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グレン、デレる
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アニエスが転移魔法で消えた。
さて、助けがくるまで頑張るか。
「小僧、上手くチビすけを逃がしたな。
逃げろと言って逃げるような奴じゃないから
増援を呼んで来いか。上手い手だ」
黒竜が感心したように言う。
いや本当に助けを呼びに行かせただけだが?
俺にそんな悲壮感はないぞ。
まあいいか。
俺は空を見上げる。
アニエスの豆花達が頑張っている。
人数が揃わない内に竜殺しの剣を使う訳にも
いかんだろうから。
地味に闘うか。
アニエスの豆花に絡みつかれた竜にさらに
蔦蔓を絡ませて動きを止める。ブレスを
吐けないように口をぐるぐる巻きにする。
他の竜が火炎で焼き切ろうとしてくるので
氷結魔法で凍らせて防御する。
アニエスの豆花達は……燃えないな?
耐火スキルをもっているのか。
あの見た目以外はすごいよな。
竜相手に善戦している。
だが、見た目がなぁ。
何度見ても腹筋が痛くなる。
豆から生えたピンクの花にアヒルの
黄色い足。白い鳥の羽。
手のような蔓。そして珍妙な動き。
──笑える。
「小僧、この緊急時によく笑えるな」
黒竜が呆れたような声で言う。
黒竜は地上から竜めがけ黒い槍を複数放つ。
こいつも結構ダメージを食らっているな。
竜化できないようだ。
「どんな時でもおかしいものはおかしい
だろう。それにもうじき応援が来るしな」
「応援たって人だろう?竜がこれだけ
いるんだぞ。無理だろう」
「大丈夫だ。アルトリアにはな……
化物が沢山いるんだ。何とかなる」
ブレスが飛んできた。
今度は俺が防御結界で弾く。
あ~ヤバいか?目眩がする。
竜化で魔力を使い過ぎたか。
「小僧!大丈夫か」
倒れそうになり黒竜に支えられる。
止血されたとはいえ深傷だしな。
ちと、まずいか。
「大丈夫だ」
「全然、大丈夫じゃないだろ!」
「いや、大丈夫……増援が来た」
俺達にブレスを吐いた竜の首に剣が刺さる。
暴れる竜に雷撃が落ちる。
よし、今だ。
俺は蔦蔓で竜を引きずり落とす。
地響きをあげて落ちてきた竜に
黒い騎士服の熊が剣を突き刺す。
「マリック!竜殺しの剣は二本まででいい。
他の竜を頼む!」
アニエスの熊兄その二だ。
「おう!任せておけ!団長もう一本くれ」
マリックはマクドネルから竜殺しの剣を
渡されると嬉々として走り出した。
最初の一本がマクドネル。
雷撃がアルバート。
二本目がマリックだ。いい攻撃だった。
「グレン様!大丈夫ですか?」
マクドネルだ。なんだ?
大丈夫と聞きながらも浮かれている。
「聞いて下さい!アルマに子供ができま
した!私はパパになります。グレン様の
お陰です。ありがとうございます!」
俺の手をとりブンブン振り回すマクドネル。
傷に響くからやめろ。
「おめでとう?マクドネル。とりあえず
残りの竜を頼めるか?」
「お任せ下さい。さっさと片付けましょう」
浮かれマクドネルが剣を片手に走りだした。
「グレン、大丈夫か?結構深傷だな」
アルバートが心配そうに俺の傷を見る。
「アルバート。国王がこんな所に来るなよ」
「そう言うな。久しぶりに暴れさせろ。
弟に怪我をさせられた礼をせんとな」
アルバートも剣を片手に嬉々として
走り出す。
「なんか、楽しそうだな?」
黒竜が呆れたように言う。
「いや、見て見ろ。もっと楽しそうな人達が
到着したぞ?」
竜相手に楽しそうに戦うジジイが二人。
「ゴドフリー!死に損ないの病み上がりは
引っ込んでいろ!」
「オーウェン、うるせえ!隠居ジジイが!
