王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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オズワルド捕獲される

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「ずいぶん遅かったな。俺は無能が嫌いだ」

グレン様が静かに怒る。
魔力が駄々漏れ……怖いよ。

人化して平伏する竜が八人。
ぐるぐる巻きに縛られた男が二人。
全員の足元がグレン様の魔力で凍っている。

一人は紫の髪に金の瞳の男。
傷だらけでこちらを睨んでいる。
こいつがオズワルドをさらった紫の竜ね。

もう一人は当然オズワルドだ。
地上に降りた途端、罵詈雑言
わめき散らすので、うるさいから今は
猿ぐつわを噛ませている。
それでもモゴモゴとうるさい。

顔を見たらムカついたので
とりあえず頭をポカリと一発殴ってやった。

「う~わ~いけないんだ!無抵抗の奴に
暴力を振るったぞ。悪い奴だなチビすけ」

黒竜が私をからかう。

「何を言っているの。スッキリするわよ?」

「「「……」」」

私の言葉を聞いたグレン様に
アルフォンス様、黒竜、青竜、赤竜が
無言でポカスカとオズワルドの頭を叩く。

「本当だ。スッキリするな!」

みんなが頷く。
嫌だわ。みんなストレス溜めてたのね。
そりゃそうか。

「この盗人が!金竜様を返せ!」

紫の竜がわめく。
だ~か~ら~盗んでませんから!
人聞き悪いな。

「こいつ面倒臭そうだな。刺しとくか」

グレン様が竜殺しの剣を取り出し、
何の躊躇もなく紫の竜に突き刺す。
悲鳴が上がる。

他の竜達がブルブル震えている。
あ、二本目を刺したよ。

黒竜、無抵抗の奴に暴力を振るう悪い奴って
グレン様の事じゃないの?

そんな鬼畜なお姿も素敵!

あ、紫の竜に刺された剣が光って消えた。
代わりに黒い刺青が首にあらわれる。
支配完了だ。

「この裏切り者!誰よりも竜王様に親しい
側近のくせに盗人の手助けなど恥を知れ!」

支配されるも意思は残る二本刺し。
こちらを害する事はもうできないけれど
口は自由だ。
紫の竜が黒竜を罵倒する。
こいつ、ムカつく。

私は紫の竜の頭もポカリと叩いた。
はあ!スッキリ!

「今まで何にもしないで逃げた奴らが
黒い森に残って戦って来た黒竜を責める
なんて一体何様よ!」

「なんだお前は!お前も盗人の一味か!」

「誰が盗人の一味よ!盗んでないから!
金竜は消えたの!キラキラと光りながら
砂のようにサラサラと崩れて消えたのよ!」

「嘘をつけ!皇帝はお前達が金竜を盗んで
竜殺しの剣を作っていると言っていた!
この悪党が!竜殺しの剣をこんなに沢山
持っているのがその証拠だ。俺達を支配
してもまだ、北大陸には仲間が大勢いる。
今に見ていろ!!」

──はい?こいつアホだ。
すっかりオズワルドに騙されている。

竜って騙されやすい生き物なんだね。
ひょっとして、辺境の人達が単細胞で
騙されやすい脳筋が多いのは竜の子孫が
数多くいるからかしら……。

なんだか地元民と話している
気分になってきた。

「相変わらすアホだな。スミレ。
竜殺しの剣が沢山あるのはな?
市場に出回っていた物をそこの小僧が
私財で買い占めてくれたからだ。
金竜様が消えたのも本当だ。
この二人に核を渡して消え去った。
もう、竜殺しの剣が作られる事はないよ」

……黒竜がクロ。青竜がアオ。赤竜がアカ。
白竜がシロ……なのに紫竜はスミレなんだ。
面白いわ。

「核を渡して消え去った?!何故!
何でこんな奴らに金竜様が大切な核を
渡すんだ!嘘をつくな!」

怒鳴らないとしゃべれないのかスミレ!
うるさいよ。
ところで核って何?
あの魔物を倒すと出てくる
魔石みたいなやつ?

私とグレン様が金竜から手渡されたのは
金の鱗だった。
あれが核だったの?あれ私達、食べたよね?

思わずグレン様を見る。
……何を考えているのか分からない
おすまし顔だ。

「黒竜、やめとけ。お前、うるさいな?
話す事を禁ずる。反省するまで黙ってろ」

グレン様が命じるとスミレが口を
パクパクする。
あ、声がでないのね。
ちょっと可哀想だけど確かにうるさい。
少し静かにしていて。

「北大陸の竜の事はとりあえず後回しだ。
オズワルドだが、本当はぶち殺そうと
思っていたがまだ使い途があるから残す。
ゴミも利用できるなら資源だ。
大事にしよう」

グレン様が言う。
なんだろう?使い途って……考えていると
どこからかパタパタと羽根の音が聞こえる。
白い鳥の羽根の生えた大きな豆花が
こちらにやって来る。

あ!飛び大ピイちゃん達が飛んで来た。
存在をすっかり忘れていたわ。
今までどこにいたのだろう。
地上に降り立つとペタペタとこちらに
やって来る。

「うわ出た!まだ付いてくるのかコイツ!」

竜達が怯える。
あ~竜達をずっと追いかけていたのか。
まあ、なんて優秀な。
いい子、いい子。
一匹、黄色い足を撫でたら、わらわらと
他のピイちゃん達が寄ってくる。
ハイハイ。撫でればいいのね。

「アニエス!なんだそれ!豆花が進化
してるぞ。羽根が生えてる!研究用に一匹、
俺にくれ。いや面白いわ~!」

アルフォンス様が目をキラキラと輝やかせて
ピイちゃん達を見る。
……うん。この人、変だわ。
アイリスさん。大変ね。


「ちょうどいい。そいつらにオズワルドの
監視を頼もう。アルバート達に報告しに
本宮に戻る。竜達はその場で待機。
お前らオズワルドを逃がすなよ?」

グレン様が竜達に命じる。
さすがに九匹の竜に囲まれたうえに
ピイちゃんにも見張られたら
逃げられないでしょう。

私達は本宮へと向かった。










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