王宮侍女は穴に落ちる

斑猫

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黒竜、昔語り1

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地べたに正座で並ぶ男が八人。
全員黒い刺青が首にある。
さっきまで我が物顔で空を飛んでいた
竜達だ。全員、竜殺しの剣を二本刺されて
グレン様に支配されている。
剣は二本、支配はされるが意思は完全に
ある状態。青竜と同じだ。

皆、悔しげな顔でうつむいている。

その八人を取り囲み、竜殺しの剣を片手に
みんなが談笑している。
ある程度の使い手が竜殺しの剣を複数
持っていれば竜を倒すのは難しくない。

竜殺しの剣は金竜の骨から作られる。
金竜が死んで死体を帝国が手にいれてから
竜殺しの剣が作られ始めた。
そりゃ、逃げるわ竜も。

「それでお前ら何しに帰ってきた?」

黒竜が竜達に尋ねる。
だが、誰も答えようとしない。
あ~イライラする。
黙っていたら何も始まらない。
後ろから頭を叩いてやろうか。

「さ、とっとと話そうか?もう二本刺され
たくはないだろう?」

グレン様がとてもいい笑顔で優しく言う。
怖いよ。キラキラ笑顔だ。
何でこの人は優しい時の方が怖いの。

「帝国の皇帝から竜殺しの剣の破棄と金竜の
引き渡しを約束した。アルトリアを滅ぼす事
が条件だ。我々は盟約に従ったまでだ。
皇帝に死なれたら金竜が手に入らない。
だから助けたまでだ」

竜の一人が襲って来た理由を話す。
いや、それ騙されているでしょう?
詐欺だよ。詐欺。
オズワルドが大人しく竜殺しの剣を破棄
するとも思えないし、市場に出回っていた
剣を回収するのには相当なお金がいる。
アイツがそんなに気前がいいわけない。
竜達、絶対に騙されてるから。

オズワルドの奴、自国の兵を使わずに
とことん魔物を使ってアルトリアを
侵略するつもりだったんだ。
嫌な奴。

それに金竜はもう消えていなくなったし。
竜達に引き渡しようがない。
簡単に騙されてちゃって。
竜もお馬鹿さんだわ。
まあ、騙す方が悪いんだけどね。

「成る程、金竜を手にいれるためか。
あれほど俺達が白竜を助けてくれと頼んだ
時にはすげなく断ったくせに。
複数の竜がいれば結界を消す事ができた
のに、お前らは白竜を見捨てたんだ」

黒竜が辛そうに言う。
複数の竜!だから白竜の結界が消えたんだ。
白竜の事を助けようと思えば助けられた
ような言い方だ。

「竜殺しの剣でやられるかもしれないのに
なんで危険を犯してまで裏切り者を救わな
きゃならないんだ。冗談じゃない」

「裏切り者?」

「ああ、その話は長くなるな。とりあえず
こいつらをどうする?」

「オズワルドを連れて逃げた竜を追跡させ
よう。まずはオズワルドを確保しないとな。
お前達、聞いていたな?さっさと行け!
オズワルドを捕まえて来い」

グレン様が竜達に命じると次々に竜化し
空へと飛び去った。

「やれやれだな。こんな所じゃなんだ。
本宮で温かい茶でも飲もう。寒い。寒い」

国王陛下が両腕を擦りながら言う。
確かに寒いわ。息も白いし
雪がちらついている。

ぞろぞろと皆で本宮に移動する。

「俺達は王都の被害状況の確認に行きます。
アニエス、後で顛末を聞かせてくれ」

マルク義兄様、マシュー義兄様、
エリック兄さん、マリック兄さん、
セドリック兄さん達は騎士団の仕事に
戻った。

「ありがとう兄様達!」

手を振って別れた。
本当に頼りになる兄達だ。

「マックス、後で報告しろ」

オーウェン様はカルヴァン団長と
カーマイン卿を連れて帰った。
カルヴァン団長は、やっぱりまだ療養中
なのに屋敷を抜け出して来たらしい。
戦闘が終わった途端に発熱して倒れた。

「アイリスにこれ以上心配をかけるな!」

笑いながらオーウェン様が怒っていた。
カーマイン卿はカルヴァン団長を背負って
運んでいった。

お大事に。あまり無茶をしないように。
アイリスさんのお父様も困った人だ。

残った人達だけでお茶を飲む。
それにしても美形揃いの空間だわ。

国王陛下、グレン様の肉食系美男。
黒竜、青竜の人外美形。
ロイシュタール様、マクドネル卿の
物腰柔らかい系美男。
筋骨隆々で精悍なお顔のバルド様。
人畜無害系だけど実は整ったお顔の
マックス義兄様。
う~ん。目の保養だわ。

一人頷く私の頬をグレン様がつねる。
なぜ?解せぬ。

本宮の一室。
ポリポリと黒竜が焼き菓子を頬張る。

温かいお茶が体に染み渡る。
はあ~。幸せ。

「それで?何がどうして、こうなったか。
話してくれるか?、黒竜」

グレン様が優雅にお茶を飲みながら尋ねる。
お茶を飲むグレン様……好きだわ。
なんか格好いい。

「初めから話した方がいいだろうな」

黒竜は青竜を見る。
青竜が静かに頷く。

「すべては竜王である金竜が人の娘と恋に
落ちて番になった事から始まる」

黒竜が静かに話し始めた。














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