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グレン、家に帰る
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「お帰りなさいませグレン様!
よくぞご無事で……」
王宮から馬車を出してもらいアニエスと
共に帰宅した。
家宰のヨーゼフが泣きながら出迎える。
あ~訃報が届いたらしいな?
まずい。使用人達が皆、泣いている。
……よせ。拝むんじゃない。
とりあえず俺は無事だし、元気だ。
「王都での用件が済んだらまた辺境に戻る。
今夜はアニエスがうちに泊まる。
急に悪いがよろしく頼む。
それと心配かけたな?すまない」
「いえ。ご無事で何よりでした……。
お嬢様、ようこそおいで下さいました。
召し使い一堂、精一杯のおもてなしをさせて
いただきます」
ヨーゼフ、泣くな。
……おい、そこの侍女達。
よせ。アニエスにまで拝むんじゃない。
「いつも急に来てすみません」
アニエスがすまなそうな顔で言う。
いや、お前は悪くない。
俺が無理を言って連れて帰って来た
のだから。
なんとなくマックスと帰るのが
気に食わなかった。
まあ、来年の婚儀まで帰る場所は
ザルツコードなんだがな。
くそ。婚約期間もっとを短縮できないか?
「何をおっしゃいます。マーサ、お嬢様を
お部屋にご案内して下さい。
グレン様、二、三ご報告がございます」
侍女頭のマーサがアニエスを先に部屋へと
案内する。
マーサは出征前にアニエスがうちに来た
時にも世話をしている。
アニエスはあの時はお世話になりました~
とか言いながら、いい笑顔を振りまく。
悩殺されて胸を押さえるマーサ。
はいはい。アニエスは可愛いな。
アニエスの後ろ姿に涙を流しながら手を
合わせる使用人達。
うちの使用人達はどこかおかしい気がする。
……うっかり死にかけたばかりに使用人に
過度の心労をかけたようだ。
やれやれだ。
ヨーゼフから留守中の報告を聞く。
領地で起きた問題とその処理について。
鉱山からの発掘量の報告。
──まではいい。問題はこれだ。
……手渡された招待状に絶句する。
実家の弟の結婚式の招待状。
おいおい。
俺を呼んでどうする?
俺は籍も抜けているし、単に血が繋がって
いるだけの他人だ。
出征前の父親の訪問といい、
今さら絡まれるのは迷惑だ。
大体、戦時中に招待状を送ってくるな。
いくら半年先でも阿保か。
「ヨーゼフ。適当に処理しといてくれるか」
「はい。かしこまりました」
一気に疲れた。
よし、アニエスで癒されよう。
湯浴みをして着替えてから食席につく。
アニエスも騎士服から淡いピンク色の
ドレスに着替えている。
この色のドレスは初めて見たな。
よく似合っている。
よし、一気に回復したぞ。
アニエスのドレスはある程度作らせた。
アニエスは恐縮していたが
中々目を楽しませてくれる。
二人で夕食を食べた。
旨そうに食べるアニエスを見ながら
食べるからかいつもより食事が旨い。
「これ、おいしいです!」
目をキラキラ輝かせて海老を頬張る
アニエス。
リスは海老がお気に召したらしい。
「帝国や白竜の件が片付いたら、二人で
海辺の街に海老でも食べに行くか?」
「え?行きたいです!海老も好きです
けれど、私は海に行った事がないので
行ってみたいです」
なんと。海に行った事がないのか。
まあ、北辺境は海から遠いしな。
「モーダストの海辺に別邸があるから
もう少し季節がよくなったら行ってみよう」
「モーダスト!大きな港がある所ですよね。
色々な船が見られて楽しそう。
グレン様は船に乗った事があります?」
「カナンには年に数回は仕事で行くからな。
そうか。カナンに行くのもありかもな。
小さい島が沢山あって景色がいいぞ。
きっとアニエスも気にいる」
「船旅かぁ。楽しそう」
「まあ、天候に恵まれて船酔いさえ
しなければな。荒天の海は地獄だぞ」
「魔王様が地獄と言うのだからそれは
相当大変そうですね!船酔いかぁ。
私も酔っぱらいますかね?」
酔い……と言えば。
こいつ結構、ワインを飲んでいるな。
しかも旨そうに飲んでケロリとしている。
意外と酒豪かもしれん。
「お前、酒が強いな。もう少し飲むか?」
「あ、ごめんなさい。このワインおいしくて
つい、飲み過ぎちゃいました」
アニエスの言葉に給仕係の使用人が目頭を
押さえる。
使用人達が異常に涙脆くなっている。
元からおかしな奴らだったが、
今日は特にすごい。大丈夫か?
「うちの領地で作られるワインだ。
気に入ってくれたようだな。よかった」
「本当においしいです!」
よし、部屋で飲み直すか。
寝室に酒肴の支度をさせてアニエスと
酒盛りをする。
夜着にガウンを羽織ったアニエス。
ほんのり赤く染まった肌が色っぽい。
しかし、強いな酒。
クイクイと旨そうに飲んでいる。
こっちが酔いそうだ。
酒にではなくアニエスの匂いに。
さっき結界を張った。
酔って寝室で俺といるせいか甘い発情臭が
鼻腔をくすぐる。
これは他の雄には嗅がせたくないな。
俺は強めの酒を口に含むとアニエスを
抱き寄せて口移しで飲ませる。
酒を注ぎ終わるとそのまま舌を絡める。
気が済むまで深く口付けた。
唇を離すとアニエスは大きく息を吸い込む。
相変わらず鼻で息をしない。馬鹿だな。
「グレン様、それ駄目。酔っちゃう……」
甘い匂いがいっそう強くなる。
潤んだ瞳に酒ではなく真っ赤になった顔
たまらないな。
「俺はもう、酔っているぞ?」
もう一度口付けて抱き上げると、そのまま
ベッドに運んで押し倒した。
よくぞご無事で……」
王宮から馬車を出してもらいアニエスと
共に帰宅した。
家宰のヨーゼフが泣きながら出迎える。
あ~訃報が届いたらしいな?
まずい。使用人達が皆、泣いている。
……よせ。拝むんじゃない。
とりあえず俺は無事だし、元気だ。
「王都での用件が済んだらまた辺境に戻る。
今夜はアニエスがうちに泊まる。
急に悪いがよろしく頼む。
それと心配かけたな?すまない」
「いえ。ご無事で何よりでした……。
お嬢様、ようこそおいで下さいました。
召し使い一堂、精一杯のおもてなしをさせて
いただきます」
ヨーゼフ、泣くな。
……おい、そこの侍女達。
よせ。アニエスにまで拝むんじゃない。
「いつも急に来てすみません」
アニエスがすまなそうな顔で言う。
いや、お前は悪くない。
俺が無理を言って連れて帰って来た
のだから。
なんとなくマックスと帰るのが
気に食わなかった。
まあ、来年の婚儀まで帰る場所は
ザルツコードなんだがな。
くそ。婚約期間もっとを短縮できないか?
「何をおっしゃいます。マーサ、お嬢様を
お部屋にご案内して下さい。
グレン様、二、三ご報告がございます」
侍女頭のマーサがアニエスを先に部屋へと
案内する。
マーサは出征前にアニエスがうちに来た
時にも世話をしている。
アニエスはあの時はお世話になりました~
とか言いながら、いい笑顔を振りまく。
悩殺されて胸を押さえるマーサ。
はいはい。アニエスは可愛いな。
アニエスの後ろ姿に涙を流しながら手を
合わせる使用人達。
うちの使用人達はどこかおかしい気がする。
……うっかり死にかけたばかりに使用人に
過度の心労をかけたようだ。
やれやれだ。
ヨーゼフから留守中の報告を聞く。
領地で起きた問題とその処理について。
鉱山からの発掘量の報告。
──まではいい。問題はこれだ。
……手渡された招待状に絶句する。
実家の弟の結婚式の招待状。
おいおい。
俺を呼んでどうする?
俺は籍も抜けているし、単に血が繋がって
いるだけの他人だ。
出征前の父親の訪問といい、
今さら絡まれるのは迷惑だ。
大体、戦時中に招待状を送ってくるな。
いくら半年先でも阿保か。
「ヨーゼフ。適当に処理しといてくれるか」
「はい。かしこまりました」
一気に疲れた。
よし、アニエスで癒されよう。
湯浴みをして着替えてから食席につく。
アニエスも騎士服から淡いピンク色の
ドレスに着替えている。
この色のドレスは初めて見たな。
よく似合っている。
よし、一気に回復したぞ。
アニエスのドレスはある程度作らせた。
アニエスは恐縮していたが
中々目を楽しませてくれる。
二人で夕食を食べた。
旨そうに食べるアニエスを見ながら
食べるからかいつもより食事が旨い。
「これ、おいしいです!」
目をキラキラ輝かせて海老を頬張る
アニエス。
リスは海老がお気に召したらしい。
「帝国や白竜の件が片付いたら、二人で
海辺の街に海老でも食べに行くか?」
「え?行きたいです!海老も好きです
けれど、私は海に行った事がないので
行ってみたいです」
なんと。海に行った事がないのか。
まあ、北辺境は海から遠いしな。
「モーダストの海辺に別邸があるから
もう少し季節がよくなったら行ってみよう」
「モーダスト!大きな港がある所ですよね。
色々な船が見られて楽しそう。
グレン様は船に乗った事があります?」
「カナンには年に数回は仕事で行くからな。
そうか。カナンに行くのもありかもな。
小さい島が沢山あって景色がいいぞ。
きっとアニエスも気にいる」
「船旅かぁ。楽しそう」
「まあ、天候に恵まれて船酔いさえ
しなければな。荒天の海は地獄だぞ」
「魔王様が地獄と言うのだからそれは
相当大変そうですね!船酔いかぁ。
私も酔っぱらいますかね?」
酔い……と言えば。
こいつ結構、ワインを飲んでいるな。
しかも旨そうに飲んでケロリとしている。
意外と酒豪かもしれん。
「お前、酒が強いな。もう少し飲むか?」
「あ、ごめんなさい。このワインおいしくて
つい、飲み過ぎちゃいました」
アニエスの言葉に給仕係の使用人が目頭を
押さえる。
使用人達が異常に涙脆くなっている。
元からおかしな奴らだったが、
今日は特にすごい。大丈夫か?
「うちの領地で作られるワインだ。
気に入ってくれたようだな。よかった」
「本当においしいです!」
よし、部屋で飲み直すか。
寝室に酒肴の支度をさせてアニエスと
酒盛りをする。
夜着にガウンを羽織ったアニエス。
ほんのり赤く染まった肌が色っぽい。
しかし、強いな酒。
クイクイと旨そうに飲んでいる。
こっちが酔いそうだ。
酒にではなくアニエスの匂いに。
さっき結界を張った。
酔って寝室で俺といるせいか甘い発情臭が
鼻腔をくすぐる。
これは他の雄には嗅がせたくないな。
俺は強めの酒を口に含むとアニエスを
抱き寄せて口移しで飲ませる。
酒を注ぎ終わるとそのまま舌を絡める。
気が済むまで深く口付けた。
唇を離すとアニエスは大きく息を吸い込む。
相変わらず鼻で息をしない。馬鹿だな。
「グレン様、それ駄目。酔っちゃう……」
甘い匂いがいっそう強くなる。
潤んだ瞳に酒ではなく真っ赤になった顔
たまらないな。
「俺はもう、酔っているぞ?」
もう一度口付けて抱き上げると、そのまま
ベッドに運んで押し倒した。
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