俺の獲物をとるんじゃねぇ」
ゴドフリー。ワイバーンの毒から完全復活
したな。元気なジジイどもだ。
このコンビも笑いながら走る。
いつの間にかエリックやマシュー、
マルクやセドリックも参戦している。
よしよし。アニエスお手柄だ。
ちゃんと化物クラスの奴らを連れてきたな。
さて、俺は竜殺しの剣を刺されて落ちた
竜に命じる。
「仲間の竜を墜とせ」
絡ませた蔦蔓を解くとゆっくりと竜が空に
舞い上がり仲間の竜を襲い始めた。
先行投資に成功したな。
高い買い物だったが役にたった。
「うわ……やっぱり人間って怖い」
黒竜が顔を両手で覆う。
大袈裟な。
「 グレン様~~!!」
アニエスの声だ!
俺めがけて泣きながら走ってくる。
後ろからロイシュタール、青竜、マックス、
カーマイン、バルドが走ってくる。
バルドか。またスゴいのを連れて来たな。
カナンの英雄。王弟バルド。
マチルダの兄だ。
「グレン様!!」
アニエスに泣きながら抱きつかれる。
傷に触らないようにそっと俺の背に
腕を回すアニエス。
こんな時だが、可愛い。
俺がそんなに心配だったのか?
よしよし。背中を撫でて
思わず軽く口付けた。
あ、赤くなった。
可愛い。もう何度も抱いているのに
まだ照れるのか。
可愛い。もう一度口付ける。
「う、噂通りかよ。グレンがデレデレだ!」
バルドがうるさい。
俺がデレデレで国が滅ぶか?
「はいはい。イチャつくのは治療の後で!
グレン、傷を見せて。結構深いな」
ロイシュタールが治癒魔法をかけてくれる。
いつ見てもすごい治癒魔法だな。
あっと言う間に傷が消える。
怪我が治った所でさっさと片付けるか。
早くしないと俺の分の獲物がなくなる。
カーマインもマックスもバルドも
すでに楽しく戦闘中だ。
「アニエス、行って来る」
俺は竜殺しの剣を片手にまだ心配そうな
アニエスに声をかける。
するとアニエスにぐいっと引き寄せられ
頬に口付けられた。
「ご武運を。行ってらっしゃいグレン様」
アニエスの行ってらっしゃいのキス!
──いい。物凄くいい。
可愛いアニエスと呆れ顔の黒竜、青竜、
ロイシュタールに見送られ俺も走り出した。
さて、助けがくるまで頑張るか。
「小僧、上手くチビすけを逃がしたな。
逃げろと言って逃げるような奴じゃないから
増援を呼んで来いか。上手い手だ」
黒竜が感心したように言う。
いや本当に助けを呼びに行かせただけだが?
俺にそんな悲壮感はないぞ。
まあいいか。
俺は空を見上げる。
アニエスの豆花達が頑張っている。
人数が揃わない内に竜殺しの剣を使う訳にも
いかんだろうから。
地味に闘うか。
アニエスの豆花に絡みつかれた竜にさらに
蔦蔓を絡ませて動きを止める。ブレスを
吐けないように口をぐるぐる巻きにする。
他の竜が火炎で焼き切ろうとしてくるので
氷結魔法で凍らせて防御する。
アニエスの豆花達は……燃えないな?
耐火スキルをもっているのか。
あの見た目以外はすごいよな。
竜相手に善戦している。
だが、見た目がなぁ。
何度見ても腹筋が痛くなる。
豆から生えたピンクの花にアヒルの
黄色い足。白い鳥の羽。
手のような蔓。そして珍妙な動き。
──笑える。
「小僧、この緊急時によく笑えるな」
黒竜が呆れたような声で言う。
黒竜は地上から竜めがけ黒い槍を複数放つ。
こいつも結構ダメージを食らっているな。
竜化できないようだ。
「どんな時でもおかしいものはおかしい
だろう。それにもうじき応援が来るしな」
「応援たって人だろう?竜がこれだけ
いるんだぞ。無理だろう」
「大丈夫だ。アルトリアにはな……
化物が沢山いるんだ。何とかなる」
ブレスが飛んできた。
今度は俺が防御結界で弾く。
あ~ヤバいか?目眩がする。
竜化で魔力を使い過ぎたか。
「小僧!大丈夫か」
倒れそうになり黒竜に支えられる。
止血されたとはいえ深傷だしな。
ちと、まずいか。
「大丈夫だ」
「全然、大丈夫じゃないだろ!」
「いや、大丈夫……増援が来た」
俺達にブレスを吐いた竜の首に剣が刺さる。
暴れる竜に雷撃が落ちる。
よし、今だ。
俺は蔦蔓で竜を引きずり落とす。
地響きをあげて落ちてきた竜に
黒い騎士服の熊が剣を突き刺す。
「マリック!竜殺しの剣は二本まででいい。
他の竜を頼む!」
アニエスの熊兄その二だ。
「おう!任せておけ!団長もう一本くれ」
マリックはマクドネルから竜殺しの剣を
渡されると嬉々として走り出した。
最初の一本がマクドネル。
雷撃がアルバート。
二本目がマリックだ。いい攻撃だった。
「グレン様!大丈夫ですか?」
マクドネルだ。なんだ?
