいまはエリック様がいるし!」
輝くほど目映い笑顔のドーラ。
残念ピンクなんて心の中で呼んでいたのが
嘘みたい。
ドーラってば助けられるとストンと恋に
落ちちゃうタイプなのね。
なんか納得。
まだ、雪深い北辺境の冬。
どうやら友人が義姉になる事が決まった。
このピンクをこよなく愛する友人が
大好きなエリック兄さんと幸せになって
くれるといいな。
友人と兄に訪れた一足早い春に
心、温まる私でした。
が終息した。
なんかまた私はブレスを吐いたらしい。
グレン様にも黒竜にも竜化しない人の姿で
ブレスを吐くなんて器用だなと笑われた。
器用とかそういう問題?
でも、まあいいか。あの二人が笑うのだから
きっと笑い事なのだろう。うん。
大群の状態異常の魔物相手に戦った国軍、
辺境伯領軍の兵士達には負傷者が大勢出た。
ただ幸いに死者はほとんど出ていない。
プリシラ様は魔力枯渇のために意識が
戻らない。あれだけの魔物の攻撃から
防衛結界を張り続け、砦を守り抜いたの
だから当然と言えば当然の結果なのかも
しれない。
本当にすごい人だ。
あの方がお館様の奥様で本当に良かった。
ロイシュタール様の見立てでは命には別状は
ないとの事。
魔力が回復するまで眠り続ける。
心配そうにお館様がずっと付き添っている。
ロイシュタール様がお館様にそっと
耳打ちする。
お館様が茹であがったタコのように
真っ赤になっている。
あ~なんか何を言われたのか私、
分かっちゃった。
魔力の性行為による夫婦間による譲渡。
だよね。
夫婦でも意識のない相手にどうなのそれ?
でも治療行為か。
例えば私が魔力枯渇して意識のない状態で
グレン様に……恥ずかしいけど嫌じゃない。
結局、二人の信頼関係の問題だ。
早くプリシラ様の意識が戻るといいな。
帝国に火をつけられたり、魔物に荒らされた
辺境伯領の街。
前回の氾濫の時にも街への魔物の流入は
なかったのに今回は……。
私の故郷は見るも無惨に破壊された。
それでもプリシラ様のお陰で民間人の
人的被害は全くなし。
人々の表情は明るい。
辺境人の強さを垣間見た気がする。
父や兄が言っていたように人さえ無事なら
それでいい。
いくらでもやり直しがきく。
帝国は今はアルフォンス様の反乱軍、
ロイシュタール様のキルバン、
バルド様のカナンの連合軍が完全に制圧。
支配下に置かれた。
皇帝であるオズワルドもアルトリアに
捕らえられたため、戦争は終結。
ちらつく雪が足枷だけど、それでも
復興に向けて皆が動き出した。
「え?!何?今何て言ったのドーラ」
負傷者の治療に忙しく働くドーラが
短い休憩時間に何かとんでもない事を
言い出した。
髪に編み込んだリボンはピンク。
相変わらずピンク愛に満ち溢れている。
「何度も言わせないでよ!恥ずかしい……」
真っ赤な顔で両手で顔を隠すドーラ。
ちょっと前までアルフォンス様の事を
慕う追っかけお嬢様だったのに……。
「だから、あんたのお兄様のエリック様と
その……お付き合いさせていただく事に
なったの!あ~~恥ずかしい!」
………あの美貌のアルフォンス様から
どう見ても熊にしか見えないうちの兄。
どうしたのドーラ?振り幅が大き過ぎない?
しかもエリック兄さんは火焔熊につけられた
顔の傷のせいで余計に威圧感がある。
ついぞ女性にもてた事がないのに。
「従軍中に魔物に襲われたのをエリック様に
助けていただいたのよ。もう、それが物凄く
カッコよくてぇ!!きゃ~~!!
魔物の群れをバッサ、バッサと斬り倒し、
『お嬢さんお怪我は?』ですって!
