王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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黒竜、昔語り3

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番が自害した。
竜王様は嘆きの余りどんどん衰弱して
いった。竜は真の番を失くすと長くは
生きられない。

フィリスにもそれは教えていたのに。
壊れてしまったフィリスには
そんな事はどうでもよかったのだろう。

自ら命を断つ事で長い時を生きる事から
逃げた。残される番を思いやる事なく。

残された竜王様は衰弱しながらも
人の国との戦いを収めようと必死に
働いた。もう少しで和平が成る。

そんな時に竜王様は人の国へ出向いたまま
戻っては来なかった。
俺は二度と竜王様に会う事ができなかった。
なんで付いて行かなかったのだろう。

和平の条件は竜王が一人で来る事。
罠の可能性が高い。
竜王様は笑って大丈夫だと一人で出かけた。
たかが人間に何ができると高を括っていた。
黒い森に火を放って竜達を怒らせた人間。
竜王様は竜のためにでなく人が竜に滅ぼされ
ないようにと動いていた。

その人間に自分が害される訳がない。
そう思っていた。

どんな経緯があったのかは分からない。
だが、竜王様は亡くなった。
その亡骸から竜殺しの剣が作られ
竜が狩られる事になるとは誰も思っては
いなかった。

隷属させられ、消滅させられる。
竜達は黒い森を捨て、他の国へと逃げた。
だが、竜殺しの剣は思ったよりも広がり
やむ無く人の多いこの大陸を捨て、
人の少ない北大陸に逃げ延びた。
だが俺を含め数匹の竜は黒い森を捨て
られなかった。
残った俺達はよく人から狙われた。
人と戦っては逃げる日々の始まり。

人は竜の敵となった。
人と番になる事は罪となった。

人との間に子を設けなくなった竜。
数百年でどんどん数を減らしていった

白竜はそんな時に人間の男と恋に落ちた。

ずっと好きだったシロは人の男を選んだ。
やがて二人の間には子が出来た。
俺には辛い失恋だった。

シロの相手はアルトリアの王子。
厄介な事に生贄に選ばれた王子だった。

アルトリアは魔物から国を守るために
防衛結界を張っていた。
その結界の維持のために数年おきに
魔力の高い者が生贄のように結界の
魔法陣に魔力と命を捧げる。

王子が殺されるのを黙って見ていられ
なかった白竜。
高い魔力が必要ならばと生贄の交代を
願い出た。
自分が王子の身代わりに魔力を結界の
魔法陣に注ごう。
自分の魔力の量ならば命を差し出す事なく
数十年は結界を維持出来る。
それをもって王子の命を見逃して欲しい。
アルトリアの王はそれを喜んで受け入れた。

王子は自分のために白竜が魔力を提供する
事に猛反対した。
だが、白竜は譲らなかった。
さっさと魔力を注いで親子三人で
暮らそう。

そうして白竜はアルトリアの国王と神殿の
神官に騙された。
神官達は竜殺しの剣で白竜を貫き
隷属させ鎖に繋いだ。
そのうえさらに逃げられないように
封印結界で閉じ込めた。
白竜から魔力を奪い続ける魔法陣。
防衛結界を意思を奪った白竜に維持させ
続ける術式を張り巡らした魔法陣。

もう少しで完成するはずだった術式は
白竜を助けようとした王子によって
阻まれた。
王子は神殿の魔法陣の上で殺された。
その血が魔術式を壊した。

結果的に白竜の意思は不完全ながら
残された。そうして白竜はアルトリアの
王家に生贄を求め始めた。
騙した王への復讐と魔術式の暴走を食い
止めるために。

俺は白竜を助けようと北大陸に仲間の竜に
助力を求めた。
封印結界は複数の竜の魔力を合わせれば
簡単に消せる。
竜殺しの剣の支配は消せないが会いに
行くことは出来るようになる。
白竜を一人にしないで済む。

だが人を番に選んだ裏切り者を助けるのは
ごめんだと協力を拒まれた。

何もできないまま時が過ぎた。
その間に白竜を封じ込めた洞窟の真上には
さらに封印の役目を担う建物が建てられた。

今では第二王女宮と呼ばれる建物。
人は白竜を逃がさないように封じ込めたが
白竜も人が近くに来る事を拒んだ。
生贄以外の者が洞窟に入れないように
己で人を拒む結界を張った。

飢えると生贄を呼ぶ。
生贄を喰らっては生きて防衛結界を
張り続ける。
白竜は数百年、防衛結界を守り続けている。















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