大丈夫と聞きながらも浮かれている。
「聞いて下さい!アルマに子供ができま
した!私はパパになります。グレン様の
お陰です。ありがとうございます!」
俺の手をとりブンブン振り回すマクドネル。
傷に響くからやめろ。
「おめでとう?マクドネル。とりあえず
残りの竜を頼めるか?」
「お任せ下さい。さっさと片付けましょう」
浮かれマクドネルが剣を片手に走りだした。
「グレン、大丈夫か?結構深傷だな」
アルバートが心配そうに俺の傷を見る。
「アルバート。国王がこんな所に来るなよ」
「そう言うな。久しぶりに暴れさせろ。
弟に怪我をさせられた礼をせんとな」
アルバートも剣を片手に嬉々として
走り出す。
「なんか、楽しそうだな?」
黒竜が呆れたように言う。
「いや、見て見ろ。もっと楽しそうな人達が
到着したぞ?」
竜相手に楽しそうに戦うジジイが二人。
「ゴドフリー!死に損ないの病み上がりは
引っ込んでいろ!」
「オーウェン、うるせえ!隠居ジジイが!
俺の獲物をとるんじゃねぇ」
ゴドフリー。ワイバーンの毒から完全復活
したな。元気なジジイどもだ。
このコンビも笑いながら走る。
いつの間にかエリックやマシュー、
マルクやセドリックも参戦している。
よしよし。アニエスお手柄だ。
ちゃんと化物クラスの奴らを連れてきたな。
さて、俺は竜殺しの剣を刺されて落ちた
竜に命じる。
「仲間の竜を墜とせ」
絡ませた蔦蔓を解くとゆっくりと竜が空に
舞い上がり仲間の竜を襲い始めた。
先行投資に成功したな。
高い買い物だったが役にたった。
「うわ……やっぱり人間って怖い」
黒竜が顔を両手で覆う。
大袈裟な。
「 グレン様~~!!」
アニエスの声だ!
俺めがけて泣きながら走ってくる。
後ろからロイシュタール、青竜、マックス、
カーマイン、バルドが走ってくる。
バルドか。またスゴいのを連れて来たな。
カナンの英雄。王弟バルド。
マチルダの兄だ。
「グレン様!!」
アニエスに泣きながら抱きつかれる。
傷に触らないようにそっと俺の背に
腕を回すアニエス。
こんな時だが、可愛い。
俺がそんなに心配だったのか?
よしよし。背中を撫でて
思わず軽く口付けた。
あ、赤くなった。
可愛い。もう何度も抱いているのに
まだ照れるのか。
可愛い。もう一度口付ける。
「う、噂通りかよ。グレンがデレデレだ!」
バルドがうるさい。
俺がデレデレで国が滅ぶか?
「はいはい。イチャつくのは治療の後で!
グレン、傷を見せて。結構深いな」
ロイシュタールが治癒魔法をかけてくれる。
いつ見てもすごい治癒魔法だな。
あっと言う間に傷が消える。
怪我が治った所でさっさと片付けるか。
早くしないと俺の分の獲物がなくなる。
カーマインもマックスもバルドも
すでに楽しく戦闘中だ。
「アニエス、行って来る」
俺は竜殺しの剣を片手にまだ心配そうな
アニエスに声をかける。
するとアニエスにぐいっと引き寄せられ
頬に口付けられた。
「ご武運を。行ってらっしゃいグレン様」
アニエスの行ってらっしゃいのキス!
──いい。物凄くいい。
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