とても紳士でいらして……。
昨日、思い切ってお付き合いをお願いしたら
快く了承して下さったの!
私の身分が平民でも構わないとおっしゃて……。
そうしたら夜にお父様であるアシェンティ
子爵様と一緒にわざわざお見えになって、
いっその事、さっさと婚約しようと
書類を持って来られて……。
辺境伯様とグレン様が立ち会って下さって
婚約しちゃったの!幸せ過ぎて怖い!」
頬を染めて語るドーラ。
……この期を逃したらエリック兄さんは
絶対に結婚できないと思ったなあの熊父!
エリック兄さんが告白されたその日の夜に
即、婚約って……しかもグレン様まで
片棒を担ぐなんて。
何をしているのあの人は……。
あまりの事に頭が痛い。
ドーラはちょっと思い込みは激しいけれど
一途ないい子だから私は義姉になって
くれるのはうれしいけれど……。
いいの?本当に。
エリック兄さんは性格は無茶苦茶いいけど、
脳筋の熊だよ?
でも、幸せそうなドーラ。
う~ん。いいのかな?うん。よし!
素直に喜ぶ事にした。
「よろしくお願いします。お義姉様」
頭を下げるとさらに真っ赤になるドーラ。
可愛い!でも気になる事は聞いておこう。
「ねえ、ドーラ。アルフォンス様の事は
もういいの?」
「うん。アイリス様とうまくいったみたい
だし、アルフォンス様が幸せならそれで……」
ちょっと切なく笑うドーラ。
「ちなみにアルフォンス様の時は何が
きっかけで好きになったの?」
「ん?私が馬車の事故で大怪我した時に
その場に居合わせたアルフォンス様に
治癒魔法で助けていただいたのよ。
カッコ良かったなぁ。あれから私、適正が
あった治癒魔法の修行を本格的に始めたの。
アルフォンス様への恋は実らなかったけれど
アルフォンス様がきっかけで頑張った
治癒魔法はこうして辺境で役に立っている。
うん。失恋はしたけど後悔はないわ。
それにいまはエリック様がいるし!」
輝くほど目映い笑顔のドーラ。
残念ピンクなんて心の中で呼んでいたのが
嘘みたい。
ドーラってば助けられるとストンと恋に
落ちちゃうタイプなのね。
なんか納得。
まだ、雪深い北辺境の冬。
どうやら友人が義姉になる事が決まった。
このピンクをこよなく愛する友人が
大好きなエリック兄さんと幸せになって
くれるといいな。
友人と兄に訪れた一足早い春に
心、温まる私でした。
0
お気に入りに追加
310
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
愛してほしかった
こな
恋愛
「側室でもいいか」最愛の人にそう問われ、頷くしかなかった。
心はすり減り、期待を持つことを止めた。
──なのに、今更どういうおつもりですか?
※設定ふんわり
※何でも大丈夫な方向け
※合わない方は即ブラウザバックしてください
※指示、暴言を含むコメント、読後の苦情などはお控えください
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
皇帝の番~2度目の人生謳歌します!~
saku
恋愛
竜人族が治める国で、生まれたルミエールは前世の記憶を持っていた。
前世では、一国の姫として生まれた。両親に愛されずに育った。
国が戦で負けた後、敵だった竜人に自分の番だと言われ。遠く離れたこの国へと連れてこられ、婚約したのだ……。
自分に優しく接してくれる婚約者を、直ぐに大好きになった。その婚約者は、竜人族が治めている帝国の皇帝だった。
幸せな日々が続くと思っていたある日、婚約者である皇帝と一人の令嬢との密会を噂で知ってしまい、裏切られた悲しさでどんどんと痩せ細り死んでしまった……。
自分が死んでしまった後、婚約者である皇帝は何十年もの間深い眠りについていると知った。
前世の記憶を持っているルミエールが、皇帝が眠っている王都に足を踏み入れた時、止まっていた歯車が動き出す……。
※小説家になろう様でも公開しています
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる