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アニエス、忖度する
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「なんか重い話だな。アルトリアの王家が
大変申し訳ない事をした」
国王陛下が黒竜に詫びる。
なんだか切ない話だな。
自害したフィリスという番と金竜との間に
生まれた子供の末裔が私やモニカの家系に
繋がる訳だ。
白竜とアルトリアの王子かぁ。
姫様が考えていた通りだった。
黒竜、切ないなぁ。
「いやもう過ぎた話だよ。一時は俺も
人を恨んだよ。でもな俺も結構酷い事を
したしなぁ。
襲ってくる奴らは皆殺しにしたし、
アルマの魔力を根こそぎ喰らったし、
チビすけの……アニエスの気持ちを考えず
黙って鱗と血を与えて人から竜へ変えて
しまったしな」
黒竜が落ち込んだ様子で言う。
うん。それに関してはまだ私は怒っている。
「いや、それに関しては俺や赤竜も悪い。
大きくなる前にちょっと予約をなんて
軽い気持ちで婚姻鱗を食わせた。
そのせいでチビちゃんは死にかけて金竜に
なったんだよな。それにこの前は
竜殺しの剣を消すために金竜になって
欲しくて襲って怖がらせたしな。
本当にすまない」
青竜が落ち込んだ様子で言う。
うん。それに関してもまだ私は怒っている。
「馬鹿らしい。なんの懺悔大会だ。
今さら過ぎたどうにもならん事を
ぐちゃぐちゃ言うな。
それより、さっさとオズワルドの
処分と白竜の救出を急ぐ方が建設的だ」
うわ、グレン様ったらドライだわ。
バッサリ切り捨てたよ。
「「「……確かにそうだな」」」
うわ、陛下も黒竜も青竜も納得したよ。
「白竜の結界は竜達の襲来で解けた訳だが
白竜に会いに行けるようにはなったのか?」
国王陛下が黒竜、青竜に尋ねる。
「いや、もう一つ神殿に封印が残されて
いるし、白竜自身が張った結界もある。
ただ神殿の封印は赤髪の魔術師が解けると
言っていたから、後は白竜自身が張った
結界を解かないとな」
青竜が答える。
ええ~結界だの封印だのがまだあるのか。
「白竜の結界ならクロは弾かれないかも
しれない。それよりも問題なのは
竜殺しの剣だろう。たとえ白竜の所に
行けてもあれを消さなきゃ解決しないよ。
白竜に赤竜に俺……何とかしてくれ」
青竜が恨めしそうにグレン様も見た後に
すがるように私を見る。
どうやって金竜になって、どうやって
竜殺しの剣を消したのか覚えてないから
期待には応えられないわよ。
「そういえば赤竜はどうなったんだ。
王都のど真ん中でブレスを吐きまくり
やがって。住民を避難させていなければ
大変な事になっていたぞ。
ロイシュタール、仕留めたんだろうな?」
陛下が尋ねる。
あ、忘れてた。
赤竜を私が空間収納しているんだっけ。
「あ~赤竜なら仕留めたな。気絶した赤竜
の始末に困っていたらアニエス嬢が
空間収納にしまってくれたぞ。
可愛いうえにハイスペックな婚約者で
うらやましいな~グレン?」
バルド様がニヤニヤ笑いながらグレン様に
話を振る。もうバルド様ったらグレン様
をからかって!
「確かに可愛いくてハイスペックだな。
金竜の死体の次は気絶した赤竜か。
アニエス、その辺に落ちている竜を拾うの
はやめろよ?」
いや、グレン様。年中私が落ちてる竜を
拾ってきているみたいな言い方をしない
で下さい失礼な。
「白竜もだけれど赤竜も問題だよね。
いつまでもアニエス嬢が収納しておく
訳にもいかないだろうし。
空間収納から出したら暴れるだろうし
どうしたもんかな」
ロイシュタール様がぼやく。
そうねぇ。
空間収納から出したとたんにブレスを吐か
れたらたまらないわよね。
「赤竜には竜殺しの剣がすでに三本使われて
いるから暴れた時に刺して止める訳にも
いかないしな。どこかに閉じ込めて
結界で封じ込めるしかないか?」
「……そうだな。仕方がない。それしか
方法が思いつかないな」
バルド様からの提案に青竜が辛そうに頷く。
剣で支配されたうえに閉じ込められるのか。
白竜と一緒だよね。可哀想に。
まあ、今も私が空間収納に閉じ込めて
いるんだけどね。
「とりあえず、できる事から片付けよう。
まずは神殿の封印だな。
アルフォンスには帝国から出来るだけ早く
戻るようには伝えてあるが……あいつの馬は
遅いからなぁ。
どのぐらいで戻ってくるかな?」
「「「あ~~。確かに!」」」
陛下の言葉に竜達をのぞく全員が頷く。
アルフォンス様の騎乗の下手さは
共通認識なのね。
「俺が迎えに行って来るよ。道を使えば
早いだろうから」
青竜が立ち上がる。
それ助かるわ。
『穴』を使えばあっと言う間だもの。
アルフォンス様が馬に乗って帰ってくるのを
待っていたら物凄く待たされるに
決まっている。
「そうしてくれると助かる。頼んだぞ青竜」
青竜はさっそく帝国にアルフォンス様を
迎えに行った。
アルフォンス様が戻ってくるか、
オズワルドが捕獲されるかするまでは
事態は動かないとの事で
そのまま一旦解散となった。
黒竜は辺境の巣穴に一旦戻った。
ロイシュタール様は『穴』を使って
一人でキルバンに戻るそう。
バルド様は本宮にしばらくお泊まり。
マクドネル卿は引き続き王宮警護。
グレン様はオズワルドを捕獲しに行った
竜達の戻りを待つために王都に残る。
ご自宅に帰るそうだ。
問題は私だ。
「さあ、アニエス。ザルツコードの屋敷に
一緒に帰ろうか」
マックス義兄様がにこやかに言う。
「いや、アニエスは俺の屋敷に泊まる。
お前は一人で帰れ」
キラキラ笑顔のグレン様が言う。
何?この二人。怖いよ。
笑顔で牽制し合っている。
特にグレン様、魔力がだだ漏れてます。
……えーと。どちらに行くのが正解?
普通にいったらザルツコードの屋敷に帰る
のが本当なんだけれど。
グレン様のこのキラキラしい笑顔は
ヤバい気がする。
まだ死にたくないわ。
「あ、ちょうど良かった。
ウェディングドレスのデザイン画を見せて
いただきたかったの!今日はグレン様の
お屋敷に行ってきますね?マックス義兄様」
グレン様が勝ち誇ったように笑う。
よし、忖度成功。
「父が何と言うか知りませんよ?グレン様。
仕方がない。今日はグレン様の所に
行っておいで。明日、迎えに行くからね」
にこやかに笑っているけど怒ってますよね?
マックス義兄様。
笑いながら怒るのはお父様譲りですか?
怖いです。
そんなこんなで、今日はグレン様のお屋敷に
お泊まりです。
大変申し訳ない事をした」
国王陛下が黒竜に詫びる。
なんだか切ない話だな。
自害したフィリスという番と金竜との間に
生まれた子供の末裔が私やモニカの家系に
繋がる訳だ。
白竜とアルトリアの王子かぁ。
姫様が考えていた通りだった。
黒竜、切ないなぁ。
「いやもう過ぎた話だよ。一時は俺も
人を恨んだよ。でもな俺も結構酷い事を
したしなぁ。
襲ってくる奴らは皆殺しにしたし、
アルマの魔力を根こそぎ喰らったし、
チビすけの……アニエスの気持ちを考えず
黙って鱗と血を与えて人から竜へ変えて
しまったしな」
黒竜が落ち込んだ様子で言う。
うん。それに関してはまだ私は怒っている。
「いや、それに関しては俺や赤竜も悪い。
大きくなる前にちょっと予約をなんて
軽い気持ちで婚姻鱗を食わせた。
そのせいでチビちゃんは死にかけて金竜に
なったんだよな。それにこの前は
竜殺しの剣を消すために金竜になって
欲しくて襲って怖がらせたしな。
本当にすまない」
青竜が落ち込んだ様子で言う。
うん。それに関してもまだ私は怒っている。
「馬鹿らしい。なんの懺悔大会だ。
今さら過ぎたどうにもならん事を
ぐちゃぐちゃ言うな。
それより、さっさとオズワルドの
処分と白竜の救出を急ぐ方が建設的だ」
うわ、グレン様ったらドライだわ。
バッサリ切り捨てたよ。
「「「……確かにそうだな」」」
うわ、陛下も黒竜も青竜も納得したよ。
「白竜の結界は竜達の襲来で解けた訳だが
白竜に会いに行けるようにはなったのか?」
国王陛下が黒竜、青竜に尋ねる。
「いや、もう一つ神殿に封印が残されて
いるし、白竜自身が張った結界もある。
ただ神殿の封印は赤髪の魔術師が解けると
言っていたから、後は白竜自身が張った
結界を解かないとな」
青竜が答える。
ええ~結界だの封印だのがまだあるのか。
「白竜の結界ならクロは弾かれないかも
しれない。それよりも問題なのは
竜殺しの剣だろう。たとえ白竜の所に
行けてもあれを消さなきゃ解決しないよ。
白竜に赤竜に俺……何とかしてくれ」
青竜が恨めしそうにグレン様も見た後に
すがるように私を見る。
どうやって金竜になって、どうやって
竜殺しの剣を消したのか覚えてないから
期待には応えられないわよ。
「そういえば赤竜はどうなったんだ。
王都のど真ん中でブレスを吐きまくり
やがって。住民を避難させていなければ
大変な事になっていたぞ。
ロイシュタール、仕留めたんだろうな?」
陛下が尋ねる。
あ、忘れてた。
赤竜を私が空間収納しているんだっけ。
「あ~赤竜なら仕留めたな。気絶した赤竜
の始末に困っていたらアニエス嬢が
空間収納にしまってくれたぞ。
可愛いうえにハイスペックな婚約者で
うらやましいな~グレン?」
バルド様がニヤニヤ笑いながらグレン様に
話を振る。もうバルド様ったらグレン様
をからかって!
「確かに可愛いくてハイスペックだな。
金竜の死体の次は気絶した赤竜か。
アニエス、その辺に落ちている竜を拾うの
はやめろよ?」
いや、グレン様。年中私が落ちてる竜を
拾ってきているみたいな言い方をしない
で下さい失礼な。
「白竜もだけれど赤竜も問題だよね。
いつまでもアニエス嬢が収納しておく
訳にもいかないだろうし。
空間収納から出したら暴れるだろうし
どうしたもんかな」
ロイシュタール様がぼやく。
そうねぇ。
空間収納から出したとたんにブレスを吐か
れたらたまらないわよね。
「赤竜には竜殺しの剣がすでに三本使われて
いるから暴れた時に刺して止める訳にも
いかないしな。どこかに閉じ込めて
結界で封じ込めるしかないか?」
「……そうだな。仕方がない。それしか
方法が思いつかないな」
バルド様からの提案に青竜が辛そうに頷く。
剣で支配されたうえに閉じ込められるのか。
白竜と一緒だよね。可哀想に。
まあ、今も私が空間収納に閉じ込めて
いるんだけどね。
「とりあえず、できる事から片付けよう。
まずは神殿の封印だな。
アルフォンスには帝国から出来るだけ早く
戻るようには伝えてあるが……あいつの馬は
遅いからなぁ。
どのぐらいで戻ってくるかな?」
「「「あ~~。確かに!」」」
陛下の言葉に竜達をのぞく全員が頷く。
アルフォンス様の騎乗の下手さは
共通認識なのね。
「俺が迎えに行って来るよ。道を使えば
早いだろうから」
青竜が立ち上がる。
それ助かるわ。
『穴』を使えばあっと言う間だもの。
アルフォンス様が馬に乗って帰ってくるのを
待っていたら物凄く待たされるに
決まっている。
「そうしてくれると助かる。頼んだぞ青竜」
青竜はさっそく帝国にアルフォンス様を
迎えに行った。
アルフォンス様が戻ってくるか、
オズワルドが捕獲されるかするまでは
事態は動かないとの事で
そのまま一旦解散となった。
黒竜は辺境の巣穴に一旦戻った。
ロイシュタール様は『穴』を使って
一人でキルバンに戻るそう。
バルド様は本宮にしばらくお泊まり。
マクドネル卿は引き続き王宮警護。
グレン様はオズワルドを捕獲しに行った
竜達の戻りを待つために王都に残る。
ご自宅に帰るそうだ。
問題は私だ。
「さあ、アニエス。ザルツコードの屋敷に
一緒に帰ろうか」
マックス義兄様がにこやかに言う。
「いや、アニエスは俺の屋敷に泊まる。
お前は一人で帰れ」
キラキラ笑顔のグレン様が言う。
何?この二人。怖いよ。
笑顔で牽制し合っている。
特にグレン様、魔力がだだ漏れてます。
……えーと。どちらに行くのが正解?
普通にいったらザルツコードの屋敷に帰る
のが本当なんだけれど。
グレン様のこのキラキラしい笑顔は
ヤバい気がする。
まだ死にたくないわ。
「あ、ちょうど良かった。
ウェディングドレスのデザイン画を見せて
いただきたかったの!今日はグレン様の
お屋敷に行ってきますね?マックス義兄様」
グレン様が勝ち誇ったように笑う。
よし、忖度成功。
「父が何と言うか知りませんよ?グレン様。
仕方がない。今日はグレン様の所に
行っておいで。明日、迎えに行くからね」
にこやかに笑っているけど怒ってますよね?
マックス義兄様。
笑いながら怒るのはお父様譲りですか?
怖いです。
そんなこんなで、今日はグレン様のお屋敷に
お泊まりです。
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